触28・触手さん困惑する

日もすっかり昇りきり昼くらいだろうか、ゴブリン達が封印結界を破壊してくれるのを待つ傍ら、特にやることもないのでピヨ彦と一緒に神殿内部や周辺を散策していた。

この神殿結構広くてあちこちに部屋とかあるんだよね。


で、見て回ってる間に気がついたのだが。


何か微妙に綺麗になってね?

経年劣化のせいか色々ボロボロだったはずなんだが...


まあいいか。ところであの骨メイド、名前はメアリーというらしい。

あの後改めて自己紹介して貰った。

私の事も話そうかと思ったのだが、混乱させるだけな気がするし、折角復活した主が実は中身違ってたらショックでかすぎるだろうから御子様として通すことにした。

前御子様は知能無いっぽいから、まあ大丈夫だろう。


エントランスの扉を抜け外に出る、あ~いい天気だねぇ~お天道様が眩しいぜ!!

春を思わせる気候で全ての口から欠伸が漏れる。


触手伸ばして背伸びしながら庭を過ぎふと畑の方を見ると...ん?...何だ...あれ。


幾つかある畑を鍬で耕している人達が居る。

いや違う、『人骨』が畑を耕している。


...なんぞこれ。


麦わら帽子被った人骨達が数体、ザックザックと耕している。

ふ~っと一息つくような仕草をした人骨が、こちらに気がついたのか私を見ると、お辞儀してきた。

そしてそれにつられてか他の人骨達も同様にお辞儀をする。


...マジでなんぞこれ...


踵を返して神殿に戻る、メアリーなら何か知ってるでしょ、同じ骨だし。

多分昼食作ってるだろうから厨房かな、エントランスの扉通って左の廊下を進んでいく。


途中、ここにも人骨達が居て、柱や壁を修復していた。

すっげー奇妙な光景だな...あの世か何かか。


大食堂に着きメアリーを探す、調理してる匂いが立ち込めているのでここで間違い無いだろう。

大食堂奥にある厨房を覗くと...居た居た、鍋に向かい、棒で中身をゆっくりとかき回している。


こちらの気配に気がついたのか、振り向くとホワイトボードにサササ~っとペンを走らせ、私に書いたものを見せる。


【あら御子様、間もなくお食事が出来上がりますので少々お待ち下さい】


は~い、お昼は何じゃろな~☆


じゃねえ!!!


触手でセルフ突っ込みをして、メアリーから貰っておいた予備のホワイトボードを取り出して質問する。

紐が付いてて使わないときは麻袋同様触手にぶら下げておく。


【あの人骨達は何?】


メアリーは一瞬考えるとさっと返してきた。


【ああ、あのスケルトン達ですか、彼等は私同様御子様に甦らせて貰った者達です。御子様の魔力が足りていたので私が復活させておきました】


すげーな、メアリーそんなこと出来るのか。


【彼等の魂がまだ残留していて助かりました、骨と入れる魂が無いと成功しないので】


ほ~ん、条件はあるのね、成程成程~

ん?てことは待てよ...?


【骨と魂があれば沢山作れる?】


ふとした疑問をぶつけてみる。


【はい可能ですよ、但しその魂が友好的でないと傘下に入りませんが...人種や魔物に獣の様な、御子様に非協力的ではない種族、エルフやドワーフ等なら基本問題ないかと、皆信奉しておりますので】


へ~、つまり何処ぞのネクロマンサー宜しくスケルトンの大軍勢とかも出来ちゃったりするのか。

私ワクワクしてきたぞ!!夢が広がりんぐ。


【さ、煮込みも終わりましたしお食事としましょう。本日は折角ですし皆で頂きましょう】


ほ~い。


...皆?


メアリーが鍋の横に置いてあったハンドベルを鳴らす、チリンチリンと涼やかな音が鳴り響くと、少し間を空けてスケルトン達が大食堂に入ってきて各々席に着いた。

そして子供くらいの背丈のスケルトンが数体やってくると器に料理を盛り付けて運んでいく。


【ささ、御子様もお席へ】


その異様な光景で呆気に取られていたがメアリーに促されて私は自分の席に着く、そして料理が行き渡り。


【それでは頂きましょう、創造神、並びに御子様へ感謝を込めて...】


メアリーとスケルトン達は手を組んで祈りを捧げ終ると、食事を始めたのだった。

...飯食えるんか君達。


困惑しながら、私は料理を口に運んでいった。

あ、このスープコンソメ効いててうんま。

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