第14話 

第14話 - ガリア戦役五年目-1

再びのブリタニア遠征

紀元前54年春、カエサルはアルプスを越え、冬営地アミアンに到着した。兵士たちはカエサルの命を忠実に遂行し、ブリタニア遠征用の輸送船六百隻とガレー型軍船二十八隻を完成させていた。これらの船は前回の教訓を活かし、浅瀬での運用が可能なよう設計されていた。

「見事だ。よくやった!」

カエサルの言葉に兵士たちは歓喜し、士気は一層高まった。総司は彼に言った。

「孫子も申している通り、兵士たちを褒めるのは重要ですが、甘やかしすぎてはいけませんよ」

「心得ている。愛情と規律、両方があってこそ軍は成り立つものだ」とカエサルは笑った。

トレヴェリ族への対策

ブリタニア遠征を目前に控え、カエサルには片付けるべき問題があった。ライン河付近に住むトレヴェリ族である。彼らはガリア部族長会議にも出席せず、ゲルマン人と共謀して反ローマの動きを見せていた。

カエサルの接近を知ると、トレヴェリ族の指導者チンジェトリクスは、配下の部族とともに恭順を誓った。しかし、もう一人の指導者インドゥティオマルスは一度は従う姿勢を見せたものの、その意図は不明瞭だった。

「どう思う、ソウジ?」

「全幅の信頼はおけませんが、今は受け入れるしかないでしょう」

カエサルは二百人の人質を取り、トレヴェリ族の動きを封じることで妥協した。こうして、彼はイティウス港に向かい、船団の準備を整えた。

壮大な船団の出港

カエサルは五個軍団と騎兵五千を率いて、二度目のブリタニア遠征を開始した。前回より規模が大きく、船団は壮観そのものであった。出港地の防衛には、副将ラビエヌスに三個軍団と騎兵三千を任せた。

ブリタニアが近づく頃、海岸線が見えた。しかし、ブリタニア人たちは膨大な船団を目にして恐れをなし、内陸部に退いていた。

「この機会を逃さず、陣営地を築こう」とカエサルは命じた。だが、北の荒れた海と天候はローマ軍に容赦なく襲いかかる。船団のいくつかが嵐で損傷し、進軍の計画に支障をきたした。

内陸部への進攻とブリタニアの抵抗

ローマ軍は浜辺に船を引き上げ、厳重に防衛したうえで内陸部への進攻を開始した。途中で捕らえた捕虜から、20km先にブリタニア軍が布陣していると聞き出した。

進軍先で待ち構えていたブリタニア軍は、川と森を背にした要塞的な布陣を敷いていた。第七軍団を中心としたローマ軍は果敢に戦い、ブリタニア軍を敗走させた。カエサルはその地に陣営地を築き、防衛を固めた。

だが、ブリタニア人は平原での正面対決を避け、ゲリラ戦を展開してきた。森や沼地を利用した襲撃はローマ軍にとって厄介だった。総司は警告する。

「孫子の兵法では、不利な地形では偵察を密に行い、油断を避けるべきです」

カエサルは進軍の方法を変更し、歩兵と騎兵を一体化させた陣形で進むことを決めた。この戦法により、ゲリラ的な波状攻撃は効果を失い、ローマ軍は着実に敵を撃退していった。

ブリタニア部族の分裂

ブリタニア人の抵抗は次第に弱まり、諸部族の連携が崩れ始めた。総司はこの兆候を見逃さず指摘した。

「敵は所詮、異なる部族の集合体です。今こそ攻勢をかけるべきです」

カエサルはタメシス河北部のカシヴェラヌスの本拠地に向けて進軍を開始。ローマ軍の圧力に耐えきれず、ブリタニア側では部族の離反が相次いだ。ゲリラ戦法も通じなくなり、ローマ軍の統制された進軍に押される形となった。

次なる決戦へ

カエサル軍はカシヴェラヌスの領土への進攻を続け、ついにブリタニア遠征の重要な局面を迎えた。敵の連携が崩れ、戦局はカエサルに有利な状況となりつつあった。

「総司、次の戦いでブリタニアを完全に掌握する。準備を怠るな」

「了解です、カエサル様。必ず勝利を手にしましょう」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る