愛されたかった子ども達

秋風爽籟

第1話 児童養護施設の指導員

つむぎは、50歳を過ぎてから

児童養護施設の指導員になった。



小さい頃から子どもが大好きで、保育士になりたいと思っていた。

でも、若くして子どもが出来て結婚したから

保育士になることが出来なかった…



でも、子ども相手の仕事がしたいって思って

事務の仕事を辞めたのを、きっかけに…

障がいの子どもを放課後に預かる仕事に就いた…



何時の頃からか…勤めてみたいと思っていた児童養護施設…

ずっと諦めていたけど…

子どもの手が離れてから、大学に行って資格を取った。

保育士ではなく、社会福祉士…

社会福祉士を持っていても、児童指導員の任用資格がある。

児童養護施設は、保育士でなくても

児童指導員の資格でも働くことができる。



そんな想いで勤めた児童養護施設だった。



子ども達は、ひとりひとり…

理由があって来ているけど…

その理由も様々で…

そして、性格もそれぞれ違う…



まったく違う性格や境遇の子たちが集まって

共同で生活するところ

それが児童養護施設だ。



そこは、ある意味戦場だ…



小さい子は、大きい子に揉まれ…

成長していく。

それが、その子にとって

いい時もあるけど、悪い時もある。



みんなが常に思っていることは…

家に帰りたい…

ここを出たい…



でも、普通なところでもある。

子ども達は、喧嘩をしたり…

恋愛もする。



普通の社会にいれば、当たり前のことだけど…



ここは、それをしてはいけない。



朝から晩までルールに縛られて…生活する。



そんな、子ども達を見るスタッフは…

ほとんどの人が新卒だ。

子育てをしたことがない。

そんなスタッフばかりで成り立っている。



でも、子ども達は若い先生が大好きだ。

だから、若い人も必要…

それに、子ども達と野球をしたりサッカーをしたり

バレーボールもする。

行事には、登山もあったり…

やはり、若い人は必要…



児童養護施設には、夜勤も必須…

でも、その夜勤の時が一番子ども達と触れ合える時間…

その体力も必要だ…



紬は実習の時も、なんでオバサンが来てるの…

って目で見られた…



紬の子どもは、2人とも男の子で…

女の子を育てたことがない…



どうやってホームを決めたのかは分からないけど…

そんな、紬が配属されたのは、

女子ホームだった。



ここに来る人に、私のようなオバサンはいない…

最初は、影でオバサンって言われて…

敬遠されていた。



子どもは、孫の年齢の子ども達…

やっていけるのか…不安になった。



それでも、せっかく勤めることができた

児童養護施設なんだから…

頑張らなきゃって想いが強かった…



何もかもが、新しいことばかりで

着いていくのが大変だった。



自分よりも、はるかに若い同期の人たち…

そして、はるかに若い先輩たち…



それでも、同期とは励ましあい…

先輩には助けられ…

上司に助言を受けて…

頑張った、約2年半…



ここは、山の中にある児童養護施設…

隣には、併設の小中学校がある。



その中で、紬が出会ったのは24人の子供たち…



その、誰もが…

親から…

ただ、愛されたかった…

愛して欲しい…と願っていた…

そんな子ども達だ。





これは、紬と愛されたかった子ども達の物語…


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