第12話 ガリア戦役三年目、四年目-1
ウェネティ族の反乱
紀元前56年、ガリア戦役三年目に突入したローマ軍の前に、新たな危機が訪れた。一度はローマに恭順を誓った大西洋岸のウェネティ族が反旗を翻したのである。海軍力を持つウェネティ族は、ローマ軍の海戦経験の乏しさを突いて侵略を撃退しようと考えた。
カエサルは迅速に軍を三分した。副将ティトゥス・ラビエヌスをベルガエ人とゲルマニア人への抑えに、プブリウス・クラッススをアクィタニア地方への対応に派遣。自らはウェネティ族討伐のためにモルビアン湾へ向かった。
「彼らは海を頼みに反乱を起こしたが、どんな戦場でもローマの意思を貫徹させる。それを示そう」とカエサルは宣言した。
ローマ艦隊を指揮するのは、若きデキムス・ユニウス・ブルトゥス。経験不足の海戦であったが、彼はカエサルの信頼を背負ってモルビアン湾の海戦を指揮し、ウェネティ族の艦隊を撃破することに成功。反乱は鎮圧された。
ガリア各地での鎮圧作戦
同時期、ウネッリ族、アウレルキ族、エブロウィケス族の反乱を鎮圧するため、クィントゥス・ティトゥリウス・サビヌスが派遣された。サビヌスは周到な戦術でこれらの部族を屈服させた。
また、アクィタニア地方での反乱にはプブリウス・クラッススが対応。地元のソティアヌス族らが反撃に出たが、クラッススは巧妙な包囲戦術でこれを撃破。こうしてローマ軍は三方の戦線で勝利を収め、ガリア全域での反乱を平定した。
スヴェヴィ族とゲルマン人の侵攻
ガリア戦役四年目、紀元前55年になると新たな脅威が浮上した。ライン川を渡ったゲルマン部族ウシペティ族とテンクテリ族がガリア側に侵攻してきたのだ。彼らはスヴェヴィ族による圧迫を避け、移住を求めていたが、その総数は43万人に及び、ローマにとって見過ごせない問題だった。
カエサルは総司と相談した。
「戦争論には、敵側の同盟国を引き離すことで戦局を有利に進めるべきとあります。今回、スヴェヴィ族とウヴィ族の対立を利用し、彼らを分断しましょう」と総司は進言した。
カエサルはこれを受け、ウシペティ族とテンクテリ族の使者に対して、ウヴィ族の土地を提供することを提案。同時に、ウヴィ族の使節とも交渉を進め、慎重に和解の可能性を探った。
ゲルマン騎兵の襲撃と報復
しかし、和平交渉が進む中、不意にゲルマン騎兵がローマ軍を襲撃。74名のローマ騎兵が戦死するという事態が発生した。これにより、和平の道は断たれた。
「これでは交渉は不可能だ。進軍して彼らを討つ」とカエサルは断言した。
ローマ軍の迅速な行軍はゲルマン人を完全に不意を突き、宿営地を制圧。敵は混乱に陥り、逃げ惑うのみであった。カエサルは逃亡者に対して徹底的な追撃を命じ、ライン河付近で多くの敵兵を討ち取った。
勝利とその余韻
戦闘終了後、カエサルは拘留していたゲルマンの長老たちを釈放。しかし彼らは、報復を恐れ、ローマの保護下に留まりたいと願った。
「自由を認める」とカエサルは応じたが、彼らの運命が安泰ではないことは明白だった。
ライン渡河計画
休息を取る間もなく、カエサルは次なる壮大な計画に着手した。それはライン川の渡河である。ローマ軍にとっても、ローマ人にとっても前例のない挑戦であった。
総司は渡河計画についてカエサルと議論した。「渡河の目的は、ゲルマン人にローマの力を示し、ライン以東への抑止力を築くことです。慎重に準備すべきです」
カエサルは頷いた。「ローマの威信をかけた挑戦だ。全力で臨む」
こうして、ローマ軍のライン渡河が始まろうとしていた。カエサルはただの勝利ではなく、その後の支配と抑止力を確立するための布石を着実に打っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます