触42・触手さん衝撃の事実を知る

何度かの帰還魔法を繰り返し、私達は神殿に戻って来た。

鉱脈へ行ってから然程日にちも経っていないんだが、木造マンションの骨組みは完成していて、屋根や壁の建築に入っている。

これなら一ヶ月もかからないだろう。


建物の建築にはドワーフやオークも加わる事になり、作成速度は更に上がる事だろう。


そんなこんなで内部事情も進展し次の日。

起きると外からカタカタと何か聞こえてくる。何かと思い窓を開け見ると、神殿の外を岩やら丸太やらが流れて行く。


そこに川なぞ無いんだが流れて行く、何じゃこりゃ?


気になって外に出て見て納得した、ベルトコンベアである。

木製のベルトの上をカタカタと物質が流れて居るのである。


……いや待て、動力どうなってんだ?水力でもあれば出来るとは思うが、川や滝何て無いんだが……


頭に疑問符を浮かべ考えていると、クオがこっちに歩いて来た。


「やぁおはよう御子様、これが気になるかい?」


ベルトコンベア自体は無論知っているが、動力が何なのか非常に気になる。

聞いてみるとするか。


【どうやって動いてんの?】


ほぅ、と一瞬呟いてクオは説明を始めた。


「これは雷の魔石で作った電気でモーターを回してね、それをギアやシャフトで動力を伝えて動かしているのさ」


へぇ……と、思わず頷きそうになるのを耐える。

いや待て、モーター!?急に現代的なの出てきたな!あ、もしかしてあのゴーレムもモーターで動いてたのか!?


「構造はシンプル何だけど問題はモーターの作成でねぇ、磁石はどうにか調達したり雷の魔石で作成したんだが、銅線がねぇ。まあドワーフ達が何とか作ってくれたよ。針金よりも細く長くするのに苦労したそうだけど」


ペラペラと説明していくクオ、それから1分くらい話し。


「……おっと、説明で本題を忘れるところだったよ。御子様に聞きたい事があってね。答えたくないなら無視してくれても構わないよ。君にも事情があるかも知れないし」


真顔でそう言うクオ。

むぅ、何だ?スリーサイズでは無かろうし。


一拍置いてクオは口を開く。


「君、元日本人じゃないかな?」


!!?


動揺が私に走る。

よもやここでその単語を聞くことになるとは。明らかにファンタジーで異世界なこの場所では絶対に出て来ないはずの言葉。

それをオークであるクオの口から飛び出して来たのだ。


さてどうするか、答えはイエス。

ここで隠したところでメリットなんぞ無い、素直に答えて此方も情報を聞き出すのみである。


無言で頷くとクオの顔がほころんだ。


「そうか……いや、答えてくれてありがとう。では改めて自己紹介をしよう。人間だった時の名前は奥賢人、元は君と同じ日本人で今はご覧の通りオークだ」


クオが一礼して自己紹介をする。


「君の日本人だった頃のプライバシーは……まあ、今はいいだろう。気が向いた時にでも話してくれればいい。」


別に隠すつもりも無いんだけど、まあいっか。


「さて、君はこの世界をどう思う?」


ん~どうと言われても……ファンタジーの世界だよな、としか。

イマイチ意図を汲み取れず、思った通りにホワイトボードに書く。


「ふむ、質問の仕方を変えてみよう。不自然に思わないかい?」


不自然?

ん~……特に変なとこは……

少々思い返してはみるものの、これといったものは……


「あまりにも馴染みなもので溢れていないかな?」


……言われてハッとした。

そうだ、私が知っているものが多い。それは種族、魔物、更には食べ物。

勿論知らないものもあるが、それを置いても余りにも多すぎる。


「思い当たるふしがあるようだね。そして、決定的なのが言語だ」


言語。

使われている文字は日本語とは違うものの法則性は一致している上に、文法はただの逆読み、単語も逆読み。

リンゴはゴンリでバナナはナナバなのだ。こんな偶然が起こりうるだろうか。


「ここまでくると意図的なものを感じないかい?地球上でさえ隣国と言語体系がまるで違うことはざらなのに、ここは異世界だ。しかも、想像の産物のはずであるエルフやドワーフ、オークまで居る。こんな偶然あり得る分けがない」


言われて息を飲む。

さも当たり前のように受け入れていたが、確かに出来すぎている。


……これらを踏まえて考えられるのは……


「……その様子だと君も私と同じ考えに至ったようだね、そう……」


「この世界は誰か、日本人によって創られている」

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