運だけで初詣

 大吉は近所のお寺に初詣はつもうでに来ていた。


「福良先輩! あけましておめでとうございます!」

「白井さん! おめでとう! ここでバイトしてるんだ!」


 学園一の美女である1年の白井ゆきがお寺の社務所でバイトをしていた。


「ここのお寺のおみくじって『凶』が出やすいって有名なんだよね!」

「そうなんですよ! 今年の運だめしに先輩やってみませんか?」

 ゆきのススメもあり、大吉はおみくじを引くことにした。


「おい坊主、うちのおみくじは『凶』が多いだって! そんなデタラメいいやがって! もしお前が『凶』を引いたら、厄除けのご祈祷でも受けていけよ!」

 話しかけてきたのはお寺の住職だった。

 住職は口が悪いことで有名で、おみくじを引かせて『凶』が出たら1万円のご祈祷を促してくるのが定番であった。


「おみくじで『凶』を引いたらご祈祷! ご祈祷は1万円くらいかかるしな……」

 大吉は財布を見て渋っていたが、新年の運だめしということでおみくじを引いてみることにした。


 大吉が箱に手を入れおみくじを引くと見事に『大吉』。


「やった~! 『大吉』だ!」

 大吉が『大吉』を引いて喜んでいると、住職は信じられないという顔で見ていた。


(バ、バカな……。あの箱の中の9割は『凶』なんだぞ……)


「おい小僧! こういうのは続けて『大吉』を引けてこそ本当の強運なんだぞ! あと5回くらいやってみろ!」

 住職はご祈祷を受けさせるために大吉に何度かおみくじを引くように促した。


「よしまた『大吉』、そのまた次も『大吉』!」

 大吉は何度もおみくじを引いたが何度やっても『大吉』だけを引き当てた。


「バ、バカな! インチキだ! お前はインチキだ!」

 住職は思い通りにならず、遂には逆ギレを起こした。


 その時……


「おい、大吉! 遅れてすまんかった! もう参拝は終わったのか!」

 クラスメイトの不動明王ふどうあきおが現れた……。


「え、あれはうちのご本尊様……」

 住職は不動を見るなり、護摩炊き祈祷の本尊と勘違いし、気絶してしまった。


 しばらくして、お寺の奥の寝室で住職は目を覚ました。


「よかった目が覚めて!」

 大吉が住職に話しかけると、住職は泣きながら謝った。


「わしが悪かった……。インチキおみくじはわしのほうだ。ご祈祷申し込ませたくて『凶』を入れまくっていたのだ。それで怒ったご本尊様が現れてわしを戒めたのだ……」


 大吉には住職の言っていることの意味はわからなかったが、とりあえず目が覚めてよかったと言って、家に帰って行った。


 以降、このお寺のおみくじはバランスよく『大吉』も『凶』も出るようになり、住職も心を入れ替え街の人から好かれるように努力するようになった。

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ただ運が良いだけ2 八幡太郎 @kamakurankou1192

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