第13話 ガリア戦役四年目-2

ライン渡河とゲルマンへの威圧

紀元前55年、ローマ軍は歴史的な挑戦に臨んだ。ライン河に橋を架け、ゲルマン側へ進軍するという未曾有の作戦である。

「ローマ軍の技術力と威信を示すときだ。敵が戦わずして屈するなら、それが最善の勝利だ」とカエサルは総司に語った。

総司は孫子の兵法を引き合いに出し、戦わずして勝つ重要性を再確認する。「心理的な圧力を加えることで、敵の意志を挫く。それが戦争の理想です」と答えた。

資材が到着してわずか十日で、ローマ軍の工兵たちは橋を完成させた。見上げるばかりの土木技術に、カエサルは満足げに頷く。「これが我々の力だ」

軍を率いてラインを渡ると、ゲルマンの部族たちは次々と使者を送り、平和を願い出た。一方、抵抗を示したシカンブリ族の地には、短期間で進軍し、村落を焼き払いその力を誇示した。

スヴェヴィ族は深い森へ後退したものの、ローマ軍の進軍を阻むことはできなかった。「目的は果たした。これ以上の消耗は無益だ」とカエサルは判断し、ローマ軍はラインを引き返し、橋を破壊した。

ドーヴァー海峡の向こうへ - ブリタニア遠征

カエサルは続けて、さらに挑戦的な計画を掲げた。「次はブリタニアだ。ガリアへの支援を断ち切り、この地をローマの影響下に組み込む」と宣言した。

総司は孫子の兵法を引用し、慎重に計画を練るよう進言した。「敵地での補給に依存する形となるため、兵力の一極集中が不可欠です」

準備が進む中、ブリタニアからは早くも使者が到着した。「ローマの覇権を認め、人質を提供します」と述べる部族が続出。ガリア人のコミウスを外交官として同行させ、さらなる同盟工作を進めた。

ブリタニアへの上陸

紀元前55年8月末、カエサル軍は80隻の輸送船でブリタニアへ出航。到着した海岸は、崖上に待ち構える武装したブリタニア兵で埋め尽くされていた。「ここは不利だ、別の地点を探す」とカエサルは判断し、より平坦な海岸へ移動した。

だが、上陸時に待ち伏せていた敵兵が襲いかかる。ローマ軍は水中での戦闘を余儀なくされ、隊列が崩れる中でも必死に応戦した。

「隊列を整え直せ! 陸地に足をつければ勝てる!」カエサルの檄に奮い立つ兵士たちは、上陸を果たし、敵軍を撃退した。

満潮と嵐の危機

上陸の翌夜、満潮と嵐によりローマの艦隊が大損害を受けた。船の修理が急務となる中、ブリタニアの部族たちはローマ軍の危機を察知し、協力の約束を反故にして反撃の準備を整えた。

「今は耐えるしかない」と総司は静かに語る。「だが、耐え抜いた先に勝利がある」

決戦 - ブリタニア部族との闘い

ブリタニア軍の攻撃が始まると、カエサルは即座に陣営地を出て迎撃。第七軍団が敵に包囲される危機に直面したが、カエサル自ら指揮を執り、第十軍団を率いて救援に向かった。

「隊列を乱すな! 一人一人が勇気を見せろ!」カエサルの指示は明快だった。

ブリタニア軍は激戦の末に敗れ、逃走。騎兵を欠いたローマ軍は追撃ができず、勝利の効果を最大化することは叶わなかった。

しかし、その後の再攻撃でローマ軍は再び勝利し、部族たちは再度講和を求めてきた。カエサルは倍の人質を要求し、彼らの土地を一時的に統治することで安定を図った。

ローマ軍の帰還と意義

一連のブリタニア遠征は、カエサルの期待をすべて満たしたわけではなかった。しかし、それでもローマ軍がラインを渡り、さらにドーヴァー海峡を越えた事実は、ローマの力を誇示し、ガリア全域とその周辺に大きな影響を与えた。

総司は語る。「カエサル様、これでガリアのみならずブリタニア、ゲルマンの諸部族にもローマの威信を知らしめました。次はその維持が重要になります」

カエサルは微笑んだ。「その通りだ、ソウジ。我々は新たな歴史を刻んだ。そしてこの先も進み続ける」

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