黒い雲の星(1)

 ブラーゴ──空を覆う黒い雲に覆われた星。厚い雲によって恒星グロンの光は地上へはうっすらとしか届かない。薄暗く荒涼とした大地で少数民族が各地で暮らしていた。

 メイセアとの交易はあったがそういった気候の影響もありメイセアの民にとっては何もない星でわざわざ訪れる者は少なかった。

 メイセアの大戦中、ある王国がブラーゴへの移住を各国に提唱した。

 その声に賛同した人々が戦火を逃れて先住民が住んでいない地域に移住し、移住を提唱した王国の王族が治める都市国家を築いた。

 王都レーデには王族が住む王宮や政府機関がある。

 国という概念は薄くメイセアからの移民が住む地域という程度だ。

 薄暗い星で開拓しながら暮らしていた移民達だったが、戦後の復興に明け暮れたメイセアの住民にとってブラーゴへ移住した者は勝手に逃げてぬくぬくと暮らしていると認識されブラーゴから帰って来た者は冷遇されて結局ブラーゴに戻って住むはめになった。

 王都レーデの発展と共に周辺の先住民の暮らしは豊かになり、政府は積極的に先住民を政府や軍の要職に就けて先住民と有効な関係を築いた。

「ヴァンジュが動いたか。しかしアンカムが動かすとは」

 王宮の部屋で薄型の端末を見ながらブラーゴの王ブレッツォは呟いた。

「レナン女王はどんな気持ちでしょう」

 王妃ゼイアも端末を見て呟いた。

 侍女が瓶に入った酒を持って来た。

「出来るなら少ない被害で済ませたいが戦力が拮抗すると思った通りにいかないだろう」

 ブレッツォは瓶を口にしながら端末に映るヴァンジュを見た。

「資源なら話し合いで解決するのに武力で攻めるなんて何度話を聞いても納得できません」

「鮮度の高い《ジルマスト》は採掘したらすぐに加工しなければならない。その為には加工する施設が必要になる。彼らに頼んだら黙って施設の建設を認めると思うか? 侵略だ何だと騒いで頓挫するのはわかっている。だから攻めるのだ。別に皆殺しが目的ではない」

 ブレッツォはゼイアに諭すように答えた。

「仕方ないとは言えませんが早く解決して欲しいです」

 ゼイアは窓の外の薄暗い景色を見てため息をついた。

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