森の星(2)

 レシスの基地でジェイスは自分が乗るセルセを整備士とチェックしていた。

「早く飛べるのはいいがバランスを取るのが難しいな」

「ジェイスは地球でも乗っていたのか」

「たまにな」

 整備士から訊かれてジェイスは思い出したような表情をした。

「こんなに軽くなかった」

「これより重いと遅くなるぞ」

「本当に遅かった。地球の資源で作るとその程度だったのさ。この金属か樹脂かわからない素材は軽くて頑丈だな。ゾレスレーテの速さもメイセアの資源のおかげだな」

 ジェイスが機体を叩きながら話しているとシャルンが、

「ちょっとよろしいですか」

 と声を掛けた。

 シャルンはジェイスと部屋の角で立って話した。

「ザッズねえ……知らないな。記憶を失くしているなら出身地もわからないな」

 シャルンが見せた端末にはザッズの情報が表示されていた。

「そうですか。アンカムの情報はブラーゴと共有する決まりになっているので。わかりました。ダンル王子に伝えておきます」

 シャルンが端末をしまおうとした時、

「俺とトオヤのもあるのか」

 ジェイスが訊いた。

「ええ。見ますか?」

 シャルンが端末を操作して手渡した。

「ふ~ん。これが俺の情報か。そしてこれがトオヤの……えっ?」

 ジェイスがトオヤの情報を見て手を止めた。

「どうしました?」

「いや。あいつ、世界連盟の政治家の子供だったのか」

 ジェイスは驚いた。

「トオヤから聞きました。地球の中央政府みたいな機関ですね」

 世界連盟は地球の先進国の政治家や各分野の専門家で構成された国際機関で地球の環境問題や治安問題に取り組んでいた。

「トオヤから聞いていませんでしたか?」

 ジェイスから端末を受け取ってシャルンは訊いた。

「今のあいつに家族の話は酷だからな。それに親子と言っても本当の親子ではない。人工授精で作った子供を育てるのに相応しい夫婦が引き取る。あいつの場合は育ての親が政治家だって事」

「変な星ですね」

「ああ、全くだ。まるで家畜の集まりだな」

 ジェイスは呆れた口調で言った。

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