3灯目
無人駅があるほどに、田舎の電車は終電が早いってだけでなく本数も少ない。この時間の次の電車を見逃すと次は終電まで待たなければならない為に、夕食が夜更けとなってしまうのも嫌だった。
だから次の電車には必ず乗って僕の実家へと向かわなければならない。親に車を借りて佐伯さんを実家まで送り届ける必要があったからね。
それからのその道中は、ここまでの道のりと違って和気あいあいと会話が弾み、お互いの好きなオカルトや現象、ホラー映画や妖怪の話で盛り上がった。
そして実家まで行き車を拾い、有名チェーン店のドライブスルーで夕食を買っては空腹を補い色々とまた話していくと、このまま帰るのも勿体ないということになって別の「青い外灯」が在りそうな場所を探しながら向かうことにした。
佐伯さんも別に急いで帰る用事はないということだったので、先ずはその線路沿いを平行している主要道路を進んでいった。
地方はやっぱり開発予算が都心と比べて無いのだろう。殆どが黄色く日焼けした外灯がくすんだ光で道を照らしている一方でした。やっぱり母校の駅は私立の資産を使って設置したんだろうなと実感しながら進んでいくと
「ねぇ、あったあった!あれ見て」
と佐伯さんがまた駅横の踏切で青い明かりを見つけました。
そこは母校駅とは違い、踏切の場所だけピンポイントに青いスポットライトが当たっていた。さっきの青が乱列していた全体的な世界観とは違い、そして周辺が視認できないぐらいに真っ暗だったのもあるが、ボロボロで黄色と黒のしましま遮断桿が手前と奥と照らされ、他には何もない空間の足元に線路がある。これはこれで踏切の一画だけが一つのスポットライトに照らされた舞台かのようになり、雰囲気があって不気味でした。
佐伯さんは写真を撮りに一人で降りて踏切へと向かった。何枚か取った後に戻ってきて
「ここの道、入って行かない?道路沿いとかじゃなく山道とか川沿いとかの自然地帯にあったら、ヤバくない?」
僕は半ば、もうオカルト現象は諦めていた。ここもだけどさっきの場所も事故防止のための設置ということが事前に調べていた僕には分ったから。でもどちらかというと佐伯さんと仲良くしたかったのがあって、二つ返事で踏切の線路を四つのタイヤでしっかりと踏みしめて、心は噛み締めながら真っ暗な脇道へと進んでみた。
ヘッドライトをハイビームにして、少し進むと白いガードレールが右手から進行方向へと合流してきた。家庭用上水の排水用にもなっていそうな小さな小川が現れて、それを沿う様に道が続いていた。すると
「あ、またあった。けっこう探してみると在るんだね」
車を停めて今度は僕も降りて見に行った。先ほどの踏切同様、暗闇の中に突然の青。空き地や民家が所々と見られ微かな室内灯の零れ明かりがあるだけで、月と星空が目立ち小川のせせらぎの音がなんだかもの悲しい雰囲気を感じた。
僕らは外灯の近くまで到着すると、二人ともほぼ同時に青照明の下、小川を横切る車が一台分だけが通れそうな橋の足元に『花束』と『オモチャ』が供えてあるのを見つけた。
佐伯さんは撮影を止めて、無言で手を合わせて目を瞑りだす。僕はそれを見てハッとしたように後に続き手を合わせ合掌した。
僕は車のダッシュボードにあった飴玉を取りにいって、気持ち程度だがそれを供えた。他に何もないことに申し訳なさを感じながら、僕らはこの橋の青外灯については一切触れず語らず、素直に帰っていきました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます