第11話 ガリア戦役二年目

ベルギー人の脅威

紀元前57年の冬、カエサルは南仏と北イタリアの属州統治に専念していた。しかし、冬営中の副将ラビエヌスから送られる報告に、ベルギー人の不穏な動きが増加しているとの情報が含まれていた。

「ベルギー人が団結を始めています。四十万もの戦力を備え、ローマに先制攻撃を仕掛ける計画を練っているようです」と報告するラビエヌスの言葉に、カエサルの眉間は深く寄った。

カエサルはすぐさま新たに二個軍団の編成を命じたが、「編成が完了する前にアルプスを越える」と即断した。

「迅速に動くことが我々の命運を分けます。敵が動き出す前に先手を打たねばならん」と彼は総司に語った。

強行軍とレミ族の離反

カエサル軍は15日間の強行軍でベルギー領土との境界に到達した。突然のローマ軍の到来に最初に動揺したのは、境界付近に住むレミ族だった。

「ローマ軍に忠誠を誓えば、ベルギー人たちの怒りを買う。だが逆にローマを敵に回せば、もはや未来はない」と揺れるレミ族に、カエサルは兵糧の提供を要求した。さらに、人質を受け入れ、その子供たちをローマで教育するという厚遇策を打ち出し、レミ族を味方に引き入れた。

レミ族から得た情報により、ベルギー人は三十万の戦闘員を集め、さらにゲルマン人とも共闘を約束していることが明らかになった。

エーヌ川での防衛戦

カエサルは全軍を率いてエーヌ川を越えた。その際、川の対岸に要塞を築き、副将サビヌスに守備を任せた。また、陣営地を防柵と壕で囲み、ベルギー軍の進軍に備えた。

総司が進言した。「敵は火計を用いるでしょう。そしてレミ族が救援を求めるはずです。その時、迅速な対応が求められます」

その予測通り、ベルギー軍はレミ族の町を攻撃し始めたが、カエサルはすぐさま弓兵や投石兵を派遣して支援。レミ族を救い出した。

挟撃作戦

ベルギー軍は再びカエサル軍の陣営地に向けて南下してきたが、その背後にはレミ族の軍勢が迫っていた。レミ族の攻撃に気を取られるベルギー軍に、カエサル軍は正面から襲い掛かり、挟撃の形となった。

総司は状況を冷静に分析した。「敵は川を渡って我々の背後に回ろうとしています。孫子の教えにある通り、半分渡ったところで攻撃を加えましょう」

カエサルはそれを了承し、川を渡りきる前の敵軍に猛攻を加えた。川を背にしたベルギー軍は退路を断たれ、ローマ軍の圧倒的な攻撃を受けて壊滅した。ついにベルギー軍は降伏の意思を示し、カエサルはこれを受け入れた。

ネルヴィ族との激闘

ベルギー人の降伏後、カエサルはすぐさま次の標的に向けて軍を進めた。その相手はガリア北東部最強の部族、ネルヴィ族だった。

総司は提案した。「ネルヴィ族とその周辺部族の間に不信感を植え付けるべきです。離間の計を用いて敵の連携を断ち切りましょう」

総司の策は見事に功を奏し、ネルヴィ族と共闘を予定していたヌエシオネス族は戦線から離脱。ネルヴィ族は孤立した。

カエサル軍はレミ族の案内を受け、慎重にネルヴィ族の領地へと進軍した。しかし、ネルヴィ族の内通者によって、ローマ軍の動きが敵に伝わり、敵はローマ軍の到着を待ち構えていた。

ネルヴィ族の猛攻と勝利

ネルヴィ族は七万を超える兵力をもって川を目指して進撃し、カエサル軍に襲い掛かった。カエサルは最前線に立ち、兵士たちを励ましながら指揮を執った。

敵の猛攻を受けながらも、ローマ軍は崩れなかった。そこに、輸送車隊の護衛を務めていた新編成の二個軍団が合流。さらに副将ラビエヌスが敵陣営を制圧し、支援に駆け付けたことで戦局は一気に傾いた。

ネルヴィ族の戦闘員は最後まで抵抗を続けたが、ローマ軍の耐久力の前に次第に力を失っていった。激闘の末、ネルヴィ族は壊滅し、生存者はごくわずかだった。

戦役の終結と新たな展望

戦闘後、ネルヴィ族の生き残りは降伏し、カエサルは彼らに寛大な講和を認めた。これにより、ガリア北東部はローマの支配下に入った。

その頃、大西洋岸に派遣されていた若きクラッススから、ヴェネティ族をはじめとする七部族の恭順の報告が届いた。これにより、全ガリアがローマの覇権を受け入れる形となった。

カエサルは兵士たちに冬営地での休息を与え、ガリアの平定を完了させた。彼の視線は次なる遠征地に向かっている。

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