万歩計、壊れる?
今夜のお客は中年の男性で、疲れ切っている様子だ。おそらく、仕事が忙しいのだろう。
「運転手さん、俺はな肥満対策として歩数計を持ち歩いているんだ。小学生からビール腹をバカにされているからな。だが、今日は大きく歩数が違ったんだ。それも数百歩じゃない。二千歩も増えたんだ。こんなことあると思うか?」
男性の問いかけは唐突だった。
「増えたんですか。それなら、いいことではありませんか」
「いや、そうなんだけどな。どうも腑に落ちないんだ」どうやら、男性教師にとっては深刻な問題らしい。
「今日だけ特別な行動をとったことはありませんか?」
「いや、それはないな」
私は頭を悩ませた。そんな急に歩数が変わることがあるのだろうか。
赤信号で車を止めていると、隣の道路で舗装工事が行われているのが目に入った。ちょうど白線を引くところだった。それを見て一つの考えが頭に浮かんだ。
「もしかしてですけど、今日、学校で廊下の真ん中にテープが貼られましたか?」
「そういえば、生徒がスムーズに通行できるように、廊下の真ん中にテープを貼っていたな」
私はその言葉を聞いて確信した。歩数が大きく増えた謎の解答を。
「日本の文化では左側通行が一般的ですね?」
「もちろんだ。車も駅の階段も左側通行だからな」教師は当たり前だと首を縦に振る。
「そこがポイントです。今日、廊下にテープが貼られました。これにより、無意識のうちに左側を歩いていたんです。ですから、歩数が大きく違ってもおかしくないんです」
「なるほどなぁ。あんた、探偵みたいだな。安楽椅子探偵ってやつだ」
私はその言葉を聞いて少し嬉しくなった。
「明日は意識してみるといいですよ。他にも発見があるかもしれませんから」
私は男性教師を降ろしながら声をかけた。男性は笑みを浮かべると「そうしてみるよ」と言った。
私は一つの小さな謎を解いたことで満足していた。さて、今度はどんな謎が待ち受けているんだろうか。私は期待を胸にアクセルを踏み込んだ。
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