第一章5話 『スピード解放』

チュン、チュンチュン———


もうそろそろ日の出の初刻だ


「さ、さすがに徹夜でスライム狩りはきつ過ぎる」


自分への戒めも込めて、ぶっ倒れるまでスライムを狩ろうと決めていた。


カーーン


初の刻の鐘が城門の外まで聞こえてくる。


「そういえばレベルはどれくらい上がっただろうか……」


ギルドで貰ったカードを取りだして確認する。


「11レべか……これはどうなんだ?」


特にすごいのかは分からないが、一晩でこれだけ上がれば満足だ。


「相変わらず力は2で……スピード2万!?なんだよそれ!!」


速くなった実感はあった、だが疲れすぎていてスライム相手にフルスピードを出す気力がなかった。


「こ、これなら遅刻もしないだろうし、エレナだって見直してくれかもしれない……!」


徹夜でモンスターを狩っていたにしては気分上々だ。

だが体はボロボロ、足を引きずって城門を通り国に戻る


一応6時間ほど働いた分の給料である銀貨3枚(約3000円)は店を出る前に貰っている。


「とりあえず回復薬的なアイテムを買って回復しないと……」


街道にはお店がずらっと並んでいるので、回復薬はすぐに買うことが出来た。


「ぷはっ、生き返るぅぅ!」


まだ眠気は残っているが、体の傷や疲労は軽く取れた。


「よーし、とりあえずもう一度至高の晩餐に行ってみるか……よし!」


ススムの歩みは堂々かつずっしりとした安定感があった。


それは、昨晩の努力が作り出したものだ。


心なしか歩くスピードもかなり速くなった気がする。


思ったより早く至高の晩餐についたのであった。


「開店!」


マルコさんが店の前で叫んでいると同時に、お客さんが何人も入っていく。


午前の部が丁度始まったところだった。


これは好機だ、さすがにお客さんの前でチョップやら跳び蹴りやらをしないだろう。


「すみません!ススムです!もう一度っ」


「何しに来たぁぁぁ!」


「あぁぁぁ!」


入店早々マルコにチョップされた、俺様の計画が……


「ススム君!お早い再開ですね、料理を食べに来てくれたんですか?」


「どうせもう一回働かせてください―とかなんだろ?」


マルコがにやにやしながらこっちを見ている。


「そうですよぉ!もう遅刻はしませんのでお願いしますぅ!」


「ダメに、決まってんだろぉ!」


「ぶふぉっ」


今度はみぞおちに重い一発が入る。


みぞおちばっかり殴ってくるのはルミナだけだ。


「お、おいっお客さんの前で暴力なんてっ」


「ンなもん知ったこっちゃねぇよ!だいたい遅刻するお前を、」


「きゃーー!食い逃げよぉーー!」


女性のお客さんが悲鳴を上げて店の外お指差す。


一人の男が走って店を出ていくのが見えた。


「ほーれ小僧の相手をしている間にやられたな」


「マルコさん……!」


「おいマルコ、追いかけるか?」


おそらく相手もかなり手練れ、捕まえるのは難しいだろう。


ここは


「俺が行きます!絶対に捕まえてくるんで!」


「ス、ススム君」


すぐさま店を出る。


「ほぉー、もし捕まえてきたら考えてやるか、もう一度働く件」


「ま、無理だろうよ、エレナ、仕事再開するぞー」


「は、はいルミナ姉さま……ススム君」


一方ススムは


「いっくぜーおりゃっ」


思いっきり地面を蹴る。次の瞬間、強風が顔を襲う。気ずいた時にははるか上空にいた。


「い、いやぁぁぁぁ!」


初速が速すぎて、前ではなく上に飛んでしまったのだ。


「い、いた!あれが食い逃げの犯人か!」


上空で体勢を立て直して食い逃げ犯を捕捉する。


「で、でもさぁこれ、どうしたらいいの?僕スピードしかとりえないんだけど、っていやぁぁぁ!」


急落下する。何もできずただ叫びながら落下したのだった……




こ、ここは、川?俺はどうしてこんなところに……って向こう岸で子供の頃に死んだはずのひいばあちゃんが。


落下したところまでは覚えている。つまりはこの状況、落下の勢いで死んでしまったんだな



「って死んでたまるか!」


「ススム君!」


そこは至高の晩餐、何でこんなところに?しかも外はもう真っ暗だし。


「やっと起きたかススム、って寝すぎなんだよ」


一体どういうことだ、そういえば


「食い逃げ犯はどうなったんです?!」


「小僧、お前のおかげで気絶していたところを取り押さえられたぞ」


「よ、よかった……」


「エレナなんか、ずっと心配して泣きそうな顔してたんだからな」


「もう!マルコさんそれはダメっ!」


おっと、これは最高だなぁ。この恥ずかしがっているのも何もかも。エクセレントゅ


「もう一度ここで働きたいんだろ?」


「は、はい!ここで働かせてください!」


「いいよっ!」


「即決かよ!」


「ま、お前の功績だよ。今後もしっかり務めるようにな」


「イエッサー姉貴!」


「誰が姉貴じゃぁぁ!」


思いっきりみぞおちを殴られるという定番の流れ。


「ススム君改めてよろしくね!」


苦笑いの後に、美しい笑顔をこちらに向ける。


「あぁ!よろしくなエレナ!」


これよこれ、こういう純粋な恋愛ってのはいいもんだなぁ。


「おい小僧、明日は二の刻集合だぞ、二の刻だからな」


「遅刻したら、みぞおちに穴が開くと思えよ?」


これはマジのやつだろうな、笑えねぇ……。


「イエッサぁぁー!」


「頑張ってねススム君!」


俺は誓った、もう遅刻はしないと!

それに俺のスピードなら大丈夫だ!


自信満々なススムはエレナとともに寮へ帰るのであった。




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