第7話 蘭

らんは、これまでの5人と同じ中学3年生だ。



蘭は知的障がいがあり、支援級に通っている。



蘭には、姉、兄、弟がいるが、施設にいるのは蘭と弟だけ…



蘭は、明るくて人懐っこい子だった。

蘭は、いつも…



「紬先生は優しいね。大好き」



と言ってくれた。





蘭の母は、離婚と再婚を繰り返している。

蘭と弟は、前夫の虐待で施設に来た。



私が、施設に行った頃には、母には新しい彼氏がおり…

その彼氏と、いずれ結婚するという話だった。

その彼氏は、ホームに電話をして来ても

大きな声で怒鳴るような人だった。



職員もビビッてしまう…そんな人だったけど…

私は、そういう人は慣れっこだったから…

冷静に対応することが出来た。



児相は、家庭の状況をみて帰省してもよいか等を判断する。

この彼氏は、児相にもうるさく電話をしていて…

蘭と弟と面談を繰り返して…

帰省しても良いと判断した。



初めて蘭が帰省をする時に

私は、ちょうど帰る時だったので迎えに来ている彼氏を見た。

彼氏は、まゆに刺青が入っている人だった…



蘭も、最初は彼氏と電話で話すのも嫌だったけど…

帰省するごとに慣れていったのか…

お父さんと呼ぶようになっていた。



それから、彼氏と母は結婚して

子どもたちも養子縁組をした。



弟は、中2だったのだが…

弟は、新しいお父さんと暮らしても良いと言い出して…

先に、退園して家に帰った。



ずっと、弟を頼りにしていた蘭は…

寂しがっていたけど…



「私は、受験して高校が決まってから帰る」 



と言い張った。



そして、蘭は家から通える特別支援学校に受験して合格した。



そして、3月…

3月は、小学校、中学校、高校を卒業する子…

そして、退職する職員合わせて…卒業の会をする。



蘭は、卒業の会の翌日に退園して家に帰った。



私は、休みだったのだけど…

帰る時間に合わせて…

お別れの挨拶に行った。

その時に、文房具をプレゼントした。

迎えには、新しいお父さんと母が来ていた。



その後…蘭から一度だけ手紙が来た。



その手紙に、紬先生返事ちょうだいねと書いてあったから

私は、手紙を書いて蘭の家に送った。



それから、欄に書類を渡さなければいけないことがあり…

私が帰る時間に合わせて…母に来て貰った。



その時に…

あんなに一生懸命だった新しいお父さんが…

急にいなくなったと聞いた。

帰らなくなって、連絡も取れないという。



母は途方に暮れていた…

それでも、母は頑張るしかないと言っていた。



蘭は、お母さんが大好きで…

いつもお母さんのことを考えていた。



蘭は、退園する前に手紙をくれた。



―――先生、大好き。



―――私は、紬先生のこと絶対に忘れない…



―――先生も、私のこと絶対に忘れないでね…



そう、書いてくれた…



いつも…



「先生、聞いて」


「先生、お話しよう」



そう、言って懐いてくれた…



その後…

高校で、彼氏が出来たと喜んでいた蘭は…



噂によると…

高校を辞めてしまったと聞いた…



あれから、施設には戻って来ていないけど…

どうしているのか…

すごく気になる。



蘭と母、そして…きょうだいが

幸せに暮らしていますように…



私に出来ることは、そう願うことだけだ…


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