触15・触手さん歓迎される
あれから数日、私は鍛練を行っていた。
ゴブリンの足に追い付く為だ、今のままでは遅すぎて直ぐ引き離されてしまう。
で、思い付いたのが、猪と戦ったときに縦に移動したじゃないですか、あれを応用して横に移動しようってことで、天井からぶら下がっている鍾乳石を使っての移動訓練である。
最初は慣れずに苦労した、伸ばした触手を縮めて身体を引っ張るんだが、結構勢いあるもんですっ飛んでいきそうになる。
何度か壁に激突しながらも何とか修得出来た。
あ、それからこれは訓練中にたまたま発見したことなんだけど、何と私、壁を登ることが出来るようでしてね、足の裏が何か吸盤みたいな感じのようで、張り付くことが可能なのだ。
壁にぶつかったときに気が付いたよ。
これにより私は壁移動と高速移動を新たに手に入れたのだった。
ただ問題は掴むものが無いと駄目ってことだが、森の中とかなら枝伝って行けるんだろうけどねぇ、ターザンみたいに。
まあ、無いなら作ってしまえってことで、石と乙女汁で突起作れば何とかなりそうだけど。
材料はその辺転がってるわけだし、今後は道中に移動用の突起立てて行こう、帰り楽になるしね。
翌朝、何時ものようにやって来たゴブリンを確認し、私は尾行を開始した。
松明片手に道を進んでいくゴブリン、メスなのだろうか、ツルッ禿げではなく髪が生えていて、簡素ながらも上下一体のロングスカートを着ている。
天井の鍾乳石で移動しながら音もなく追いかける、端から見たら相当な恐怖映像だろうなぁ、触手の化物が天井移動しながら追っかけてんだもの。
暫くするとゴブリンの前方に灯りが見えてくる、徐々に大きくなり、それは篝火だった。
丸太で組み上げただけの門の前に掲げ立てられている、ゴブリンは門を通り過ぎて中に入っていった。
ここは集落だろうか、テントが何件か建っており、奥の方には木で出来たやや大きめの小屋が見える。
広場らしき所ではゴブリン達が数匹、何か話あっていた。
ふむ、果物持って来るゴブリンはここから来ていたのか。
洞窟の中では入手出来なさそうな物があちこちにあるし、やはり外に出ている可能性が高いな。
となるとやはり他に出口があるのか。
そう考えていると、門の前で立っていたゴブリン、見た感じ見張りか?がこちらを指差し叫んだ。
げ、見つかった!?結構離れてるし暗闇の中なんだが目がいいな!!
集落がざわめき始める。
外に居たゴブリン達は一斉にテントの中に逃げていき、代わりに小屋から数匹走って来た。
鎧を着たのが三匹、ローブを纏っているのが1匹。
そいつらは門の前まで出てくると...頭を垂れて跪いた。
え?どういうこと?
ゴブリン達の目の前には他に何もおらず、ってことは私に対して跪ずいてるってこと?
何か良く分からんが敵意はないようだ、まあ毎日果物持ってくらいだしねぇ。
一向に動こうとしないので、私は地面に降り立つと彼等の前まで歩み寄った。
するとローブのゴブリンが頭を上げた、かなり歳食ってるようでシワシワ、長い白髭を蓄えている。
ぞれが、プルプル振るえながらこちらを見ている、大丈夫かな?倒れたりせんよな?
ぞして後ろを向いて何か叫ぶと、テントの中からゴブリンが1匹飛び出してくる、尾行してたさっきのゴブリンだ。
そのゴブリンは、私の目の前に来ておずおずとボウル状の籠を置いてまたテントの中に戻って行った。
そして再び頭を垂れるローブゴブリン。
籠の中には色彩豊に様々な果物が入っていた、くれるのかな?
ふと悩んだが まあいいか。その中から林檎を取り出して口に運ぶ。
うん、シャリシャリ甘々で美味い。
それを見たローブゴブリンはふるふる震えると声を上る、そして鎧のゴブリン達、集落内のゴブリンも一斉に叫びだした。
何か喜んでる?
歓声のようなものが収まるとローブゴブリンが手を叩く、すると数人のゴブリン達が次々に籠を持ってきて私の前に並べて行った。
果物以外にも何か焼いたようなのも混じっている、肉かな。
そして最後にローブゴブリンは1枚の紙 これは羊皮紙ってやつか、を懐から取り出して渡してきた。
何だろうと思い見てみると...絵が書いてある。
地図...か?
何層かに別れていて、矢印が3つ。
1つは村みたいな絵の上に記されている、これはここか。
もう1つはこの層から上の層まで長く書かれてて...最後のは上層の、何か建物っぽいものの上に記されていた。
う~ん、ここに行けってことかね...?
ローブゴブリンに視線を戻すとウンウン頷いていた、どうやらそうらしい。
他にも幾つか絵が書かれていた、これ目標に進めってことか。
行先が決まったな、どうやらそこに何かあるってことだろう。
もしかしたら出口かもしれない、地図を丸めて籠の中にしまう。
それを確認するとローブゴブリンが手を叩く、するとゴブリン達がテントの中からぞろぞろ出てきて、テーブルやら料理やら並べていく。
何か酒っぽい瓶も見える、並べ終わるとメスのゴブリンが酒瓶(だよな?)を手に取ると木のジョッキに注ぎ私に差し出してきた。
飲めってことか、受け取って中身を見ると赤い液体が静かに揺れている。
一口飲むとそれはワインだった、つか美味い、芳醇な香りと甘い味が口の中に広がっていく。
グビグビっと平らげるとお酌をしてくれた。
それを皮切りに宴が始まった。
美味い料理に酒、そして踊るゴブリン達。
すっかりいい気分になった私は暫くそれを満喫し、お土産片手に拠点に戻って行った。
う~っし、明日からは上層目指して冒険だ~っとくらぁ。
そして私はぐっすりと寝たのであった。
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...何故ゴブリン達は触手の化物である私をここまで迎え入れたのか。
そのときの私は知るよしもなかったのである...
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