第16話 2007年 10月 パチモン店長帰る
ママから聞いた「演劇時代」の宮内と、草野球の時のパチ屋店長宮内と、いろいろ照らし合わせてみて、なるほど三つ子の魂百までってことで、そうそう変化があったわけでもなさそうだ、と考え、
「まあ、自分は『被害者の会会員』にならずに済んでラッキーですわ」
と、しみじみママに伝えながら、なんとなく話の切り上げ時でもあったし、元の自分のボックス席に戻り、入れ替わり立ち替わりのカラオケモードに参加し、SMAP、DA PUMP、クールファイブ、布袋寅泰、などのナンバーを適当に歌って、勘定は完全に大崎に任せて、終電3本前あたりの埼京線に間に合わせて日付跨いでちょっと過ぎたくらいの時間に社宅に戻った。
店長連中との内輪の飲みと比べ、「社外」の大崎との共通の話題もそうそうあるわけでもなし、社長大崎あくまでマイペースで太っ腹なので、一人で置いて帰ったところで後々恨まれるようなこともなし、と判断した。なんか楽しそうだったし。
若き日の草野球の思い出話は、それはそれで面白おかしく時を過ごした感覚あったような気もするが、またこうして「職住接近」状態の社宅に帰ると、今現在のダラ幹としての気だるい物憂い日々の始まりかあ、ってことでついさっきまでカラオケ歌ってた時とのテンションの差がなかなかにキツい。
妻と娘は敷布団3名分、川の字形式の6畳間の寝室で既に就寝の気配。
ジャージ&トレーナーに着替え、買い置きのウイスキー「角」の濃い目の水割りを作って、ダイニングの続きに位置するピアノ部屋6畳間の座卓座椅子に位置取り、ノートパソコンを立ち上げる。
既に「4位」でシーズン終えた東北楽天関連のサイトやらブログやらをチェックし、吉田豊彦引退のあの日以降は特に目ぼしい新情報もないので、自分のFC2ブログの投稿画面を開く。
ブログはカテゴリー分類やたらと増やして、ほとんど毎日なにかしら書いているわけだが、飲んできた帰りにまで無理して書くというほどでもなく、というか「知床」の帰りで泥酔状態になってないのがむしろ珍しく、投稿画面ひらいてはみたものの、飲んで帰ったときにまでわざわざ書くことはないよなあ、とひとりごちながら、畳のうえに仰向けに寝転がった。
「私事」をつらつらブログに記すことはあまりないので、たとえば先刻、よく行くスナック「知床」で、偶然にも十数年ぶりに昔、西川口でバイトしてた臼井美和と再会した、というそこそこドラマチックといえばドラマチックな出来事があったにせよ、それを帰宅後すぐに記憶の生々しいうちに書くかといえば書かない。
というかそもそも、「じゃまた」と軽くあいさつした程度で「知床」サクッと出てきたので、臼井美和の現況とかほぼ何も聞いてないな、と今思い出すくらいだし。
カテゴリー分類やたら増やして、「私事」ではない、あれやこれやをマメマメしく書く、というのは、先述したと思うが「文化的生活面」で「まだ本気だしてないだけ」な感じを出そう、まあ、なんかこう「教養あるんだぞ」感を押し出していこう、みたいな、ド厚かましい面はあるっちゃあある。
「物知り」になるのに役立つんじゃないか、みたいなあっちこっちのサイトのリンクとか貼りまくってるし。
で、ふと、さきほど「知床」で、クールファイブの曲を久しぶりに歌ったことを思い出して、ああ、それなら、と、起き上がり、投稿画面に再び向き合って、カテゴリー分類の「音楽」をクリックして、「おれのクールファイブ論」をおおよそ40分くらいかけて原稿用紙にして5枚分くらいサクッと書いた。
内容としては、『そして神戸』の「そしてひとつが生まれ」からのくだりをどううまく歌いきるかについて、とか、『東京砂漠』はなんのCMで流れてたんだだっけか?って思ってすぐググって、ああ建設ねマンションね、とか、それをそのまま書いたりとか、南武線にも中之島あるよね、とか、そういうような。
でブログ書き終わったあとに、妻子は確実に寝ているのでエロサイトだエロサイトだ、ってことになって、今日はPCつけっぱなしのジャージさげっぱなしで寝ないように気を付けないとな、とか思いながら、あれこれ見始めようとしたら、離れた布団部屋の方から物音の気配がするので、警戒してやめてみる。ああ、妻がトイレに起きたようだ。なので本格的にエロサイトを見ようとする挙動全部をやめた。
んー、それで、何をするのか、というと、ああ、そうかメールチェックでもするか、とアウトルックエクスプレスを立ち上げる。
特筆すべきものは見当たらない。社内での知識競争に勝とうと思って「業界内」の情報を流してくるメーリングリスト系のやつもそこそこきてるんだが、まあ何せパチンコ攻略雑誌を読むのも億劫だってレベルなので、そんなもの開ける気にはならない。
もうめんどくさいから海とジャグラー以外設置禁止にしてくれないかなあ、と本気で思ってますからね。そりゃもうね。
いやもう何がめんどくさいってジャグラー以外のスロットだと、「当たり」の種類というか「当たり」の分類というか、あるいはまた「当たり」の定義とそれにまつわるフローチャートだとか、のみならず、「大当たり」図柄の「7」とか「BAR」
とかじゃない、ベルとかチェリーとかのいわゆる「小役」の出現頻度やリール制御の挙動の違いがうんたらかんたらとか、まあそういうのはジャグラーにもあるんだけど、なんにせよいちいち細かい。「松解除」とかいう特定機種にしかない「専門用語」もあったりしてほんとうにこれはキリがないわけだ。
あと「モード」ね。パチにもスロにも「モード」あるし「モード移行」とかなんとか言っちゃったりなんかして、東京モード学園ともジャズでいうモードとも違うモードですからねこれ。そうそうさっき「知床」でカラオケモードに、って書いたけど、そのモードだな。パチとかスロのモードっていうのはね。ってこれでわかりやすい説明になってるんかな。
ってことでカタカナだろうが漢字だろうが、漢字カナ混じりだろうが、「新語」出てくると殺意すら芽生える、っていうような今日この頃。
で、「音楽」のことで思い出すんだが、店休があって草野球やってたころと今とでは店で流す音楽事情もだいぶ変わった。
ここ1,2年で急激に「有線の邦楽ヒットチャートに合わせっぱなし」ではなくなって、版権モノ機種関連のサントラ流しっぱなし、みたいなことになってきた。
特に「エヴァ」っすよねえ。まあ、あのサントラそのものは自分もそんなに嫌いじゃないというか、むしろ「さすが鷺巣先生!」くらいに思うんだけど、おかげですっかり「最新の流行曲」に疎くなってしまった。いやほんとこれは如実にある。
「知床」でカラオケやってて、嘉数ちゃんその歳のわりにそんな曲知ってるんだ!?みたいなことを言われる機会がこれからどんどん減っていく予感しかない。
ま、だからどうだってこともないが。
で、「音楽」のことを考えてもいたし、ほろ酔い加減でもあったし、
ってところから、ふと詞と曲が思い浮かびそうになってきたので、電子ピアノの前に移動しヘッドフォン着用して電源入れる。
並大抵の文弱ではないので芝居のみならず音楽もそこそこやれる者なのであった。
オリジナル曲30ほどストックあるし。弾き語りソロライブもやるし。
まあ、首都圏内方々で出演してる店のほとんどが正味の演奏時間35分ってのが基本仕様なので、それに合わせて、折々「芝居仕立て」で曲を組み合わせてステージをこなす。こなしてきたんだが、最近は「芝居仕立て」考えるのもめんどくさくなってきて、演目も順番も合間のしゃべりも全て当日その場で決めるかたちにしたら、なんだかそっちの方が客受けよくて、じゃ、いままでのはなんだったんだって話で、ちょっと釈然としないところはあるが、受けないよりは受けたほうがそりゃいいに決まってるので、これからはとにかく「アドリブ重視」路線でいこう、と。
さっきの「野球準備会合」の話で出てた「アドリブ重視」派、葛西&小岩井路線でいこう、と、薄く誓い、その夜は曲が出来ることもなくスルっと寝た。
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