第一章4話 『鬼畜パクリスキル』
「ど、ど、ど、どうしよう……私が起こして一緒に来れば、ススム君が遅刻することはなかったのに」
「なんだ?そういやあいつ遅刻してんじゃねえか、エレナのせいじゃねぇよ」
ルミナはエレナの肩を軽く叩き、開店の準備に入る。
マルコはとっくに厨房で仕込みやらなんやらをせっせとしている。
「はぁ、遅れてっすいませんっ」
「ススム君っ」
2分程遅刻して至高の晩餐へ飛び込んだ。
「働きだして早々遅刻たぁいい度胸じゃねぇか」
「す、すいません、自分遅刻しやすい体質と言いますか」
「そんなんで遅刻されてたまるかぁー」
またもやみぞおちを殴られてしまった。
今回は俺が遅刻してしまったのが悪いのだから仕方ない。
「ススム君……」
「おいススム、お前遅刻か」
マルコがこちらに目を向けず、作業をしながら話しかけてくる。
「寝坊してしまって……すいません」
「判決を言い渡す!死刑!」
「重すぎだろ!」
一回マルコには気絶させられているから、冗談に聞こえないのがおっかない。
「死刑は冗談だがススムはクビ!もう働かさせないもんね!」
予想していた通りだが、せっかくまともに生活できると思ったのに……
「ススム君……私にはどうすることもできなくて、ごめんなさい!」
俺は惚れた女性にこれだけ気を遣わせて、ダサいって俺……
「いやいや、僕が寝坊したのが悪いから……また会おうね」
「きんもいこと言ってねぇでさっさと出てけ!」
「は、はいぃぃ!」
ルミナに脅され元気よく返事をする。
ススムは急いで至高の晩餐を後にした。
その後ろ姿が見えなくなるまでエレナは外を見ていた。
「ど、どうしよ……これじゃあ生活できねぇよ」
ススムは大きな街道をしょんぼりした見てくれで歩いていた。
今後のことをぼーっと考えながら数十分歩いた。
「ん?ここは?やけに大きくて人の出入りが多い建物だな」
そこには普通の建物5階分くらいで、武装した人々が出入りしていた。
「ここは……ギルド?そうか!この世界にもギルドとかあるんだ!」
そこはこの世界のギルドであった。
ギルドとは一般的にモンスターを倒すなどのクエストを攻略してお金をもらうところだ。
「こ、これだ、とりあえずギルドで生活費くらい稼ごう」
ススムは一回り大きな扉を開け中に入る。
受付の場所、掲示板、フードコートのような空間
とりあえず受付のお姉さんに聞いてみるか
「あのー、初めて来たものなんですが……」
「はい!冒険者登録ですね!少々お待ちください」
「えっと、あ、はい」
話しかけたら冒険者に登録することになったんだけど。
まぁお金を稼ぎたいんだから別にいいんだけども。
「登録完了しました、このカードをお渡ししますね」
「これは?」
俺の名前と、何やらよくわかんことが色々書かれている。
「このカードはレベルの確認やスキルの会得をする際に使うものなので、大事に持っていてくださいね」
「レベル……スキル……ありがとうございます!」
この世界作った人に感謝!
やっぱり想像していた通りのファンタジーだ
つーことはいつか魔法が使えたりもするのか。
「早速ですが何かお仕事ありますか?」
今すぐにでもモンスターを倒しまくってレベルアップしたい。
そして最強のスキルとか魔法を使えるようになるんだ。
なんたって俺は、この物語の主人公だ!!
「あ、あのぉ」
「はいはいなんでしょう」
心の中だけの声だったが、表情は完全に漏れていて気持ち悪い笑みを浮かべてしまっていた。
「こちらのスライム討伐クエストとかどうですか?倒した数だけ報酬がもらえますよ」
「行ってきます、帰りは遅くなるので先に寝ててもいいですよ」
「は、はぁ」
受付嬢は困惑していたが無理もない。今ススムは猛烈に燃えている。
遅刻してしまって、めっちゃ優しくてかわいいエレナにも迷惑をかけてしまって、どうしようもないと思っていた。
だが今は違う、ここまで晒してきた醜態を挽回できるチャンスが転がってきたんだ。
「スライムでとにかくレベルアップだ!」
ススムは城門を出て、スライムの待つ平原へと向かう。
「おっこれがスライムか、なんか可愛いな」
ちっさくて攻撃力はなさそうだ。だが貿易や疫病的に良くないらしい。
とりあえず武器もないので、体術で倒していく。
「ワンパンで倒せるなんて、なんだか楽しくなってきたぞ!」
ススムはとにかく倒しまくった。
「おっ!今レベルアップしたような気がしたぞ!」
20体ほど倒したところでレベルアップする感覚がした。
急いでカードを見る。
「おぉぉ!レベル2に上がってる!」
初レベルアップ、いったいどれくらい成長するのだろうか
「フムフム……パワーが2から2、ガードが1から1、スピードが4から30で魔力は0と」
まぁまぁこんなもん
「ってスピードだけ上がるのはおかしいだろおぉぉ!」
スピードだけ成長されても困るんだが!
何でスピードだけこんなに上昇しているのだろうか。
「んーー、おっ?これは……スキルか?」
カードのスキルが書かれる欄のような場所に何かが書かれている。
「走れメイロス?ってこれ走れメロスのパクリじゃねえか」
パクリスキルを勝手に覚えていた。怖すぎるだろ。
「効果はっと、レベルアップの際にスピードしか上がりませんってふざけんな!」
スキル、走れメイロスはレベルアップしてもスピードしか上がらないという鬼畜なスキルであった。
「終わりだぁ……俺の異世界ライフが、勇者になるっていう定番の設定が……」
スピードだけ速くても逃げ回るくらいしかできないじゃねぇか。
そんな勇者いねぇよ!
「エレナに見直されてえな、遅刻さえしなかったら……遅刻さえ、そうか!」
スピード以外は上がらなくてもスピードだけは爆発的に成長するらしい、だったら
「スピード上げまくったらもう遅刻しなくね?」
今までススムを苦しめてきた遅刻をしてしまう体質とも今日でおさらばだ。
「やってやる!遅刻しなくなった俺を、成長した俺を見せつけてやるーー!」
それからススムは一晩中スライムを狩り続けたのであった。
————————————————————
最後まで読んでいただきありがとうございます!
もし面白いと思っていただけたならフォロー、応援していただけると励みになります!
初めて書く小説、完結まで突っ走ります!着いてきてくださる方募集中!!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます