第6話 澪

みおは、中学3年生の中では、一番新しい子だった。



中学3年生の7月に、施設に来た。

小さい頃から施設で育って…

母が再婚する度に、施設から出るけど

また、施設に戻るの繰り返し…



母は、県外で知り合った人と付き合うために、この地に来た。

その相手と相手の子どもと、母、澪、弟2人、妹と暮らしていたけど…

母の相手の人と子どもと合わず、澪と2歳下の弟が逃げて施設に来た。



澪は、施設生活が長いからか…

周りの子と打ち解けるのは早かった。

アニメの話も大好きで、

それですぐ仲良くなった子もいた。



職員とも気兼ねなく話す。



ただ、嘘が多かった。



自分がいた所では、家出した時にやくざの人と知り合いになって

覚せい剤をしたことがあるとか…

喧嘩が強かったとか…

ま、身体も大きな子だったから喧嘩は本当に強そうだけど…



そうやって、ずっと自分を大きく見せることが癖になっていたのかもしれない…



澪は、転校した学校にも行ってなくて…

前の土地でも、不登校だった…

だから、出席日数が足りなくて推薦入試も受けられない…



施設では、施設の職員と児相、学校の先生、場合によっては家裁の人が集まってケース会議というのをすることがある。

その議題に、澪のことをあげたことがあった。

受験をどうするかだ…



施設では、ほとんどの子が推薦入試を受けるのだけど

それが出来ないので、普通に受験するしかない。

施設から通える学校も少ないから、通うとなると通学時間が長すぎて

辞めてしまう子も多い。

本人が希望する私立高校がダメだったら

寮に入るか通信高校かと検討された。

結局、私立高校に合格したから良かったけど…



高校に入ってからも、問題が起こった。

澪は、施設にいることを気にせず誰にでも話していたのだけど

みどりも同じ施設だと、喋ってしまったのだ。



怒った碧の態度に耐えられず、澪は学校に行かなくなった。

そして、澪自身が児相に行きたいと言ったので

児相と相談の上、澪はしばらく児相に行くことになった。



1か月くらいして、施設の職員が話をしに行くと…

他の施設に移るのは嫌だから、戻りたいと澪は言った。

その代わり、学校は続けると約束した。



母はその後、一緒に住んでいた男の人と再婚した。

同時に田舎に引っ越していった。

澪は、田舎には絶対に行きたくないと言った。

それから、母は再婚相手との子どもを産んだ。



母は、澪が高校を卒業したら、田舎に来て働いてくれることを望んでいたけど

澪は、嫌だと言った。



澪は、人懐っこくて…話しやすい子だった。

一時は、私のことをウザイと言っていたようだけど…

私立高校の受験初日に、私と一緒に行った澪は、私が一緒で良かったと言ってくれた。

それは、私がオバサンだからだった。

みんな母と一緒に行っているのに(もしくは1人)

若い先生と行くのは恥ずかしいらしい…



澪は、本当はお母さんと暮らしたかった…

新しいお父さんとも、うまくいってなかったわけじゃないけど…

一緒に暮らすのは嫌だったんだろう…



澪は、無事に高校を卒業して…

就職して1人暮らしを始めたと聞いた。



母を見ていたからか…澪は結婚したくないと言っていた…

澪に好きな人が出来て、好きな人と一緒にいる喜びを

感じる日が、いつか来ますように…


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る