貞操逆転した世界で女子だらけのダンジョン高校に【永世斎王】の孫が入学した
田中又雄
第1話 ダンジョンと女子だらけの学園
【挿絵】
https://kakuyomu.jp/users/tanakamatao01/news/16818093089863099262
約80年前、第二次世界大戦終結後、突如現れたダンジョン。
ダンジョンは全10種類が存在する。
(SSS,SS,S,A,B,C,D,E,F,Gランク)
それぞれのダンジョンには期限があり、その期限内にダンジョンを攻略しないと、地上にモンスターが溢れる。
そのため、最初は軍隊を用いて、必死に応戦していたものの、ダンジョン登場とともに、一部の人間に【覚醒】が起こった。
覚醒すると、体内から精神エネルギーが湧き出るようになり、魔法もしくは超能力のようなものが使えるようになる。
それを使ってダンジョンを攻略するようになった。
この特殊な力を【斎力】と呼ぶ。
そして、その最初の覚醒者こそ【大神 零落】だった。
後に行われた国際ダンジョン冒険者大会にて、7連覇を果たしてたことで、【永世斎王】と呼ばれるようになる人物である。
また、基本的に【斎力】を持つのは女性だった。
その影響で一気に女性の社会的立場と武力的な向上により、世界は一気に女性優位に傾いた。
更にそれに伴い、世界的に出生率は男1:女9という割合になったことより、よりその動きは顕著となり、現在では貞操観念すら逆転した世界になっていた。
そんな中、超名門ダンジョン高校【私立斎王高校】に一人の男が入学することとなり、入学前から騒がれていた。
その男の子の名前は【大神 大河】。
永世斎王の孫であった。
◇
「...粟次中学から来ました、大神 大河です。趣味は読書、特技はボーリング。男子は自分1人だけとのことだったのですが、みなさんと仲良くしたい思っておりますので、お願いします」と、見事に自己紹介を終えるも、皆が俺を見る目は冷たい。
拍手をしているのも担任の若松先生だけだ。
「...いくら理事長の孫とは言っても、この名門校に男が入ってくるなんて...」
「ね。学校の名が汚れる」
「てか、同じ空気吸って欲しくないんだけど」
「ちょっ、聞こえるよ」
そんな陰口が耳に入る。
...ったく、だからこんな高校に入りたくなかったのに...。
俺が入学したこの私立斎王高校は、名前の通り永世斎王である大神零落が創設したダンジョン冒険者専用の高校となっている。
全国から優秀な生徒のみが集められており、現在の冒険者の約7割がこの高校の出身である。
そして、俺はその大神零落の孫であり、爺ちゃんに言われるがまま、無理やりこの高校に入れられたのだ。
女子が99%のこの学校で俺にどうしろと...。
「あぁ...もう退学したい」
そんなことを呟きながら、入学して早々の自己紹介タイムが終わる。
そして、HRが一旦終わると若松先生に声を掛けられる。
「大神くん。ちょっと、来てもらっていいかな?」
「...はい」
零度の視線から逃げられるならどこへでも行きますとも...と、そんなことを思いながら教室を出る。
そうして、先生と談笑しながら廊下で話すも、すれ違う人たちの目線もやはり冷たい。
「若干、10歳で単独Sランク踏破...、13歳の時に単独SSランク踏破で、去年に単独SSSランク踏破...。どれも最年少記録だよね。すごいよね」と、笑いながらそう話しかけてくれる。
「...そうですね。けど、どこにいっても永世斎王の孫として見られるのはそれなりにしんどいですがね」と、少し愚痴ってみる。
「...そうだねー。確かにそれはしんどいかもね。けど、先生はちょっとだけ羨ましいな...。先生もね、昔は冒険者をやっていたから」
「そうなんですね」
そういや爺ちゃんが言ってたっけ。
この学校の教職員は全部爺ちゃんが選んでるって。
そんな話をしていると理事室に到着する...。
まさか呼び出したのは...って言うまでもないか。
先生はノックして、「理事長。連れてきました」と扉を開ける。
そこには満面の笑みを浮かべた爺ちゃんがご立派な椅子に座っていた。
「...爺ちゃん」
「おーおー、よく来た、我が孫よ」
相変わらず外面はいいな。
「失礼します」と、先生が居なくなった途端、いつもの怖い爺ちゃんに戻る。
「自己紹介はうまくいったか?」
「...うまくいくと思う?」
「いかんだろうな。お前、人見知りじゃし。女子への耐性低めじゃし」
「...」
嫌なじじぃだ。と、心の中でつぶやくと爺ちゃんの目が鋭くなる。
「...いや...何も思ってないよ?俺の爺ちゃんはなんて優しい爺ちゃんなんだって思っただけだよ?うん」
「...まぁ、ワシのことをどう思おうと勝手じゃが...。一つ、お前に朗報がある」
「朗報?」
すると、爺ちゃんの後ろに三人の女子の映像が映る。
確か...この三人は...。
「我が校で三強と呼ばれている女子達じゃ。既にプロの冒険者並みの実力を持っており、在学中でありながらS級の資格も取得済み。将来有望な子たちじゃ」
「...で?」
「もう分かっているじゃろ?お前には来週、この三人と模擬戦をしてもらう。そこで勝てばきっと、モテモテの学園ライフが待っているはずじゃよ?」と、不敵に笑う。
...これのどこが朗報だよ。
「...正直に言うと、負ける気が一切しないんだが?俺はどんなハンデをつけて戦えばいい?」
「そうじゃのう...。使うのは片手と片足のみ...魔力も5分の1に制限したうえで、制限時間を設けるというのでどうじゃ?」
...思ったより緩い条件だな。爺ちゃんのことだからもっとえげつない条件を突きつけるのかと思った。
「ちなみに負けた場合、もしくは制限時間内に倒せなかった場合は、お前を女子寮に住ませるつもりじゃから覚悟しておけ」
現在の快適一人暮らしから、女子だらけの寮で一人暮らしか。
...もしそうなったら終わるな。
学園生活も...人としても...。
「...まぁ、それなら俺も本気でやらざるを得ないな。てか、勝っても俺に待っているのはハードな未来だと思うんだが」
「詳細はメールしておくから、それで確認しておけ」
...無視かよ。爺ちゃんは一度決めたことは死んでも曲げないし、文句を言っても仕方ないか...。
そうして、俺は理事長室を後にした。
さて、どうしたものか。
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