呪縛(10)
翌日、ダンルは護衛を連れてジルマストの採掘工場を視察した。
メイセアの岩山のふもとに連なる鉱脈の上に建てられた工場は採掘作業を行っていた。
「特に問題はないようだな。うっ!」
ダンルの腹に激痛が走りすぐに息苦しく呻きながら倒れた。
「急いで工場へ」「軍を呼べ」
薄れいくダンルの意識に護衛の兵の怒号と銃声が聞こえた。
「えっ、ダンルが! 容体は? まだ工場ですって!」
緊急通信を受けたレナンが思わず大声を上げた。
レナンは軽く深呼吸して気を落ち着かせた。
「ミッドレ司令官の指示に従いなさい。ロゼムには私から伝えます」
通信を切ってレナンは頭を押さえて軽く深呼吸した。
「いつも良い事は続かないか」
低い声で呟き髪を整えて部屋を出た。
太い光線砲を装備した戦車が工場の周りを囲んで入口の壁を撃った。
工場の警備員が壁に隠れながらマシンガン型の光線銃で応戦したが戦車には効果がなかった。
場内の医務室でダンルは息を荒くしながら時折呻いていた。
「どこの連中だ」
「戦車に印が見えた。ガネロッサだ!」
室内で護衛の兵達が話していた。
《ガネロッサ》はかつて栄えた国で先の大戦で王国の《レリンデア》に滅ぼされた。
現在のメイセアはレリンデアの王族であるレナンの下、各地の都市の自治権を認めて治めていた。
旧ガネロッサの国民の子孫は各地の都市で暮らしていたが以前より一部の反体制派が武装組織を設立し各地の都市を攻撃していた。
「防衛衛星配備。カルエ隊、レストル隊、現地に到着」
オペレーターの声が司令室に響いた。
「作戦開始」
ミッドレが押し殺した声で言った。
監視衛星と偵察機の映像が司令室のモニターに映し出された。
「ナスラ、どう思う」
ミッドレがナスラ副司令官に訊いた。
「工場を占拠するつもりでしょう。ジルマストを奪って兵器を作る為かも知れません」
「私も同じだ。しかし戦力が足りないし動きが遅い。すぐに我々が反撃するのはわかっている筈だ」
「他にも戦力があるという事ですか」
「そうだな」
ミッドレが答えた途端、
「敵セルセ部隊、現地に接近」
オペレーターが叫んだ。
偵察機のモニターに機体に赤黒い線が入ったセルセ部隊が映った。
「盗んだか自前で複製したか。衛星から攻撃後、セルセ部隊で撃墜」
ナスラの指示で防衛衛星から発射された光弾で数機を撃墜したが、戦車からの光弾で味方のセルセが撃墜された。
「この戦力だとあれが出て来るな」
「えっ、まさか!」
ミッドレの呟きにナスラはハッとなった。
「ゴレットを出せ」
ミッドレが押し殺した口調で言った。
「レンカル隊発進」
慌てるナスラの声にオペレーターは落ち着いた口調で指示した。
「敵ゴレット部隊接近」
オペレーターの緊迫した声が響いた。
その頃、レシスのカイキスで眠っているトオヤが目を覚ました。それと同時に町の入口で座っているペルトーレが起動した。
ペルトーレはカイキスの町に入った。
住民達が騒ぐ中でトオヤがいる施設の前で止まった。
「トオヤが呼んだのか」
ゾロハは走って施設に入った。トオヤが裸で立っていた。
「トオヤ!」
ゾロハが呼ぶとトオヤは黙って微笑んだ。
「着ていきなさい」
ゾロハはそばに畳んであった服を渡した。
「ありがとう」
虚ろな目でゾロハを見たトオヤは抑揚のない口調で言うと服を着て施設を出た。
ペルトーレが手を差し出してトオヤが乗ると腹のハッチが開いた。
トオヤが乗り込んだ。コックピットの計器がピーンと鳴った。
「行こう」
ペルトーレは上昇して飛び立った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます