第9話 爆撃

 しばらく歩くと、空に何かが飛んでいる。まるで空を飛ぶ飛行機のように時折太陽の光をキラリと反射させている。あたしは指差す。


「あそこ、なんか飛んでるよ?」


 みんなで見上げる。確かに何かが飛んでいる。しかも段々とこちらに近づいてきている。シルエットが見えてくると、どうやらトンボのような形をしている。かなり大型である。

 近づいてきたら確かにトンボであったが、何かを投下し始めた。

 あたしたちよりも手前でその一つが爆発を起こした。


「いっ? 爆弾や!」


 次々とトンボ型ロボットが落としている爆弾の軌道から、蜘蛛の子散らすように走り回って逃げる。

 あたしは片手剣を抜くが動転していて当たり前のことに少ししてから気づく。


「あたしの剣じゃ届かないよぉ~」

「そりゃまあ、そうだろ……」


 恭子さんに呆れられた。


「せめて私か綾乃さんのハンドガンがあれば……」

「ひとまず逃げないとですわね。こちらが防戦一方でいずれやられてしまいます」

「向かってる方向はあっちだぞ」


 恭子ちゃんが逃げる方向を指示してくれた。そりゃあ闇雲に逃げ回ってスタート地点に辿り着いたら、今までの苦労は? という話になる。

 あたしたちは全速力でその方向に逃げる。幸いなことにトンボ型ロボットは、あたしたちよりも速度が遅いらしい。いや、メカ少女となったあたしたちが速いのだが。生身の身体とは速さが全然違うからね。

 そして敵を振り切り、一息ついた。


「「「はぁ~」」」


 安心したところに、また別の敵が現われた。いも虫のロボットのようである。動きが遅い……。

 あたしたちはトンボ型に追われた恨みをいも虫のロボットに八つ当たりをすることにした。

 襲いかかると敵もやられまいと一本の細い糸を吐き出してきた。その糸があたしの腕のアーマーのないところを掠る。すると少し血のようなものがでた。血なのかオイルなのかはさておき、みんなに伝える。


「あの糸避けて! 切れ味いいかも!」


 みんながそれを聞いてぎょっとしたのか、それぞれ身体が少し硬直した。一人を除いて。


「うりゃ~!」


 佳那子ちゃんである。いも虫の横に回り込み殴りつけた。スキルを使っていない通常攻撃のようだが、アーマーがZタイプからYタイプに性能アップしたせいか、ナックルで与えたダメージが大きいようだ。

 いも虫が吹き飛ばされる。その隙にあたしたちも囲みこみ、フルボッコにして倒した。


「……今度こそ平気ですかね?」


 梓ちゃんが不安気に辺りを見渡す。全員で辺りを確認するも敵影はなかったので、ほっとした。


「いも虫の糸があたしの腕を掠ったんだけど……」


 あたしはみんなに傷口を見せる。


「メカ少女のはずなのに、赤い液体が出てますわね? 血ですかね?」

「いえ、血というよりも冷却液ですね」


 真夕ちゃんが疑問を解決してくれた。冷却液が赤い血のように見えるとは、大ダメージを負ったときはなかなかぐろいことになりそうだ。


「設計図で自動リペアというのがありますが、それがあれば直りは遅いですが、自動的に回復します。今はまだないのでリペアキットで直すことになりますが、試しに使ってみます?」

「うん、使う!」


 あたしはアイテムボックスからリペアキットを取り出した。注射器の形をしているのに気づいて後悔した。


「注射? これって痛いの?」

「痛みというか違和感はありますね。私たちはメカ少女なので、なにかしらの信号となるものがないと破損に気付きませんから。生身の人間ですと痛みという信号がありますけどね」


 あたしは半信半疑になりつつ、リペアキットを腕に注射してみる。すると小さな白い泡に覆われたと思ったら、その泡もすぐに消えて、傷口も直っていた。


「お~! こんな感じで直るんだ? 痛くなかったしこれならいいや」

「花鈴は注射が嫌いやからな」

「これなら平気だし!」


 そこへ梓ちゃんが突然叫んだ。


「あ! 索敵レーダー200の設計図が揃いました!」


 それを聞いてあたしたちは梓ちゃんの方を振り向く。


「ちょっと装備してみますね」


 そういうと梓ちゃんはアイテムボックスから通信機を取り出した。


「……これ、どこに装備するんでしょうか?」


 梓ちゃんが手にしているのは、大きなナイフ位のサイズであるアンテナらしきもの。


「頭部だと思いますわよ? 頭部のアーマーにもマウントがありますわよ」


 綾乃ちゃんが右手人差し指で梓ちゃんの頭を指差し、左手人差し指で自分の頭部アーマーをトントンと叩く。

 そう言われて梓ちゃんが自分の頭部アーマーの左右を左手で確認する。あたしも自分の頭部アーマーを両手で確認すると確かに凹のマウントがある。


「誰かはめてくれませんか? 見えなくて」


 そう言われてあたしが動こうとしたが、それよりも早く真夕ちゃんが梓ちゃんから索敵レーダーのアンテナを受け取り、梓ちゃんの左のマウントにはめた。


「よし、できた。梓さん、どうです?」

「ちょっと確認しますね」

「……えっと、頭の中で何か円のようなものがあって、線がクルクル回っています」

「レーダースキャンパターンですね」


 真夕ちゃんが難しい言葉を口にした。あたしはきょとんとしてしまい、みんなが分かっているのかと他の三人に視線を向けるも、同じようにぽかんとしている。


「レーダースキャンパターンってなんだ?」


 恭子ちゃんが聞いてきた。大人でも知らない言葉らしい。


「よく映画とかでレーダーとか出てくるじゃないですか。あの画面ですよ。円のところをクルクルと棒が回って何かを発見したりするやつです」

「それで? 敵は索敵範囲にいそうやのか?」

「い、いえ、範囲内に敵はいないようです」

「索敵範囲ってどのくらいですの?」

「えっと……円のところに小さな文字で『200m』って書いてありますね」

「200mか。索敵レーダー200の名前の200というのが距離みたいだな? ということは、上位を作ることが出来ればもっと遠くでも気づくことができるな?」


 確かに恭子ちゃんの言うとおりである。もっと索敵範囲が広ければ、危険を回避できるし逆に敵を倒してアイテムをドロップしたい場合は、積極的に敵と戦うことができる。

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2024年12月13日 07:00

メカニカル・ガールズ・ファンタジー ~アーマード・コンフリクト~ 藤谷葵 @AoiHujitani

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