第2話 凛

りんは、中学3年生…

このホームの中学3年生の中では、施設歴が長い。



兄と妹3人も、この施設にいる。



母の養育困難で、ここに来た。



母は、子どもたちをここに預け…

今は、3番目の夫と暮らしている。

夫との間には、子どもが3人いる。

その事実を、凛たちは知らない…



凛は最初、私に攻撃的だった…

他の子と一緒になって…

私をからかった…



あまりに、しつこい時は怒ったこともある。



でも、いつの間にか凛は…



「先生、私ねB〇Sが好きなんだ」



って話しかけてくるようになった。



先生、この人が…〇〇…



そうやってメンバー全員を覚えさせられた。



「先生、テストするよ」



って…写真を見せられて…名前を言わされる。



私からしたら、みんな同じ顔に見えるから難しい…



でも、何度も聞いてくるから、気が付くと覚えていた。



凛のことは、みんな一目おいていた。



年下の子は、みんな凛を怖がっていた。

本人に悪気はない。



時々…



「先生、お母さんに電話かけてみて」



と言ってくるから…



お母さんに、電話をするけど…

お母さんは電話に出ない。



特に夜は…新しい家族の子ども達がいるからか…

滅多に電話に出ることは無かった。



施設では、交際禁止だ。

でも、学校には施設の子しかいない。

そんな狭い世界に住んでいるのだから…

好きな人くらい出来る。



凛は、同級生の生徒会長を好きになった。

そして…告白されたようで…



「先生、誰にも言わないでよ。付き合うことになったんだ」



そう、教えてくれた。



付き合うって言ったって…

ここでは、外で会うこともできない。

中学生は、月に1回自由に買い物に行けるけど…

男子と女子の日は別々だから…



学校で会ったり…

学校が終わってから、グランドで会ったりするくらい…

隠れてキスくらいは出来るかもしれないけど…

年下の子たちが、黙っていないだろう。



生徒会長とのことは、時々相談して来た…



凛は、公立の工業高校に合格した。



そして、合格したことをお母さんに伝えたいと言って来たから…

お母さんに電話をすると…

珍しく、お母さんが出た。



お母さんに



「合格したよ」



って言ったら、お祝いに何がいい?って言われたみたいだった。



その日の凛は、すごく嬉しかったみたいで…

ご機嫌だった。



そして、本当にお母さんから荷物が届いた。



凛は、本当に嬉しかったみたいで…



目を輝かして、荷物の中身を見て…私に見せて来た。



ほんの少し、お母さんと話せるだけで…

子ども達は、嬉しいのだ。



それは、いくら私が子ども達から好かれようが…

勝てない瞬間…



凛は、高校入学前に高校生のホームに引っ越していった。

話によると…

お母さんが、入学式に来てくれたそうだ。



嬉しそうにしている凛の笑顔が浮かんだ…



凛は、高校に入ってから

新しい世界を見たようで…

生徒会長とは別れたと…

会った時に教えてくれた。



高校で新しい、彼氏が出来たと…



その後、凛は高校を卒業して

就職して一人暮らしを始めたと聞いた。



私が知っているのは、そこまで…





凛は、悪ぶっていたけど

きょうだいの中で、一番お母さんのことが好きだった子…



いつか、その気持ちがお母さんに届きますように…

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