第一章 《スピードに全振りします》
第一章1話 『仕事探し』
「なるほどなるほど、しっぽ、体毛、それに猫耳と…」
なんとも日本らしくない、現代らしくない世界には人間らしくない人間?もいた
「まぁ異世界ものならばお約束って展開ではあるが、やっぱり猫耳の少女可愛いぃぃ!」
突然の異世界転移であっても怖がることはない。なぜなら、こういった異世界ものは義務教育としてしっかりと学んでいる。それに、異世界転移というものはいつも突然なのである。
「つーことはやっぱりあるのかな……魔法っ!」
異世界に魔法がないなんて聞いたことがない、ここは一つ試しておいた方が今後のためだ。
それに、異世界転移した主人公は大抵国家を揺るがすほどの魔法が使えたりするもんだ。
ピースの人差し指と中指をくっつけた状態で、額に指先を当てて目を閉じる。
全ての気力を指先に集中させ、今だっ!と言わんばかりに目を見開きこう叫ぶ…
「魔貫光殺法ぉぉぉ!」
額に当てていた二本の指を天に向け叫ぶ、が禍々しい光線が出るどころか周囲からの冷ややかな目線を食らう。
「おいおい嘘だろ、ってまぁ現実はそう上手くいかないってことか…」
憧れの光線は放てず、主人公補正はかかっておらず、期待を裏切られしょんぼりする。
「だがすぐに元の世界に帰れるもんでもないだろうし、まずは衣食住の確保を先決しねぇとな」
非現実的な異世界であっても現実的な問題は残り続ける。
とりあえず歩きながら今後の生活について考えることにしよう。
「今の持ち物は、ナップサックに水筒とタオル……ってこんだけかよっ、」
起床して3分後には家を飛び出たススム、大したものを持ってくることなど当然できなかった。
体操服と背負ったナップサックにタオルと水筒、異世界に転移させた奴がいるなら一度説教しておきたい。
「おそらくお金が無いとどうにもならねぇし、とりあえず仕事だな」
幸い文字は読めるようだ。人が話している言葉もわかるので意思疎通も普通にできるだろう。
「とりあえずあそこに立ってるしっぽがかわいい美女に聞いてみるか」
沿道にある八百屋っぽい雰囲気のお店の前で立つ、茶猫の女性に話しかけてみる。
「あー、エクスキューズミー?お仕事探してるんですが、どこに行けばお仕事見つかりますかねぇ……」
初めてのコミュニケーション、緊張と不安でカタコトな話し方になってしまった。美女の前でコミュ障感を出すなんて、これで最後にしたいものだ
「お、お仕事ですね、でしたらこの道をまっすぐ行くと右側にお仕事を紹介してくれる仕事案内所がありますよ」
少し驚いていたようだが、笑顔で教えてくれた。異世界の美女……めっちゃいいかも
「こっちにもそういう仕事紹介してくれるところがあんのか……」
「こっちにも?そういえば珍しい格好されてますね、どちらの国から来られたのですか?」
珍しい格好、私服で着ているなら鬼ダサい格好をしていることに気づかされる。
辺りを見渡す限り皆いかにも異世界ファンタジーの服装って感じである。
「国かぁ、俺は東の果てにある島国からやってきたんだ!」
「東の島国……そんな国があるんですね……」
自信満々に言ってみた、だが美女はしっぽをゆ~らゆらさせながら頭を傾げた。
もしかしたらわが母国日本のような国が、と期待してみたがどうやら東に島国はなさそうだ。
「そ、それじゃあ今から仕事ゲットしてくるんでまたどこかで会いましょう!」
変な空気になってしまったのでとりあえず逃げるべし
「え、えぇ、頑張ってくださいね!」
茶猫美女は小さく手を振って応援してくれた。
愛想良くていい子だったな……仕事見つかったら絶対あの八百屋通う
強い意志とともに堂々と仕事案内所へ向かう
道路には馬車が頻繁に通っている。車の変わりは馬ということか。
そんなこんなで5分ほど歩くと仕事案内!と書かれた建物の前についた。
建物の前で立ち止まった時点でお店の人はこちらを伺っていたので、戸惑っている暇もなくドアを開ける。
「いらっしゃいませー、仕事をお探しですか?それとも退職代行ですか?それとも職場にカチコミ代行ですか?」
「なんだよカチコミ代行って!!」
「言葉の通り今務められている職場にカチコミに行きますっ!」
「おっかねぇなおいっ!」
入店早々、自分の常識が通用しないことを悟らされた……にしてもおっかない。
ビジネススーツのような制服を着た二十歳くらいの美人が元気に接客してくれる。
「色々あって無職無一文で家無し、頼れる友人なしなんだよ」
「そんな状況になった色々ってのが気になりますけど……それかなり絶望的ですね……」
異世界から来ました、と言っても混乱が生まれるだけだろうから濁して状況を説明する。
「だから、とりあえず仕事して生活できるようにしようかと」
「なるほどですねぇ……少々お待ちください」
そう言うと大量の書類が挟まれた木製のファイルを棚から取り出し、ぺらぺらとめくりだす。
先ほどとは打って変わって書類を精査する姿はキャリアウーマンそのものだ
「見つけました!」
「は、はいっ!」
急に大きい声出されたら驚いちゃうだろ。
変な声で返事してしまったじゃねぇかよ
「この飲食店でしたら寮付きですし、今日面接して働くこともできますよ!」
「至高の晩餐……これ店の名前?まじかよ……」
飲食店至高の晩餐、至高って何だよ。ただの飲食店じゃないのか?
「今のあなたの状況でしたらここが一番いいと思いますよ」
「だよな……よし!ここに決めた!」
「ありがとうございます!それでは案内料金ですが」
「いやだから無一文だってぇ!」
職場のめどは一応立ったススム。
だが借金、最悪逮捕のめども立ったススムであった
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