第一章6話 『新たなる仲間』
「ス、ススム君のことが、好きですぅ!」
エレナが顔を真っ赤にしながら、告白してきた。
これが異世界っ!やはり異世界に転生すれば勇者のお役目やらヒロインとの恋やら、忙しいもんだなっがぁーーはっはっはー
チュンチュン————
「って夢かよ!」
くそっ、まだヒロインからの告白は気が早かったか。
ってか、今何時?
カーーン
「って寝坊じゃねぇかぁぁぁ!」
急いで窓を開けて至高の晩餐の方を見る。
距離は500mほど、ここから最短距離で行くには
「こっからぶっ飛ぶしかねぇだろ!」
思いっきり窓から飛び出す。
カーーン
2回目の鐘の音
あと一回鳴るまでに店についておかなければ、みぞおちに大きな穴を空けられる。
飛び立った瞬間、空気を切り裂くように放たれるススムの体は音速を超える。
「いやぁぁぁぁぁああ!」
一瞬のことだ、光る電のごとく至高の晩餐の前に着弾する。
カーーン
「し、審判!判定はどうでしょう!」
エレナがルミナの方を見る。
「セーフ、セーーーフ」
ルミナが野球の審判のように腕を横に広げながら叫んだ。
「お、おはようございます……何やってんすか」
「何じゃねぇよ!お前がなかなか来ねぇからまた遅刻かと様子を見ていたんだよ」
「ススム君、ぎりぎりだけど間に合いましたね!」
ぶっ倒れているススムをニコニコしながら見下ろす。
「おーーいお前ら、遊んでねぇでさっさと働け――」
「あーーい」
ルミナは返事をして店に入っていく。
「ススム君行きましょ!」
「おう!」
ぎりっぎりだったが何とか間に合った。これは俺のスピードのおかげだ。
スピードしか上がらないスキルってのは何とも鬼畜だが、まぁ遅刻を回避できたことに免じて許してやろう。
それからはとにかくまじめに働いた。
なんともない、可愛い美少女と鬼怖い姉貴と、めっちゃすごいらしいけどただの暴力おっさん。この面子で至高の晩餐を経営していく……
そんな毎日が続いて……
「っておかしいだろ!」
「なんだよススム、叫んでねえで準備しろよ」
おかしい、異世界転移したはずだぞ俺は。
もっとこう勇者になって魔王を倒す的なイベントはねえのかよ
確かに充実しているし、ヒロインだっているさ。でも俺の体は刺激を求めているんだっ
「ススム君!さっきマルコさんから聞いたんですけど、今日は新人さんが来るらしいですよ!」
おーーこれは刺激的だ!もしかしたらその二人が戦いだのなんだのと刺激的なイベントを持ってきてくれるかもしれない!
「エレナ!これは俺たちの毎日が刺激的な毎日になる、その第一歩なのだ!」
「うぉぉお!」
エレナが目を輝かせてこちらを見ている。
「いやいや何エレナまで期待してんだよ……ただ新人が入るだけだろ」
「分かっていないなぁ、本当に分かっていないよルミナさんは」
イラッとしたような顔になるルミナ。
「僕の生活はこんな平凡であっていいはずないのだよ!」
「は、はぁ」
ルミナでさえ突っ込む気力が無くなるほどの能天気さだが、エレナはわくわくした顔で頷いている。
「すみませーん、今日から働くことになっているんですけどー」
スイングドアの向こうでこちらに呼びかける一人の少女。
「おっ来た来た!あれが今日から働く新人か!」
店の中に入ってくる。
その子はツインテールで可愛らしい女の子だ。
「私の名前はカリン・オリオール、今日からこのお店は私に任せなさい!」
「はぁ?何言ってんだ?」
思わず思ったことをそのまま口に出してしまった。
「何言ってんだとは何よ!魔法使いにして頭脳明晰な私が来たからには、この店は安泰だって言ってんのよ!」
だめだ、期待していた俺があほだった。
確かに、見た目はいいかもしれないが?何だこのよく分からんめんどくさそうな奴は
「魔法使いぃ!頭脳明晰ぃ!」
「エレナ、なんでこんな奴に目を光らせてんだよ……」
ルミナは天然っぷりに、少し引いたような目でエレナを見ている。
「おうおう来たか、俺が店長のマルコだ。よろしくな」
「えぇ、私の仕事っぷりに期待しておきなさい!」
こんなこと俺がマルコさんに言ったら即チョップの刑だぞ。
「なんでこんな奴入れ」
「少女に向かってこんな奴言うなぁぁぁあ!」
「いったぁぁぁ!」
なんでここで俺がチョップ食らうの?意味わかんないんだけど!
「プークスクス」
カリンとか言ったか?あいつ俺がチョップされたのを見て笑ってやがる。
「エレナとススムで仕事を教えてやれ、ルミナは準備だー」
「ういーっすおっさん」
だるそうに返事をしてルミナは仕事に戻る。
「あなたたち、自己紹介をしなさい」
「あー?お前に名乗る名前なんて無いのな」
そう言って小指で耳掃除をする。さっき煽ってきたお返しだ。
「私はエレナ・ヴィヴィアーチェです魔法使いさん!」
「魔法使いさんと呼ぶなー!私のことはカリンと呼びなさい!」
「カリン!よろしくね!」
エレナの純粋な笑みに負けるカリン。
少し恥ずかしそうな顔をして
「よろしく、エレナ」
「なぁ~に恥ずかしそうにしてんだ!さっきまで私に任せなさいっとか言ってたくせによぉ」
「別に恥ずかしそうになんてしてないし!それより早く名前を教えなさいよ!」
はぁー俺の異世界ライフはここぞというときに上手くいかないよな……しかたがない
「はいはい、俺はススムだ、忘れたら承知しないからな」
「そんな変わった名前、忘れる方が難しいわよ!」
「なんだと!」
カリンとススムの間に火花が散っている。
「にぎやかになって嬉しいです!」
バチバチな空気の中、一人和んでいるエレナ
「そんなんじゃねぇよ!」
「そんなんじゃないわよ!」
二人の声が重なる。
思っていたのとは違うが、異世界ライフに新たな刺激が舞い込んできたのだった。
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