第3話 碧
碧は、父の虐待で施設に来た。
母親は、外国籍で日本に働きに来ていて父と知り合った。
碧には、兄がいるが施設には来ていない。
でも、今は親子関係は良好で
長い休暇になると…
家に帰省したり…
欲しいものを送って貰ったりしている。
碧は、見た目はキツイ顔で怖いと思われている。
現に、私も最初は睨まれた…
でも、誰よりも甘えん坊で…寂しがり屋な子だ。
碧は、一番最初に私に
「先生、ドライヤーして」
と言ってきた。
「先生、耳かきして」
色々なことを頼んでくる。
小学生までは、職員が洗濯をするのだが…
中学生になると、自分でやらなければいけない。
しかも、一人一人洗濯機を回すと
水道代も電気代も掛かるから…
2人で回すようになっている。
毎年、そのペア割も職員が決める。
碧は、夜尿症があり…
めったにないのだが…シーツを汚してしまう。
それで、こっそりと…
「先生、学校に行っている間にシーツ洗っておいて…お願い」
と頼んでくることもあった。
私が入って来る前は、もっとひどい時もあり
碧の部屋は、汚れたシーツや、汚れた下着を隠しておいた物で
異臭を放っていたらしい。
碧は、整理整頓が苦手で
今でも部屋は汚い…
でも、本人もどうやって片付けたらいいのかが分からない。
ひどくなると…足の踏み場もなくなる。
碧は、ノートは凄く綺麗に整理して書いてあるのだけど…
本人の頭には、なかなか入っていかないようで…
勉強も苦手だった。
そんな碧も、受験になった。
学校の先生とも話し合い…
碧は、私立高校の推薦入試をすることにした。
碧は、見た目や言うことはしっかりしているのだが
いざとなると…人前でも話せないし…
手が震えてしまう。
でも、そんな苦手な碧が面接も頑張って合格した。
ここの施設の子は、みんな同じ小中学校で生活をする。
だから、同じ友達しかいない。
でも、高校に行けば知らない子ばかり…
碧は、友達付き合いが苦手だった。
なかなか高校にも馴染めなかったけど…
それでも、頑張って行っていた。
バイトも探して、土日だけレストランに行き始めた。
碧は、高校の友達に施設にいることは知られたくなかった。
施設から同じ高校に行ったのは、3人…
そのうちの1人が、碧も施設にいると話してしまって…
友達にバレてしまった…
それから、少しずつ友達との関係がうまく行かなくなって…
碧は、学校に行かなくなった…
病気以外で学校に行かない場合は
施設で作業をしなければいけない…
碧は、文句を言いながらも…作業をした。
碧の希望は、家に帰ることだったけど…
児相からの許可はまだ、出ない。
碧は、精神科の病院に行きたいと言った。
その病院に行く前日になって碧は…
「私、ADHDだと思う」
と私に、言ってきた。
どうやら、YouTubeで自分にそっくりな人の動画を見つけたらしい。
その通り…碧は、小学生の頃にADHDだと診断されていた。
それから、精神科でもう一度診断されて服薬を始めた。
碧は、私と通院に行きたがった。だから、私が通院の段取りをして、よく一緒に行った。
「先生、辞めたら連絡取り合って一緒にドライブに行こうね」
と言われていたけど…
それが叶う事はなかった…
学校に行かなくなって、児相の担当と話した碧は、転校を考えはじめた。
通信制の高校を考えたが、その時は施設の許可が下りなかった。
その後、碧は…
ホーム編成で、小学生低学年と一緒のホームになったことが嫌だったらしく…
児相の人と相談して、自立ホームに移った。
碧は、頼みごとをしてくるのが上手で…人一倍甘えん坊な子だった。
そして、お母さんのことが大好きな子だった…
いつか、家族の元で一緒に暮らせる日が来ますように…
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