触45・触手さん泳げない
は~あっちぃぃ~……
砂漠を移動して数日、物資の補給等も兼ねて神殿へ何度か戻りつつ、先を進んで行く私達。
如何せんこの暑くてカラッカラの状況には慣れない。
せめて海辺の砂浜ならな~、水っ気の一つもありゃしない。
まあ日本の夏みたいな、湿気で不快な暑さって訳ではないんでまだいいんだけど、
一応幌のお陰で直射日光は防げてるし。
水筒の中身をちゅうちゅう飲み暑さを紛らわす。
魔法でどうにかならんかなとも思ったんだが、絶えず出してると魔力が持ちやしないんで却下。
一瞬で出すのと維持し続けるのとでは消費量が雲泥の差なのだ。
幸い、あれから魔物の襲撃も無く平和に進んでるだけマシか。
暑いけど。
さて、水筒の残りも数本になり、また戻らないと駄目かなと思っていた矢先、空気が変わった。
うっすらだが塩の香りが風と共に漂ってくる。
これはもしや……?
小一時間程進むと、遠くに青い物が見えてきた。
う、うみぇだー!!
水面が日に照らされキラキラと輝いている。
そして強くなってくる潮風、これはまさに海だ。
ドンドン近づいてくる海に心がときめく、あ~思いっきり游ぎたい!!
……ん?何か潮風に混じって変な臭いすんだけど……気のせいか?
まあいい、海だ、今は海だ!!
逸る気持ちを抑え、早く到着しないかと待ちわびる。
……そして絶望した。
汚ねぇぇぇぇぇ!!!
何これ、あっちこっちゴミだらけ。
到着した海岸は無数のゴミ!ゴミ!!ゴミ!!!
大小様々なゴミで溢れている。しかも臭い!!
海も何か濁ってて泳ぐ気にもなれない、マジ何なん?
「いやはやこれは……」
「これは酷い」
クオとビノセも困惑している。
ノー!!私の海水浴がー!!!
思わず触手をぶんまわす。
くっそー海を満喫するつもりだったのに……
汚ない海に心底ガッカリしていると……何か聞こえてきた。
……争ってる?
騒ぎ声のようなものが聞こえてくる方へと私達は向かった。
先程の場所から数100Mくらい離れた所で戦闘が行われていた。
砂浜には沢山の人種達、そして海面には……
【……イカ?】
そう、イカが暴れている。
但しクッソデカい。
大型船くらいのイカが人種達相手に大暴れしているのだ。
「あれは……もしやクラーケンか?」
「そのようだね、私も初めて見たよ」
ビノセとクオがイカを見て口にする。
は~クラーケンか、ダイオウイカでもあそこまではデカくならないんじゃ?
クラーケンの触手による凪ぎ払いで数名が盛大に吹き飛ばされる。
だが人種達も矢や魔法で応戦、更には……あれは大砲か?
大きな筒状の物から爆発音と煙が出て、砲弾がクラーケンに直撃している。
どうやらクラーケンは劣勢のようで、押されてるみたいだ。
必死に触手を振り回すも人種達の攻撃は止みそうにない。
「ふむ、これはいかんな、あのクラーケンに助勢しよう」
【え?あれ助けるの?魔物と人種が争ってるだけちゃうの?】
「クラーケンは魔物じゃなくて、我々と同じでね、知性も理性も持ち合わせている」
成程、デカいイカの魔物じゃないわけだ。
となれば助太刀あるのみ、一気に近づいて攻撃開始だ。
メアリーとスケルトン達が先手を切って弓兵と魔法使いに切りかかる。
ビノセとパディカは砲兵を、クオはコンテナに仕込んでたらしい、銃器で援護する。
そして私はクラーケンに飛んでいく飛び道具を風で吹き散らす。
「な、何だこいつらは!!」
「援軍か!?ええい怯むな、迎撃しろ!!」
横から攻撃されてたじろぐ人種達。
海岸が一気に騒がしくなった。
そしてバッタバッタと倒されていき、優勢だった人種達は劣勢に追い込まれる。
更にクラーケンの攻撃で吹っ飛ばされていく。
「く、クソッ!て、撤収だ!!引け、引けー!!!」
隊長らしき男が叫ぶと、連中は逃げて行った。
やれやれ、泳げなかった鬱憤が少し晴れたぞ。
クラーケンは大丈夫かな。
そちらを見ると、クオが何やらクラーケンと話をしている、クラーケンって話せるのか。
暫くすると話終えたのかクオがこっちに歩いてきた。
「どうやら彼は私達を海底へと招待したいらしい、そこで詳しい話もしたいそうだ」
ほ~海底か、助けた亀に連れられて~って感じだ。
でもどうやって?
するとクラーケンが触手を一本高くかざした。
海面からボコボコと泡が立ち昇り、デカくてまん丸の球体が浮上してきた。
「これに入って潜るらしい」
コンテナでもすっぽり多い尽くすくらいのサイズがある。
接岸したそれに全員コンテナ事乗り込むと、それはクラーケンと一緒に海中へと沈んで行った。
さてさて、待っているのは竜宮城だろうか?
鯛や平目の舞い躍りに乙姫様か、期待が膨らむぜ。
しっかし海の中濁ってて何も見えんな~、どんだけ汚れてんのさこの海。
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