触39・触手さんオークに驚く

太陽が真上に差し掛かった頃、私達はウチャデ鉱脈を目指す為に神殿を後にした。

今回はメアリー、ピヨ彦、ビノセにパディカ、そして10体のスケルトン達、結構な大人数となった。


なんでも、メアリーが作ったスケルトンに戦闘経験を積ませたいらしい、

いずれは隊長、または指揮官クラスにまで育て上げるとのこと。


まだ出来立てほやほや故に自律はおろか、単純な命令しか効かないらしいが、そのうち複雑な命令もこなすようになり、自我も芽生えるって話。ま~ようするに今は赤ちゃんみたいなもんかな。


だだっ広い草原を移動していると、前方から何かが凄い勢いで突っ込んでくる。


あ、オエー鳥じゃん。


相変わらずオエーオエー叫びながらがに股で一気に迫ってくる。


【ここはスケルトン達にお任せを、丁度いい相手でしょう】


メアリーが右手を挙げ合図を送ると、スケルトン達は背中に背負った剣を一斉に抜き構える。お~、何か格好いいぞ。


【掛かれ!!】


メアリーが右手を下ろし号令をかけるとスケルトン達は至近距離まで詰めて来たオエー鳥へ次々に斬り掛かる。

ズバズバと切り刻まれて暴れるも多勢に無勢、あっという間に制圧されて血塗れで地面に倒れ込む。


そして止めに首を切断されて動かなくなった。


【ふむ、初戦としては上々でしょうか。今後も経験を積ませて参りましょう】


メアリーが右手を上げるとスケルトン達は整列して私達の前を歩きだす。

う~ん、軍隊って感じがするな。


その後も再度オエー鳥がやって来たり、でっかい猪だの木だの襲って来たが全てスケルトン達に一掃されていった。


楽なんだけど、出番がないとちょっと寂しいぞ。


さて、こんな調子で進んで、夜になったら神殿へメアリーの移動魔法で帰還を繰り返すこと数日、遠くに山が横に連なっているのが見えてきた。

あれがウチャデ鉱脈がある山なのだろう。


それから歩いて数時間、草原を抜けると山道の入口らしき箇所に辿り着いた。

大きな崖と崖の間には上へと続く岩剥き出しの太い道。

そこを私達は登っていく。


たま~に花は咲いているものの、無骨な岩だらけで別段目を引く物もなく、延々と上へ上へと目指す。


いや、これ本当に鉱脈に続いてんのかね?とはいえビノセもパディカも何も言わず進んでるから大丈夫だとは思うけど。


……そ~いやパディカって話してるとこ見たことないんだが、余程の無口なんかね。

パッと見、幼いしお喋りな感じすんだけどなぁ。


等と考えていると、開けた場所に出た。

目の前には洞窟の入口、先の方にはまだ坂道があるんだが、ビノセが止まると洞窟を指差した。


「あれがウチャデ鉱脈への入口です、中に入りましょう」


私の数倍はある入口、鉱脈言うくらいだから作業用に広く作ったんかな、鉱石とか搬出するだろうし。


入口を通って中に入ると、長い通路になっている。

岩の河辺には所々ランタンで明かりが灯されているんだが、火じゃないなこれ。

なんつ~か蛍光灯みたいな光なんだけど、魔法かね?


そんな通路を少し歩くと広い空間に出た。

あちこちにテントやら木箱だのが並んでいる、ここは拠点か?


周囲を眺めていると、テントの1つから誰かが出てきた。

白衣を着ているんだが……身長2Mくらいで、頭が豚である。

あ~これはもしかしてオークか?

いや、オーク以外にあり得んよな、頭豚だもん。


「……ま、魔物にスケルトンに……エルフ?こ、これは一体……?」


オークが驚いている。

まあ、私達の組み合わせ普通に考えたら異常に見えるわな、そら困惑もするわ。


「我々は人種から貴殿方を守るために参った」


ビノセがオークに説明する。


「おぉ!!それは有難い!!自分達オークやドワーフは人種によって強制的にここで採掘をさせられているのだ。以前は仕事としてここで採掘をしていたが、奴等が来てからは奴隷にされている」


「おのれ人種め……ところで、他の者達は何処に?」


「皆最下層だ。何でも土の大精霊様が大暴れしているらしくてな。閉じ込められていたんだが、とうとう堪忍袋の尾が切れたようだ。この鉱脈を指揮している人種連中もそこに集まっている」


ここも大精霊が居るのか、しかしどうやって閉じ込めたんだろ、結構強そうなのに。風の大精霊見る限り。

しかし、オークって頭良さそうなイメージ無かったんだけど完全に真逆だよな彼。

ちょっと驚いたわ。グヘヘ、エルフだ女だって感じだもんなぁ一般的に。


「案内を頼めるか?」


「勿論だ、坑内は半ば迷路みたいなものだからな、最奥まで一緒に向かおう。私はクオという、宜しく頼むよ」


クオはそう言うと拠点の奥へと進んでいき、私達も彼の後ろを着いていく。


「ところで、そちらのスケルトン達と魔物は君の兵か何かかな?」


クオが道を進みながらビノセに話しかける。


「いや、スケルトンはこちらのメイド、メアリー殿が使役していて、魔物はメアリー殿の主、御子様だ」


それを聞いてクオが驚きの表情を浮かべた。


「御子様!?創造神が地上に遣わしたというあの御子様なのか!?」


うん、何かそうらしいよ?自覚ないけど。


「そうか……封印が解けたということか……つまり……成程成程……」


何かブツブツ呟いてるけど大丈夫かな、相当驚いてたけど。


「ん?ちょっと待てよ?御子様には自我が無くて本能のままに地上を這っていたと文献で見たことあるんだが、どうして同行しているんだ?」


【それについては私が説明しましょう、え~まずは……】


メアリーが説明を始めた、何時もの通りホワイトボードに書いているのでクオは適時振り返りながら聞いて、もとい見ている。


「ふむ、成程……」


うんうんと頷くクオ、メアリーの簡潔かつ分かりやすい説明に納得したようである。


「……するともしや……いや、これは終わってからにするか」


何かクオが腕を組みブツブツ呟いてるが……まあいいか。


「さあ、着いたぞ。この扉の先に大精霊様が囚われている。人種達も居るはずだ、気をつけてくれ」


突き当たりにある大きな扉をクオがゆっくりと開いていく。

さて、気を引き締めていきますか。

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