触46・触手さん海底へ
ゆっくりと沈んで行く球体。
それにつれて周囲が段々と暗くなっていく、潜水艇に乗るとこんな感じなのだろうか。
黄昏よりも暗くなり始めると、球体が明るく光だした。
蛍光灯くらいの光量があり、お互いの顔がしっかり視認出来る。
外はもう完全に闇の世界で何も見えない、これ一人だったら結構怖いよなあ、孤独感凄そう。
大体200Mも潜ると光は届かなくなるらしいから、かなり下まで来ているはず。
となるとこの海域結構深いんだな。
ほげーっと真っ暗な外を眺めていると、何かが光って見えた。
下の方に見えるそれは段々と明るくなり数も増していく。
「どうやらあれが海底都市らしいな」
クオが呟く。
海底都市
水棲種族が住まう地、クラーケンによると難攻不落の大都市で、人種達も迂闊には手を出せないらしいけど。
近づけば近づくほどその巨大さが分かる。
バカデッカい半透明のドームに覆われたその中には、貝殻みたいな無数の巨大建築が並んでいる。
どれもビル五階建て以上はあるだろうか。
球体はドームの中に入り込むと着地して開いた。
空気があるようで、水没してはいないみたいだ。
【は~凄いなこりゃ……】
所狭しと立ち並ぶ建物に沢山の住人達、都会を思わせる賑やかさだ。
商店街も見受けられる。
「こっちみたいだ、行こう」
一緒に入ってきたクラーケンが手招きしている、喧騒を横目に後を着いていく。
しっかしクラーケンやっぱデケえな、その辺の建物レベルじゃん。
移動しながら周囲を観察すると、ま~色んな店が建ち並んでいる。
衣料品に雑貨類、武器と防具や医療品。飲食店もある。
と、一軒の店が目に止まる。
深淵回転寿司二号店
ふ~ん、回転寿司ねぇ……
…………
………………
は?回転寿司???
え、ちょい待て、あんの!?寿司が!!?
しかも回転寿司!!!?
慌てて私は、先導するクラーケンに問い正すと、こう返ってきた。
水棲種族は普通に魚食うし、寿司もポピュラーなものだと。
昔、別の地域からやって来た行商人が寿司を振る舞って以降広まったんだとか。
回転寿司もその行商人のアイデアらしく、水車を利用したベルトコンベアで稼働させてるみたい。
いや~驚いた、つかこれ絶対日本人関わってんだろ、間違いないわ。
何なんこの世界マジで。
よし、後で寿司食いに行こう。
商店街を抜けると、周囲より明らか大きい建物が見えてきた。
高い壁に囲まれていて、多分城だろうな。
城門らしき前には鎧を着た兵士が二名、三股の槍を持って立っている。
こちらに気がつくとクラーケンに敬礼をする。
見た感じ半魚人ぽい、姿は人種ぽいものの、顔は鯛で手足にはヒレも着いてる。
マーマンというらしく、水棲種族の大半はこのマーマンであると、後でクラーケンに教えて貰った。
城門を抜け場内へ入っていく。
中には大小様々な噴水があり、荘厳な感じがする。
城というよりは神殿みたいな雰囲気がある。
噴水のある広間を過ぎて巨大な蒼い扉の前に着いた、クラーケンでも余裕で通れるくらい大きい。
扉の前に居た兵士が何か操作すると音を立てながら開いた。
中に入ると大きな玉座、そしてその傍らには一人の女性が佇んでいる。
上は美女、下は魚類、人魚またはマーメイドってやつだ。
「よくぞお出で下さいました、私はイーメ、水の大精霊様に仕える者です」
綺麗で良く通る声で彼女は会釈してきた。
「貴女方が来訪される事は予見しておりました、そしてこの地を救って下さるということも」
はて、私達の目的は既に知ってるって事か?
頭に疑問符が浮かぶ私だが、話は続く。
「ある日、水の大精霊様は彼の地にて御子様が復活されたのを感知しました。御子様は人種を排除する者、何れはこの地へもやって来るだろうと」
あ、そういや、何で触手さんって人種排除っつ~か人種にしか恐怖発動しないんだろ?
そういうもんなんだなってしか思ってなかったけど。まあ後で聞いてみるか。
「陸でご覧になったと思いますが、現在ルーデ海周辺は人種による環境汚染が著しく、地上はおろかこの海底都市にまで及んでおり、酷く汚されています」
「水の大精霊様も浄化にあたっていたのですが最早追い付かず、そのせいでお身体を悪くし活動出来なくなっています」
成程、事情は把握した。
さてさてどうしたもんか。
「汚染の源は分かるかい?」
クオがイーメに問いかける。
「陸に上がって北上すると人種達の巨大な生産工場群が建っています。そこから廃棄されいる排水や残骸類が原因です」
てことはそれをどうにかすればいいって訳だ、うし、やってやろうじゃん。
それじゃあ早速その工場へ……
と思った瞬間、城が激しく揺れた。
な、何だ!?
すると扉から兵士が慌てて飛び込んで来た。
「た、大変です!廃棄ゴーレムが大量に投下されています!!」
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