触37・触手さん匿う

砦の門からメアリー達が、助けたと思われるエルフと一緒に出てきた。

結構多いな、100人くらいは居るような、年齢や性別もまばらで小さな子供も混じっている、無差別に拐ったってとこか。


しかしエルフ、美男美女揃いだな、所謂おっさんおばさんみたいのが一人も居ない。


【御子様、エルフの救助全て終了しました。しかし、拐われた者全員とまではいかなく……】


ん?どういうこと?

何かあったん?


「半数程が別の施設に移送、もしくは牢の中で既に事切れておりました。かなり頻繁に拷問、それも憂さ晴らしにされていたようで、酷い有り様でした」


メアリーの隣にいるビノセが苦々しく語る、拷問とか酷いことしやがるなぁ。


「それで御子様、殺された我々の同胞達を弔ってやりたいのですが……」


そうやね、このままじゃ無念も晴れなかろう、せめて墓でも作ってやらんと……


【その前に一つ提案があるのですが宜しいでしょうか?】

メアリーが話を割ってきた。

ん?何かあろのかな、頷いてOKを出す。


【どうやら未練の為この地に留まっている魂がかなりおりまして、その者達をスケルトンとして復活させることが私には出来ます】


え、マジで!?メアリーさん凄ぇ。


【既に白骨化している遺体、並びに白骨化させた遺体限定ですがどうでしょうか。勿論無理にとは言いませんが】


それを聞いたビノセ含むエルフ達が集まり相談を始める、まあ完全復活とは程遠いし無理もないわな。

暫くして話が決まったのかビノセが代表として考えを伝えてきた。


「分かりました、復活を望む者達をお願いします、それ以外については我々が手厚く弔おうと思います」


【では白骨化した遺体を並べてください、まだ白骨化していないものは遺体を焼いて白骨化させた後スケルトンとして甦らせます】


「メアリー殿、一つ宜しいだろうか」


【何でしょう】


エルフ達が遺体の準備を開始する中、ビノセがメアリーに声をかける。


「甦った際、記憶等はどうなるのだろうか?」


あ~確かに、記憶亡くしてたら甦る意味無くなるよね。


【ご安心を、余程魂が損傷でもしていない限りは残っていますし、ここに残留している魂にそのような者も居ないようです】


「おぉ、それは良かった……」


ビノセがほっと胸を撫で下ろす。


【ところでメアリーってスケルトン以外にも作れるの?】


ふと気になったので聞いてみる。


【ゾンビも出来ますが……衛生的にあまり宜しくないかと】


あぁそれもそうか、臭うしなぁ。


それから暫くして遺体の焼却も終わり、全ての遺骨が綺麗に並べられる。

ざっと30体くらいか……結構な犠牲者出てんな。


【では始めます、皆様は離れていてください】


全員がメアリーの後ろに下がると蘇生が始まった。

遺骨を囲むように空中に黒い魔法陣が展開し、光る球体が集まってきて各々の遺骨へ入っていく。

すると遺骨がカタカタと震えだし、むくりと次々に起き上がる。


【無事に終わりました、これで完了です】


エルフ達から歓声が沸き起こる、復活したスケルトンのエルフ達が駆け寄って皆と抱きしめあう。

ちょい見た目がアレではあるが、まあ良かった良かった。


【皆、声が出せないので、後で筆記用具をお渡しします、ご活用ください】


あ~そっか、メアリー同様声帯無いもんな。


【ではモル大森林へ戻りましょう、皆さん私の周囲に集まってください】


言われて全員がメアリーの元に集合する。

この人数でも転移出来るのね、メアリーさん超優秀。


【それでは移動します】


全員揃ったのを確認してメアリーが転移魔法を使用する。

ぐいーんと上に引っ張られるあの感覚がして、私達はモル大森林に帰還した。


戻れたことに喜びお礼をし各家に戻って行くエルフ達。

さて私達は大精霊へ報告しに行こうか。


『おお、帰ったか御子殿、無事に成功したようだな』


森の大木へ行くと大精霊が迎えてくれた。


『戻れぬ者もおったようだが、まあ充分であろう、致し方ないこと』


結構な人数が移動させられてるみたいだったからなぁ、いずれ奪還出来るといいんだが。


『さて、御子殿にはもう一つ頼みたいことがある』


ん?まだ何かあんの?まあ無理なことでなきゃいいんだけど。


『ここに住まう者達を御子殿の元で匿って欲しいのだが、どうだろう』


へ?ここに住まう者達って、ここのエルフ達?

結構な人数居るけど……


『取り返した者達をまた奪いに来ることは目に見えておる。それに手酷くやられた手前、恐らく集団でやってくるであろう。我はここからあまり離れられぬ故、それらから皆を防ぐことが難しいのだ』


ふ~む、成程。

ん~、全員匿う余裕あるんかな、メアリーさんどうよ?


【この人数であればそこまで問題では無いかと。幸い敷地には余裕がありますので、総出で住居を建設すれば大丈夫でしょう】


んじゃいっか。


【オーケー、こっちで預かるよ】


『おお、済まぬな御子殿、それでは宜しく頼む。こちらは精鋭を数人残しておくとするが、ビノセとパディカは引き続き同行させるとしよう』


ビノセとパディカが頷く。


『では皆に知らせたのち、翌朝にでも移動させるとしよう。今日はこの後帰還を祝した細やかな宴を村全体で開こうと思う、御子殿達も楽しんでくれ』


お、宴かいいね。


その夜、賑やかな宴は遅くまで続いたのだった。

意外だったのは皆酒飲んで肉をモリモリ食ってたところ、肉食わないと思ってたわ。

つか野菜の方が圧倒的に少なかった。

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