触41・触手さん穿つ

手前に居るゴーレムへと高速回転をしながら突進していく。

あっという間に距離を詰めると、ガリガリガリと地面が削れるような音が周囲に響き渡る。


これでも駄目なら相当厳しいが……


だが効果は抜群だった。

衝突して尚も姿勢を崩さないゴーレムであったが、徐々に後ろへと押され、そして確実にドテッ腹を削っていき、そして……


開通!!


ゴーレムに大きな穴を空けて私は貫通していった。


よっしゃー!!


穿たれたゴーレムは盛大に足から崩れ落ち、粉々に砕け散る。


着地して後方を見やると残骸が横たわっている、復活もしなさそうである。

攻撃が通ると分かれば後は容易い、愚鈍なゴーレムを片っ端から粉砕するのみである。


残ったゴーレム達が次々に殴り掛かってくるが、只でさえ遅い上に今の私は風の魔法で機動力が飛躍的に上がっているのだ。

そんな攻撃など当たるはずもなく、ジェット推進のこまめな修正で難なく躱し、ドリルアタックを繰り返していく。


一体、また一体と粉砕していき残りも最後。

さ~てこれでフィニッシュといきますか……っておや?


何かゴーレムの目が点滅してんだけど……すっげー嫌な予感すんぞ?


それはだんだん加速していき……あ、これ絶対ヤベーやつだ。

加速してゴーレムから一気に距離を取る、とその刹那。


目がカッと光るとゴーレムが盛大に爆発四散した。

……あっぶねぇぇぇ!!自爆しやがったコイツ!!


破片があっちこっちに散乱し、自爆地点の地面にはでかいクレーターが出来上がっていた。

巻き込まれていたら相当やばかったかもしれん。


「馬鹿な!ゴーレムが、たかが魔物一匹相手に全滅だと!?」


鎧の男が驚愕する、残念だったな、私は只の魔物ではなかったということだよ。


周囲を見れば、メアリー達も粗方片付けたようで、残り数人になっていた。


「くそっ……おい、ここは放棄して撤退するぞ!!」


結界を維持し続けていたローブの男が残った連中に叫ぶと、走って扉から逃走していった。

それに続き他のも一斉に撤退していく。

やれやれ、終わったかね。


「よし、今のうちに大精霊様を解放しよう」


クオが結界の側に行き、懐から出した何かを操作し始める。

何かスマホみたいな形してんなぁ。


それから直ぐ、結界がパリーンと砕けて大精霊が出てきた。


『は~、やっと出られた……酷い目にあったよ全く』


腕を回して体をほぐす大精霊。


『いや~助かったよ、君たちが来なかったらず~っとあの窮屈な結界の中だったからね、ありがとう』


「いえ、皆無事で何よりです」


ビノセが大精霊に答える。

ん~、風の大精霊もそうだがこっちもデカイな。


「さて、これからの事なのですが、ここに居るドワーフとオーク達を我々で保護したいのですが」


『そうだねぇ、油断していたとはいえ僕もああやって拘束された以上は、皆がここに残るのは避けたいね、また危険が及びかねないし』


大精霊が腕を組んでウンウンと頷く。


『よし、それじゃあ僕も含めて移動するとしようかな。場所はあるんだろう?』


「ええ、御子様が産まれたあの地です」


『ああ、あそこね、御子ちゃんがここに居るってことは封印は解けてるってことだね』


ちらっとこっちを見る大精霊。


『オッケー、んじゃ荷物纏めて、準備出来たら移動しようか。皆よろしくー』


言われてドワーフとオーク達が慌ただしく部屋を出ていく。

と、ビノセが何か思い出したように大精霊に声を掛けた。


「ところで、ウチャデ鉱脈にはもう一方大精霊様が居たと思うのですが……」


『あ~あいつね……』


急に大精霊の顔が露骨に曇る、どうした?


『あいつ百年くらい前にここ出てってさ、何処に居るんだか』


「元はと言えば貴女のせいですぞ大精霊様、あんなことで喧嘩なぞするから……」


片付けの為部屋に戻ってきたドワーフが苦言を述べる。

それを聞いて地団駄を始める大精霊。


『うっさいうっさい!!あいつが勝手に僕のプリン食ったのが悪いんだろ~!!』


それを聞いて深い溜め息を吐き出すドワーフ


「は~……全く、大精霊の自覚というものをですな……」


その後ドワーフのお説教と大精霊の抗議が続き、私達はお互い顔を見合わせると部屋を後にした。


それから小一時間後、準備も出来たようで皆が鉱脈の外に集合した。

大小幾つか木箱はあるもののそこまでの荷物は無いようだ。


【では移動を開始しましょう、何度か中継地を挟さみ魔法で神殿へ参ります】


メアリーが完結に説明して魔法を起動させる。

これでドワーフとオーク達の保護も完了、次は西の海だっけか、順調に行けばいいんだけどね。

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