黒い雲の星(7)
ガレミザの宙域に浮かぶ補給基地でザッズは仰向けになったボルザットの横で整備士と話をしていた。
「同期が切れる問題は何とかならないのか」
「調査はしていますがわからないんですよ」
「あれから部品を組み込めないか」
ザッズは半壊したゴレットの残骸を見て言った。
「部品は使えますがゴレットの知能部との接続の仕方が違うので無理ですよ」
「そうかな」
「ちょっとやめて下さい」
整備士が制止する声を聞かずにザッズはゴレットのコックピットに乗り込んだ。体が焼けた臭いが残っていた。
シートに座って機器を操作した。ブォーンと音がした。首とこめかみに針が刺さった。
「ちっ」ザッズは舌打ちした。
『機体適合。ジュラストレイアー正常。モーデラレスバンプ正常……』
意味のわからない言葉を話しながらゴレットの振動音が大きくなった。
『破損箇所多数により稼働不可。安全の為に同期機能を停止』
ゴレットが動きを止めた。ザッズの体から針が抜けた。
「いててて」
ザッズがコックピットから出た。周りに兵達が集まっていた。
「大丈夫ですか」
「ああ、だがゴレットの方がマシだな。流用できる物は組み込んだ方がいい」
ザッズは頭を押さえて答えた。
「誰かゴレットを無傷でかっぱらって来い」
ザッズはそう言うと格納庫を出た。
「大丈夫かい」
様子を見ていたシャイザが心配そうに訊いた。
「見ていたのか。すまない。勝手な事をやって」
「全くだ。気をつけな。死なれたら困るんでね。王子から文句言われるのはごめんだから」
シャイザは冗談を込めて言った。
「地球に帰りたいかい?」
思いついた様にシャイザが訊いた。
「メイセアにいる地球人が言うには宇宙船で随分と長く漂流していたらしい。俺が乗った宇宙船も同型だ。同じ事故が起きたのだろう。帰っても知らない奴らばかり。帰る意味はないんだ」
ザッズの表情が曇った。
「同族に会いたいか?」
シャイザが訊くと、
「会いたくないね。特にトオヤというヴァンジュに乗っているガキにはな。何となくだがそう思うんだ」
ザッズは窓の外を見ながら言った。
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