第一章3話 『異世界初仕事』

神は言っている、ここで死ぬ定めではないと……


「はぁ、何だろう、この心地の良さは、たわわな果実が2つ、かぁじつっ」


「え、えっとぉ、おはようございます」


「ってごめんなさいぃぃ!」


後頭部の心地よさは彼女の柔らかくてすべすべした膝によるものだった。


それよりなんでこんな状況に……そういえば跳び蹴りを食らって気絶していたんだった


「あのぉー結構気失ってた……?」


「小一時間気絶していましたよ」


小一時間も膝枕させてしまっていたのか、俺としたことが……


そういえば気絶する前にマルコはあと一時間で開店するとか言っていた気が……


「やっと起きたのか、もう開店するんだからとっとと着替えて準備しろー」


「あんただろ!俺を蹴り飛ばして気絶させたのは!」


「いやぁー心臓の位置を間違えるもんだからついつい」


ついつい蹴っちゃいましたが通用してたまるか。こっちは意識が天に向かって羽ばたいて行ってたんだぞ。


「あと5分でお客さんがなだれ込んで来るぞ、エレナに準備の仕方をを教えてもらえ」


「エレナ?」


「はい!申し遅れました、私はエレナ・ヴィヴィアーチェと言います」


膝枕までしてくれた黒髪ショートカットのこの子の名前、絶対忘れないぜ


「では早速制服に着替えて準備に取り掛かりましょ」


「おう!よろしくエレナ!」


良かった、こんなに素晴らしい子と働けて。あの暴力おじさんを考慮してもこのお店に来てよかった。


「誰だてめぇ、新人か?」


奥から制服を着た女性がこちらを睨んでいる。


「ルミナ姉さま、こちらは新人のススム君です」


「こんなところに新人が来るなんて珍しいな」


「仕事案内所で紹介してもらったから来てみたんだ、よろしくな姉さま」


「姉さま呼ぶなぁ」


「ぐふぉ」


ここの人はなんでこんなすぐ暴力を振るってくるんだ。

姉さまって言っただけでみぞおち本気で殴ってくるなんて。


「私はルミナ・ジェリーニだ。ススムっつったか?お前が調子乗りやがったことはエレナに免じて許してやる。次はねぇからな」


「はいぃっ」


どいつもこいつもおっかねえ。俺の味方はエレナだけか。メインヒロインはエレナに決定……


「ススム君、この制服に着替えたら注文を取ったり料理を運んだりしてもらいますね」


「おうっ初日で分からんことばっかだけどよろしく!」


「はい!」


とりあえず今日はしっかり頑張ろう。


「よっしゃぁぁぁぁー開店――!」


外に出てマルコが叫ぶ。

店の前はまぁまぁ大きな通りなので、十数人がマルコの声に反応している。


「マルコさんはいつもああして店の前で開店することを知らせているんです。そのおかげですぐにお客さんが来ますよ。ほらっ」


「3名様ごあんなぁーい!」


「あいよっ」


マルコとともに3人のお客さんが入店する。


姉さ、ルミナさんは返事をすると接客の準備をする。


「俺は何をしたらいいんだ?」


「では皿洗いと料理を運ぶ係でお願いします。」


「了解!」


敬礼をしてすぐに皿洗いに取り掛かる……


そんなこんなで最後のお客さんが店を出て、一日目のお務めを終えた。


「どうだ、初仕事は」


「いやー忙しすぎますよ……てかマルコさん料理上手すぎだろ」


「はっはっはー、俺様の料理の腕はこの国随一よ」


「マルコさんはただのシェフではないんですよ」


「エレナ、それはどいうことだ?」


どうせこのおっさんのことだ、巷で暴力シェフとか言われてるんだろう。


「マルコさんは国家三傑の一人であり、最上位のシェフ・ファ・ランドールの称号を持ってるんですよ」


「国家三傑!?最上位!?フ、ファルンドリル!?」


「そうさ、じじいはこう見えてこの国トップクラスの料理人なんだぜ」


「じじいって呼ぶなよルミナー」


こんな上品さのかけらもないおっさんがシェフの階級の中で最上位?しかもこの国で三傑に選ばれている?


「おいおい、疑ってんな?」


「しゃーねぇーだろ、こんな変なおっさんが最上位なんて誰が信じるかって」


「誰が変なおっさんだーい」


このおっさんが最上位だとして、俺はこれからこの国トップレベルの店で働くことになるのか


「大丈夫ですよススム君。マルコさんはすごい人ですけどこのお店のコンセプトは普通のレストランですから」


確かに、料理の値段も銀貨一枚、1000円程度とお手軽ではあるな


「もう今日は解散だ、とりあえずエレナに寮の部屋を教えてもらえ」


そういうとおっさんは店の奥の部屋に入っていった


「明日は二の刻集合だ、遅れるなよ」


「ルミナさんルミナさん、二の刻って、何?」


「おいおいお前そんなのも知らねぇのかよ」


おそらく時間なんだろうが、ススムにはこちらの世界の時間の概念は分からない。


「二の刻ってのは日が昇って二回目の鐘の鳴る時間だ。3回鐘が鳴るから、3回目が鳴るまでに来ておけ」


なるほど、日が昇って2回目ってことは日が昇るときに鳴る1回目、その次に鳴る鐘の3回目までに来ればいいのか。


「あたしゃ先に戻ってるから、エレナと気をつけて帰んな」


「ススム君、寮まで帰りましょ」


女の子が一緒に帰ろうなんて、異世界ライフ最高!

しかも女の子と同じ寮?一つ屋根の下……ムフフ


そんなやましいことを考えながら、街灯の灯る夜道を歩いていく


「そういえば刻?っていうのを詳しく教えてくれねぇか?」


時間の概念は必要不可欠だ。でないとまた遅刻してしまうかもしれん。


歩きながらエレナの説明を真剣に聞いていた。


つまりこうだ。この世界では日が出ている時間と日が出ていない時間は同じらしい。

日が出る時が初刻、日が落ちる時が七の刻である。その間に均等に二から六の刻が入る。


だから大体2時間で一刻ずつ過ぎて行くという所だ


夜も八の刻から続いている。


シンプルで分かりやすい。

ちなみに鐘が鳴るのは日が出ている間だけらしい。


「着きましたよ、ここが寮です」


「ほぇ~豪華だな」


小さめのお屋敷といった建物が寮だった。


その後は少し部屋の紹介をしてもらって、解散した。


明日は二の刻に集合ということだが、今が何の刻だか分からないし目覚ましも無い。時間通りに起きられるのか心配だったがとりあえず寝よう。


まぁ鐘も鳴るらしいしどうにか……


チュン、チュンチュン———


カーテンの隙間から除く日光が顔を照らす


小鳥のさえずり、いい朝じゃないか


「今何時だっ!!」


カーーン、


鐘の音、急いで外を見る。あっきらかに初刻の鐘ではない。なぜなら日の出の瞬間になるのが初刻、太陽の位置的に今はそれから2時間くらい経っている。


「つまりはこの鐘、二の刻か……やばい!」


急いで部屋を飛び出す


カーーン


二回目の鐘が鳴る


ルミナさんが3回鐘が鳴るから、3回目の鐘が鳴るまでに来いと言っていた。


ここから至高の晩餐までは500mほどあるだろう。


「これは流石に終わっ」


カーーン


異世界でかました初遅刻

これはクビだろうと覚悟を決めて、ススムは全力疾走した……



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