あとがき

 今まで書いてきた小説は、すべて私を構成してきたものである。

 人々は私が懸命に連ねてきた小説を読む権利があるはずだ。

 積読消化キャンペーンに際してのあとがきを書こうかと思ったが、私は今まで書き物に尽力してきた。この努力への対価をきちんともらうべきであると思われる。むしろ、私が対価を受け取れないことでの損失が大きすぎるのだ。

 一説では三澗円ほどの損失があると言われているが、この単位など私は聞いたことがない。そもそも一生使い切ることのないほどの金額があったところで、使うのが難しいのだ。かといって現在の私はお金がないために親元を離れることができないでいる。

 親元を離れて生活していたことはあるのだが、基本的にもともとさほどお金を使わないタイプなのかもしれない。生活費以外で自分で買った『物』というのが、本とCD、DVD、パソコンくらいなのだ。物欲がないのかもしれないが、そもそも性欲がなくなるほどに働いていたのである。いきなり欲というものを出せというほうが難しかったりする。

 欲とは一体なんだろうか。人間は、食欲、性欲、睡眠欲があると言われているが、この小説を執筆しているときは、性欲もなく、眠れもしなかった。かろうじて食事は二食摂っていたが、食にも無頓着であった。ただ『働くため、生きるためになんとか食っていた』という感じだ。

 しかし、ようやく気付いた。この『欲』がないと、人は生きていけないのだ。だが、これらの欲ーー特に性欲に関しては人に迷惑をかけない範囲が好ましいと思われる。とは言え、性欲とは何かと考え出してもまた哲学的になってしまうだろう。

 文章を書くに当たって、気づいたことがある。ある程度の作家として書き物をするならば、結局行き着く先は倫理学(社会学的な分野)にもなるのだ。高校で倫理の授業はあったのだが、教科書を見るだけで正直なところ難しいと頭を抱えてしまう。しかし、それが『普通』なのだ。勉強というものを好んでする人間はいないということに気づいた。だが、私は別に好んで勉強をしてきたわけではないし、必要だから学んだだけである。そして、その学びに関しては自分の興味がある分野だけであり、基本的な暗記作業という『一般的な学問』をおろそかにしていると言えよう。

 今も少々真面目に書きすぎているし、冗長になると読まれない。

 この本は、確かに私の歩んだ痕跡だろう。しかし、それはもう過去となったと信じ、気楽に読んでほしい。


 最後になったが、この小説を読み、「なぜ小説を取られて月海は怒らないんだ!」と代わりに怒ってくれた方には御礼申し上げたい。


 もう、これ以上誰も悲しむことのないように。           

                      2025年1月8日 浅野エミイ

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雪咲会の些細な裏事情 浅野エミイ @e31_asano

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