転生して人生大逆転(全2話)
転生して人生大逆転①
座席に座る約20名の学生がルーズリーフにメモをとりながら、教壇に立つ
遅念「すなわち『降霊』の儀式によって死者の魂を現世に呼び戻し、『憑依』の儀式によって生者に取り憑かせることは理論上可能です。しかし成功率が低くデメリットが大きいため、この現代でやろうとする人はほとんどいません」
遅念は後ろを向き、口頭での説明に加えてホワイトボードに文字や図を書き始める。
遅念「『降霊』の儀式で呼び出せる魂はランダム。特定の人物の魂を呼び出すなら、その人物のことを頭の中で強く思い描く必要があります。それでも成功率は一桁未満でしょう」
学生たちがメモをとるペースを見ながら少し間を置き、さらに続ける遅念。
遅念「そもそも『降霊』の儀式で呼び出せるのは基本的に動物の魂。いわゆる低級霊と呼ばれるものです。もし人間の魂を呼び出すなら、より大きな『代償』が必要になります。その代償とは何か……わかる人いるかなぁ?」
遅念が教室を見回す。教卓の真正面に座っていたマドカが手を挙げた。遅念は右手の人差し指でマドカを指名する。
マドカ「生きている人間の命だと思います」
遅念「さすがマドカさんだねぇ。正解。人間の魂を呼び出すための代償は、人間の命です。死者を呼び戻すために生者を代償にする。しかも成功率はごくわずか。その事実が明らかになり、『降霊』と『憑依』の儀式による死者の復活は歴史が進むごとに行われなくなりました」
教室のスピーカーからチャイムの音が鳴る。遅念は教卓に置いていた書籍類を手に取ると授業を終了させ、次回までの課題を生徒たちに言い渡し、教室を後にした。
廊下を歩き、別棟にある自分の研究室へと戻ってくる。黒いオフィスチェアに腰掛けたと同時に、入口の扉が外からノックされた。「どうぞぉ」と、外にいる人物を招き入れる遅念。
「失礼します」と言いながら入って来たのは、髪を七三分けにしたリクルートスーツ姿の男子学生。呪詛ゼミの生徒ではない。呪いの類いを研究している遅念のところに就職活動中の学生が訪ねてくることなどまずない。遅念は不思議に思いながら、自身のデスクの前にあるパイプ椅子に座るよう男子学生に促した。
男子学生は座ると、緊張した面持ちで口を開く。
男子学生「経済学部4年の
遅念「お願いしたいことぉ?就職先を紹介してほしいとかぁ?僕じゃ怪しげな呪具を売ってるお店のアルバイトくらいしか紹介できないよぉ」
皮崎「いいえ、就職についての相談なら大学のキャリアセンターに行きます」
遅念「だよねぇ」
皮崎「遅念先生にしかお願いできないことなんです」
遅念「……えーっと、もしかして誰かを呪い殺してほしいとか?」
皮崎「はい」
遅念「いくら学生の頼みといえどそれはなぁ……誰かを恨んでるのかもしれないけど、その人を殺すことだけが解決策ではないと思うよぉ。人に話すことで心が軽くなることもあるから、僕で良ければ悩みを聞くけど」
皮崎「誰かを恨んでる、ですか……そうですね、強いてい言うなら僕自身の人生を恨んでいます」
遅念「んー……どういうことぉ?」
皮崎「先生には僕を呪い殺してほしいんです」
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