入院患者連続不審死②
AM 11:51
20代中盤の女性看護師の案内で、死亡した入院患者が使っていた個室に入るマドカとコココ。
看護師「ここが先週亡くなった男性患者が使ってた病室ね。好きに調べてもらっていいよ。私、タバコ吸ってくるから。終わったら外の喫煙所まで来て」
看護師は気怠そうに言い放ち、病室から出て行った。
コココ「じゃあ調査はマドカっちに任せるわ。アタシはボディガードみたいなもんやから」
コココは靴を脱ぐとベッドの上に飛び乗り、ピョンピョンとジャンプする。
コココ「アタシ敷き布団でしか寝たことないからベッドに憧れてんねん!ひょー!こんな高く跳ねられんねや!すごいなぁ!」
マドカ「ちょっと!壊れちゃうからおとなしくして!じゃないとお医者さん呼んで鎮静剤打ってもらうよ!」
マドカに注意され、ベッドの上から床に飛び降りるコココ。
コココ「鎮静剤って何の味すんのやろ?」
コココを無視し、マドカは病室内の至るところを調べ始める。ベッドの下やトイレの中、テレビ台の裏など、隈なく見て回った。懸命に調査するマドカを、ベッドに座って見物するコココ。
コココ「どう?なんかわかった?」
マドカ「怪しいものは無し……罠のように儀式を仕掛けて、条件を満たした不特定多数に悪霊を『憑依』させる『自動型の儀式』ではない。それに入院患者は1日足らずで死んでいる。人を短時間で死に至らしめるほど強力な悪霊を『降霊』『憑依』させるのは『自動型の儀式』では不可能」
コココ「へぇー」
マドカ「つまりこの憑依事案の術者は、複雑な工程を踏む『手動型の儀式』を行った」
コココ「そうなんやー」
マドカ「『手動型の儀式』はターゲットとなる人間の体の一部を使い、その人物にのみ『憑依』を引き起こしたい場合に用いられることが多い。『自動型』と違って儀式の使い回しができないし手間が増える分、強力な邪気を放つ悪霊を『降霊』『憑依』できる」
コココ「勉強になるなー」
マドカ「ターゲットが入院患者なら、病院内で体の一部、例えば髪の毛や血液、唾液などを手に入れるのは容易い」
コココ「初耳やわー。マドカっち、
マドカ「全部ゼミで先生から習ったこと。コココちゃんが寝てただけ」
コココ「んで、誰が犯人なん?」
マドカ「犯人探しは依頼に含まれてないよ。私たちの仕事は『憑依』の原因、つまりどんな儀式が行われたか特定することだけ」
コココ「んー、でも犯人捕まえんとすっきりせぇへん」
マドカ「……誰がやったか推測できないわけじゃないけどね。術者はこの病院の入院患者を狙ってる。ということは、病院の関係者である可能性が高い。しかも患者の体の一部を手に入れられる人物となると、お医者さんか看護師さんが怪しい」
コココ「なるほど!じゃあ医者と看護師、全員絞め上げればええねや!アタシの三角締めで!」
マドカ「ダメに決まってるでしょ!……でも術者が『手動型の儀式』を行ってるなら、ターゲットを始末できた時点で儀式の道具を全て処分してるだろうなぁ。使い回しができないから。だとしたら、いくら探しても儀式の痕跡は見つからないかも」
コココ「……つまり?」
マドカ「痕跡が無いなら、術者本人の口からどんな儀式を行ったのか聞くしか特定する方法がない」
コココ「ってことは、やっぱり犯人探しせなアカンってことやな!」
マドカ「そうなるわね……なんか、コココちゃんの思い通りに進んでるのが不服」
コココ「へっへー!」
マドカ「『憑依』の儀式を成功させるには、ターゲットとの『距離』も重要。儀式を行う場所がターゲットに近いほど、より確実に悪霊を『憑依』させられる。次に新規の入院患者が出たとき、その人の近く、おそらく病室内で儀式を行おうと術者が接近してくる可能性が高い」
コココ「じゃあ患者を見張って犯人待ち伏せしよーや!病院にお泊まりや!」
マドカ「……そうなるわね」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます