第4話:目撃者。

「あのさ、元子」

「おまえに何かあったんだよな?・・・何があったか聞かせてくれないか?」


「はい・・・」

「少し前まで私「西園寺さいおんじ」ってお屋敷で旦那様に大切にして

もらってメイドをしてたんです」


「でね、西園寺家の奥様はもうとっくに他界しちゃってて家族は旦那様と

長男と次女と三男、三人のお子さんがいて、あとは私とふたりの家政婦に

運転手のアンドロイドがひとり・・・」


「ある日、旦那様の体調が急に悪くなって精密検査を受けたらなにか難しい

名前の難病にかかちゃってて、その病気の患者数が少ないために完全な治療法

が見つからないまま自室で寝込んじゃったんです」

「旦那様の看病は私とあと二人の家政婦がお世話することになって」


「それで旦那様は自分の病気と寿命を心配して全事業と全財産は三男に譲る

って兄妹の前で宣言しちゃったんですね」


「旦那様は三男さんが可愛くてご寵愛なさっていましたから」

「私から見ても三男さんはよくお出来になられて優秀なお方だったの」


「その点、長男さんと次女さんは少し性格的に問題があったかな」

「で、そのうち兄妹は旦那様の財産のことで揉めるようになっちゃって」


「人って欲深い生き物だよな、とくに金持ちはな」

「あ、すまん吉光んちのことを言ってるわけじゃないからな」


「気にしてないよ・・・でも金はないよりはいいからな、公介」


「でね、その日私は旦那様のお世話をしたあと自分の部屋に下がろうとして

長男さん・・・長男さんの名前は「洋太郎」」さんって言うんですけど

その洋太郎さんと廊下ですれ違って・・・洋太郎さんが旦那様の部屋に

入って行くところを見ちゃったんです・・・」


しばらく様子を伺ってたら旦那様の怒鳴る声が聞こえてきて、ふたりは

なにか揉めてるみたいでした」

「あまりに激しく揉めてるもんだから私、旦那様の部屋に様子を見に入ったの」


「そしたら洋太郎さんが旦那様の首に何か巻きつけて首を絞めてて・・・」

「洋太郎さんは私を見て驚いて旦那様から離れたから、だから私すぐに旦那様の

ところに駆け寄って様子を伺ったら旦那様はすでに息をしてなくて・・・」


「私は洋太郎さんのほうに振り向こうとしたんですけど・・・そこまでしか

覚えてなくて・・・」

「・・・で気がついたら公介さんと吉光さんの前にいたんです」


「なにそれ?・・・それマズいじゃん」

「その西園寺っておっさん長男に殺されたかもしれないってことだろ?」

「長男はその現場をモロに元子に見られたわけだ」

「元子はそれが原因で長男に何か硬いもので後頭部を殴られたんだ」

「証拠を隠滅するためにさ・・・」


「で、元子が壊れたと思った長男がゴミ箱の前に元子を不法投棄したんだ」


ここまでは吉光の推理だった。


「全部、長男のしわさか・・・怪しいな洋太郎ってやつ」


公介が言った。


「そんな話、聞いちゃったら見て見ぬ振りできねえよな」

「元子の敵討ちもしなきゃな、吉光」


「俺たちがいきなり西園寺家に乗り込んだって門前払いがオチだよ」

「どころか不法侵入で訴えられるよ、公介」


「だな・・・じゃ〜ま、とりあえず警察に行くか・・・馬頭ばとう刑部に

会うのも久しぶりだよな」


「つうかそれにしても・・・元子・・・おまえおっぱいデカいな・・・」


「公介さん、いきなりそれですか?・・・セクハラ発言ですよ」


つづく。






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る