第7話 デュアルコア
翌朝、情報を共有する。見張りを綾乃さんに交代した後、しばらくしたら真夕ちゃんと梓ちゃんも起きて見張りに加わっていたらしい。なんでも寝心地が悪いとか。あたしと佳那子ちゃんは気にせず寝ていた。おっさん幼女に限っては論外である。恭子ちゃんも親し気に呼びたそうにしていたので、みんな名前呼びを了承した。
「ところでおまえら。なんでアーマーの色が変わってんの?」
「ああ、カラーリングの変更をしたんですよ」
「ずるい~!」
草原で寝転がり駄々っ子のように手足をバタバタさせる。大人ってこんな感じなの?
真夕ちゃんが恭子ちゃんにカラーリングの変更を教えて、黒になった。
「ふっ、黒こそ大人の女に似合う色だな」
誇らしげにいうが似合っていない。むしろあたしと同じピンク系の方が似合いそうだ。だが自称大人の人の名誉のためにそれもお口チャック。
「では行きましょうか」
真夕ちゃんがそういうが全員が困惑する。
「どっから来てどこへ向かってたんやっけ?」
佳那子ちゃんが代表して質問をした。真夕ちゃんは辺りを見渡す。
「えっと……」
真夕ちゃんも把握できていないようだ。そこに恭子ちゃんが指差しながら告げた。
「あっちから来て、向こうの方に向かっていたんだ」
「「「おお!」」」
歓声の声が上がる。まさかこの『ダメな大人の見本』ともいえるような人が覚えていた。本人はなんで歓声が上がるのか分かっていないので、頭の上に疑問符を浮かべている。
あたしたちは恭子ちゃんに教えて貰った方向へと進んで行った。
しばらく歩くと梓ちゃんが何かに気付いた。
「あ、あれ、なんでしょう?」
みんなが梓ちゃんが指差した方向に目を向ける。なにやら遠くに土煙のようなものが見えてきた。その土埃はだんだんとこちらに向かってきて、朝日に反射してかキラリとたまに光る。
「……あれって敵ではなくて?」
綾乃ちゃんがそういうと全員がぎょっとする。キラリと光るものはかなりの数いるからだ。
やがてシルエットが見えてくる。様々な昆虫の形をした機械の敵がこちらに向かってきている。
「……なんであんなに……」
梓ちゃんが絶望的に言う。見えたシルエットで十体くらい向かってきている。
反面、佳那子ちゃんは嬉しそうだ。両拳をガッと合わせる。
「一人一体はノルマやな。いくで!」
佳那子ちゃんが向かって行った。たまに思うが脳筋である。ちなみにあたしは佳那子ちゃんに天然と言われている。
佳那子ちゃんに続いて、全員が敵に向かう。先頭を走っていた佳那子ちゃんを綾乃ちゃんが追い越して行く。
「お先に失礼しますわ」
その不遜な言葉に佳那子ちゃんがライバル意識を燃やす。だが敵に最初の一撃を与えたのはやはり綾乃ちゃんであった。
綾乃ちゃんが次々に敵に攻撃を仕掛ける。ヒット・アンド・ウェーだ。敵の攻撃が綾乃ちゃんに当たらない。華麗な蝶のように舞う。
二番着は佳那子ちゃん。敵に攻撃するもなぜか昨日よりも攻撃力が上がっている。敵に大ダメージを与えている。
そしてあとからあたしたち四人が到着する。各自散開して敵と交戦する。
戦闘中に脳内に機械音声が聞こえてきた。
『CPUコアが増えました』
CPUコア? CPUコアが増える? なんのことだろう? 分からないが今はそれどころではない。みんな必死に戦い乱戦状態である。
敵を殲滅し終える。
「「「ふぅ~」」」
全員が安堵の息を吐く。意外とあたしたちは強いのかもしれない。敵の方が多いのに勝てちゃったよ。ドロップアイテムも手に入ったが、綾乃ちゃんが真夕ちゃんに質問をした。
「戦闘中に『CPUコアが増えました』って音声が聞こえましたけど、それってなんですの?」
「私も増えました。おかげで『異世界知識』を並行使用できて助かりますけどね」
「どういうことです?」
「私たちの頭をパソコンと思って下さい。CPUのコアが多い方がスペックが高いでしょ? 今まではシングルコアだったのがデュアルコアになったんですよ。なので私はいちいち集中しなくて片方のCPUコアで普通に行動して、もう片方のCPUコアで異世界知識に検索をかけてます」
「なるほど、CPUコアが増えれば私たちの能力も強化されるということですわね?」
「……レベルアップみたいなものでしょうか?」
梓ちゃんの問いに真夕ちゃんが答える。
「まあ、そんな感じで思ってくれればいいと思いますよ」
その話を理解した佳那子ちゃんが次の質問をする。
「なんか、うち。前回よりも攻撃力が強かったんやけど?」
「攻撃力が強くなる? う~ん? 異世界知識には装備品による強さしかないですね?」
おずおずと梓ちゃんが手を上げる。
「……あの……佳那子さんのスキルじゃないでしょうか? 確か努力すればどうとか……」
「ああ、『努力すれば何とかなる』やな。つまり綾乃と張り合おうとしたから攻撃力が上がったということやな」
みんなが「なるほど」と納得した。
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