狙撃の鶴

東西無駄無駄

第1話 異世界でも狙撃がしたい!

バスゥン!


僕はこの音が好きだ。

スコープをのぞき、銃身を固定させ、引き金を引く。

人差し指にちょっと力を加えるだけで肩を弾くような衝撃が走る。


スコープから的を見てみる。

円状の的の真ん中に穴が空き、的を支えている鉄柱が震える。

余韻に浸っている暇はない。

すかさず下についている撃鉄を引き、薬莢を弾き出す。


撃鉄を戻し、再び肩と腕で銃身を支え、引き金を絞る。


ドバッスゥゥン…!!


2発目の銃弾は的に開いた穴を通り、後ろの壁に穴を開ける。


喜多川「ふぅ…。結果はっと」


タイマーに表示される0.95という数字。


0.95秒。新記録だ。

ハンドガンとかリボルバーの早撃ちならもっと速い人もいるだろうけど、スナイパーライフルなら僕がワールドレコードだ。多分。


スナイパーライフルの早撃ち。

そもそも連射できるものが少ない…っていうか多分ない。

でも!僕のライフル「シャフト」は、よくわからない構造で連射ができる。

銃の下側に撃鉄がついていて、グリップ側に向けて引く。

弾倉はグリップの中で装弾数は薬室を含めて6発。

僕の護衛のジェミニにお願いしたら作ってくれた。ジェミニ有能。



僕の名前は喜多川 加奈愛(キタガワ カナメ)。

16歳、女、日本人。好きなバンドはキングクリムゾン。

自称、最強のスナイパーだ。


僕は今、A国の訓練場の中に1人。

夜はザ・一流って感じのホテルで休み、昼は銃の訓練に明け暮れている。

さっき言ったジェミニって言うのは僕の護衛で、A国のエージェントらしい。


僕に護衛がいるのは、スナイパーライフル以外にも銃は基本的に使えるけど、やっぱり体格差とかあるから危険だかららしい。


日本人なのにA国にいる理由?

僕が強いからさ!


…A国では最近ココアティア家って家系が政界を牛耳りそうらしくて、困っているヴィンス家の王様が最悪の手段として僕を呼んだらしい。

実は人殺しはあんまりしたくないんだけど、依頼されちゃったし、しょうがない。


でも、ジェミニは優しいし、ミャウっていう犬も飼えたし、あまり人を殺すっていう実感が湧かない。

今までの依頼は「相手が車で逃げた時の牽制」とか、「要人の護衛」とかばっかりで、実は直接人を撃ったことはないのに。


ガタガタドヤドヤ


喜多川「外がうるさいなぁ」


扉に手をのばす。

集中したいからジェミニは外で待機してるんだ。


ガチャ


喜多川「どうし」

バズキュゥゥンッ!!


ジェミニ「お嬢!?」


……………………………え?

お腹が熱い。とっさにおさえた掌を見ると真っ赤だった。

撃たれた。痛い。痛くない。なんで? 怖い。死にたくない。助けて。嫌だ。


嫌…。




喜多川「…いううぅあぁ………」


眠い。寝ていたようだ。目に映るのは知らない天井。


喜多川「…撃たれたはずなのに…ここは病院?」


そう思って辺りを見渡して、絶句した。


僕がいるのは洞窟。

光が溢れる出口の外には天空。

下には広大なジャングル。

ここから見てもわかるゾウほどに大きい鳥。

木々の間から首だけ見える恐竜。

奥の方に見える川と村。

更に奥にそびえる山々、そして禍々しい西洋風なお城。


ジュラシックパークのような、ジュマンジのような光景が広がっていた。


…異世界転生。漫画とかで最近流行ってるジャンル。

認めたくはないけど、多分そうだと思う。


なら、チートスキルがあったり!?

少し…いやかなりワクワクする。


立ってみて、右手を前に突き出す。


喜多川「えっと…攻撃出ろ!えい!」


キャララン…


銃弾が落ちた音がした。

足元を見ると、見慣れたスナイパー用の銃弾が転がっていた。


喜多川「…まぁ、僕の最大の攻撃は銃での狙撃だし!…はっ!シャフト!」


背中に手を回す。いつも通りシャフトがベルトで引っかかっていた。

安心した。これで生きていけるかもしれない。いや帰りたいけど。


一応、閃光弾や銀の弾丸とかも含めて全集類の弾丸が出せることがわかった。

ロケット弾とかランチャー弾とかは使えないけど。


今の僕の所持品



・いつも着てる黒い無地パーカー、黒い無地Tシャツ、下着、ジャージの無地ズボン


・腰にかけるポシェット、5丁入るガンホルダー、ナイフを入れる足につけるベルト


・シャフトを引っ掛ける肩掛けベルト


・シャフト、コルトパイソン、名前知らないハンドガン、組み立て式マシンガン


・折り畳まれた紙の箱、ビー玉、ライター、ボールペン、メモ帳、スマホ(充電切れ)、財布、グローブ、耳栓、折り畳み双眼鏡、六分儀、鏡、マッチ



続く

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