第2話 模擬戦

『おっす!我が愛しの息子よ!元気にしてるか!?』


 電話に出ると開口一番父さんが俺にそう言った。


「...元気じゃねーな。女子だらけの空間なんて俺にとっては地獄だってーの。本当は適当に家で勉強して、冒険者の資格さえ得られればそれでいいと思ってたのに...」と、口を尖らせてそう言う。


『まぁ、父さん的にはそれで良かったんだけど...お前も知っての通り昔から頑固だからねー』

「頑固...ね。確かにそうだね。早速面倒なことに巻き込んできたよ。まぁ、今までに比べれば簡単なほうだけど」


 昔から爺ちゃんにはめちゃくちゃなことをされ続けてきた。


 僅か5歳の子を1人北極に置いてきたり、僅か7歳の子を裏格闘技大会に参加させたり、僅か10歳でSランクダンジョンに挑ませたり...。


『そうか。...頑張れ。お前は父さんと違って才能があるんだから』


 父さんは斎力を持っていない。

ただの普通の男である。


 隔世遺伝というやつか?

確かに俺には才能があった。

しかし、そんなことは置いておいて、やはり爺ちゃんには少しの感謝とかなりの恨みを持っているわけで...。


 それでも、きっと父さんよりは過酷な人生ではない。だからこそ、そこで言葉を飲み込んで「うん。頑張るよ」と言った。


 電話を切ったのち、俺はあることを調べ始めてから眠りについた。


 ◇1週間後


 あれから1週間が経過した。


 クラスの女子達はどんどんグループを作り、仲良くなっていく一方で、俺はただただ浮いた存在になりつつあった。


「...はぁ...何がモテモテパラダイスだよ」


 ちなみに、すでに模擬戦の話は全校生徒に広まっており、そのせいもあってか大々的な模擬戦が行われようとしていた。


 勝つにしろ負けるにしろ目立ちたくないんだが...。


 そんなことを思いながら、渋々、集合場所である昼休み、第二体育館に向かった。


 俺が到着した頃にはすでに体育館を埋め尽くす人達で溢れかえっていた。


「...んだよ、この人数。見せもんじゃねーぞ」と、呟いていると、正面に3人の女子が立っていた。


 西園寺 里奈/西園寺 瀬奈/西園寺 瑠奈


 そう、この学校の最強の3人とは三つ子だったのだ。


 顔も髪の毛もスタイルもまるで一緒。

分身の術でも使っているのではないかと思うほどの瓜二つぶりに、思わず目を奪われる。


 うん、可愛い。可愛い三姉妹だ。


 そう感心しながら、頭を下げるが、向こうはこちらを睨みつけていた。


「...理事長の孫だからって、なんで私たちが一年なんかを」

「そこはしゃーないでしょ。てか、むしろいいじゃん?噂の1年をここで倒せるなら」

「タイマンですらないとか、本当舐めてる」


 なるほど...だいぶご立腹のようだ。

それもそうか。

さて、どうしたもんかな...。


 会場からは彼女達3人に対しての黄色い声援だけが響き渡る。

あーあ、勝ったらやばいやつだよ、これ。


 そんなことを思いながら、定位置に着くと審判的な人がやってくる。


「ルールは簡単。相手を気絶させるか、どちらかが降参した場合に終了とします。相手を死に至らしめる攻撃などは禁止です。他は何をしても構いません。それでは、構え!」


 俺は片手を取り出して、ぷらぷらと手を軽く振る。


「...模擬戦スタート!」

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