触18・触手さん巣を焼く

「さ~てっと、んじゃ始めますか」


倒したコカトリスを即席乙女汁包丁で解体していく。

前作った乙女汁包丁置いてきちゃったんだよね、まあ幾らでも作れるからいいんだけど、乙女汁さえ出れば。

まずは羽を毟って、首落として腹割いて内臓を取り出す。う~む...やはりこの内臓摘出は慣れんなぁ...グロいし毎日捌いてる業者の人は凄いな。


全て取り除いたら血抜き用に溜めておいた水でよく洗う、これを怠ると臭みが残って味が悪くなる。

頭と内臓は...燃やせばいいか、小屋の釜戸に薪と一緒に放り込む。

後は適当に部位毎に切り分けて、準備完了。


毟った羽を着火材代わりにして火打ち石で火を点ける、よしよしいい感じに燃えるな。

暫くして薪も燃えだしたので、薪削って作った串にぶっ刺した肉を並べて焼いていく。

脂が乗っているのかパチパチ音を立てながら焼けていく、そして漂い始める肉の匂い、あ~最高。


調味料でもあればいいんだけどな~、ゴブリン達が持ってると思うんだけど意志疎通出来ないからなぁ...

よい感じに焼けたのでまずは胸から、...うむ味気ないけど普通に美味い、パサつかずジューシー。

んじゃ次は腿を...と、ピヨ彦が焼けた肉を見ている、いやいやそれお前の産みの親...って...あ~!!


...食べちゃったよ...手羽先を美味そうに啄んでいる。そしてあっという間に平らげると次の手羽先を食べ始める。

...いいんかねこれ...まあ食いたいならいいけどさ。


私とピヨ彦のお腹の中にコカトリスの肉が全て収まる、いや結構食うなピヨ彦、かなりの量あったんだが私と全部食いきってしまった。

あ、蛇の部分は弾力あって、あ~蛇ってこんな感じかって味だった、結構あっさりで脂ほぼ無し。


満足したのか寝転がってるピヨ彦を余所目に後片付けを済ませると、ピヨ彦を背中に乗せて小屋を離れる。

さてここから進むと次の目標地点なのだが、と、小屋の後ろの地面に何か描かれているのを見つけた。


何だこれ、魔方陣?

そこには白い何かで描かれた魔方陣があった、見たこと無い言語がびっしり書いてあって全く読めないが。

触手で突ついてみるけど反応は無い、何か意味あり気なんだけどな...


うんともすんとも言わんので先を進むことにする。

平坦な道から緩やかな登り坂になりゆっくりと這いずって行く、この辺りは鍾乳石が垂れてないので高速移動が出来ない、よっていつも通りの鈍足移動である。


ず~りず~りと移動し続けて暫く、行き止まりに着いた。

地図によるとここ、っつ~か1本道だったから迷いようもないんだが...こっからどう進むんだ?


辺りをキョロキョロ見渡すと、上の方にでかい縦穴が見える、ここ登るのか...

壁伝って登ること出来るのこの前分かったし行けるかな、しっかし...


この縦穴、何か蜘蛛の巣があちこちにびっしりある。これ邪魔だなぁ...


明らか普通のサイズじゃない馬鹿でかい巣が、ま~あることあること、まるで侵入防いでんのかってくらいに。

一々取り除くの面倒臭いなぁ...あ、そうだ。


思い付いて袋から火打ち石を取り出す、燃やしちゃえばいいじゃん。

早速巣の1つに火を点ける、引火すると一気にボワっと燃え広がっていく。

よしよし、これで上のも全部燃えるでしょ。


辺りに巣が燃える臭いと煙が立ち込めていき、上のほうが真っ赤に染まっていく。

やがて燃え尽きたのか火も収まり暗くなる、おっしこんなもんかな。

そんじゃ登りますか。


と、上の方からシューっと音がする、何だろうと思っているとその音は段々近づいてきて...


暗闇の中に赤く光る目が複数見えた。

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