触手さんは今日も這いずる

触17・触手さん親になる

人間の集団と遭遇してからどのくらい経っただろうか、結構お腹も空いてきたので袋から林檎を1個取り出して丸々頬張る。うむ、美味い。

移動しながらモッシャモシャと食っていると、前方に建物が見えてくる。

あ～これかな？木で出来た掘っ立て小屋、横には切り分けられた丸太が積んである。

地図に書かれてる絵と一致している、つか絵の横に描いてある...魔方陣？みたいのは何なんだろうか。

小屋に到着して正面の扉を開けて中を見てみる、四角いテーブルと奥に石の釜戸がある。

一時的に滞在する為にあるのだろう。

中に入るには...入口狭すぎるな、触手しか入らんわ。釜戸までは届きそうなので丸太使って火は起こせそうか。

つかこの丸太誰が運び込んだのかね、ゴブリン達がワザワザこんな離れた小屋使うとは思えないんだけど。

小屋の入口でモソモソしていると...何かが聞こえてきた。...コケ...コケ...

それは段々近づいてくる。

...コケケ...コケ...コケ～

何かと思い後ろを振り向くと...

鶏が1匹立っていた、鶏冠ついてるし雄かな。

但し、くっそっでかい。私と同じくらいでかくないか...？それがこちらを見ていて...一瞬目が黒く光った。

刹那、黒い光が地面をなぞって走ってくる。

背筋に嫌な感じがして、咄嗟に天井から生えてる鍾乳石に捕まり、上へ一気に移動して避ける。

何だ今の、ヤバそうだったから思わず避けたけ...うぉ!?

黒いのが走った方を見ると小屋の扉が灰色に変色している、直撃したのか。降りて良く見ると何か石っぽい。

軽く叩いてみると...石だなこれ。

つまりさっきのあれは石化させるのか...ん？鶏に石化...？

げぇ!!?こいつコカトリスか!!!

ファンタジーではよく出てくる魔物、見た目は鶏だが尻尾が蛇で、石化させる光線やらブレスやら出してくる。

あ、よ～みたらこいつ尻尾蛇だわ。

つ～かさ、スライム、ゾンビ、猪ときていきなりコカトリス？難易度高くない？

石化したらゲームオーバーでしょこれ、石化治すもんも無いって～のに。あるのか知らんけど。

さてどうしよう、予備動作あるっぽいし避けれはしたよね。

正面にしか撃ってこないだろうし、となると後ろに回って...と考えてるとまた目が黒く光り、こちら目掛けて石化光線が飛んできた。

「なんとぉ!!」

あっぶね!!ギリギリのところを上に逃げる。

このままだと防戦一方だ、仕掛ける!!

別の鍾乳石を伝い、コカトリスの真上に移動する。よし、ここだ!!

触手を離し背後を取る、そして..全部の触手で奴を絡めとり締め上げる!!

これで石化光線も役に立つまい!!

ギリギリとコカトリスを締めていく。コケコケ叫びながら暴れるもガッチリ極っているので振りほどけない。

羽を撒き散らしながら激しくジタバタしていたが、段々弱まっていき、最後は泡を吹いて動かなくなった。

どうやら倒せたようだ。

ってかこれ死んだっぽいな、触手ほどいてベチベチ顔ひっぱたいたけど反応が無い。

一応念のため首へし折っておいた。

ごきぃ、と骨が折れる音が周囲に響く。

と、鶏の尻から何かが出てきた。卵、それもやたらでっかい卵、恐竜の卵かってくらいの大きさ。

ダチョウのより遥かにでかいんじゃないか？

つかお前雌だったのか、雄だと思ってたよ鶏冠あるし。

しっかしこんだけでかいとさぞ見事な目玉焼きが...ん？

涎垂らして見ていると卵にヒビが入る、そしてパカッと横に割れると、中から黄色いヒヨコが出てきた。

但しくっそでかい、50cmくらいはある。

ピーピー鳴いていたが、こちらを見るとよたよた寄ってきて私にスリスリ顔を擦り付けてピヨピヨ鳴き始める。

...もしやこれは...

掴んで離すもまた寄ってくる。

やべぇ、これ刷り込みだ、親だと思ってる。何度も離すも一向に離れようとしない。

...流石にこのまま置いて行くのは気が引けるし、育ってまた襲って来られても面倒なだけか。

...仕方ない飼うか...

こうして、私はコカトリスの雛の親になってしまったのである。

え～っと名前は...ピヨピヨ鳴くからピヨ彦な。

つかこいつ何食うんだろ、虫？虫居るかなここ。

すっげ～食いそうだけど、でかいし。