第3話 第二の殺人

『ホトトギスの館でのディナーでは、新鮮な野菜を使用しております。なんと申しましても、館の庭に大規模な畑をつくり、そこで育てるという桁違いな努力をしているためです!肉は買ってますけどね。』__ホトトギスの館ディナー説明より抜粋


新鮮な野菜、美味しい肉。

それらは料理人がいるからこそ輝くのだ。

ホトトギスの館には超一流の料理人がいた。

もういない。




二朗「うーん、やっぱ食欲はなさそうっスか?誠也さん」


渡辺「無理もない。死刑宣告されたようなものだからな」


瑞希「美味しいですけど、死体の場所もキッチンでしたしね…」


太郎「大丈夫か?体調とかは。毒とかが無ければいいんだが」


二朗「料理は我々も同じものを食べましたし、全て大皿でしたから大丈夫でしょう」


渡辺「西洋料理なのに全て大皿なのはおかわり無料だからだろうな」


瑞希「あっこのスパゲティ美味しい」


太郎「…瑞希さん」


ディナーに来ていたこともあり空腹だったので、全員で晩餐をすることとなった。

やはり誠也は一口も食べていない。


瑞希「…誠也さんも食べないようですし、そろそろ片付けましょうか」


二朗「そうっスね…」


太郎「じゃあ、誠也くん、君に取り分けちゃったスパゲティ片付けるよ」


誠也「…すみません」


瑞希「謝ることないですよ、誠也さんは被害者です。あ、太郎さん、誠也さんのスパゲティ私食べますよ」


二朗「…とりあえず今日は、全員食堂で寝ましょうか…?」


渡辺「あぁ、それがいいだろう。全滅は免れる可能性が高い」


瑞希「モグモグ、食器洗うので誰か手伝ってください」


太郎「私が手伝おう」


太郎と瑞希はワゴンを押しながらキッチンへ向かった。

食堂では静けさが残った。


二朗「あの、渡辺さん」


渡辺「どうした」


二朗「渡辺さん、さっきから妙に落ち着いてますよね。それに、誠也さんから離れようとしないし」


渡辺「…私が犯人だと言いたいのか」


二朗「一番最初にここに来たのは渡辺さんですよね?なら料理人を殺すこともできたはずだし」


渡辺「木下くん…だったか?私が物おじが少なく早く行動するだけの一般人だったらどうするんだ?責任を取れとは言わないが、謝罪くらいはしてくれるんだろう?」


二朗「…俺は間違い無いと思ってます」


誠也「…!!……!」ガクブル


太郎「意外と皿洗いというのは大変だな」


二朗、渡辺「「…」」


瑞希「じゃ、私たちの仕事は終わったし、寝る?」


二朗「……そうっスね。俺、次郎さんから1番遠いところで」


太郎「?」


渡辺「布団とかはどうするんだ?」


瑞希「食堂の隣が寝具置き場だったので持ってきました」


太郎「じゃあ、寝ようか」


その後、太郎が布団を敷き、誠也の両隣を太郎と渡辺になるようにした。

後は、大きな会話もなく消灯され皆が眠りについた。

その闇の中を動く者が一人。


グサッ!!


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


太郎「うーん…朝か…誠也くんは…大丈夫か。二朗くんは…え?」


なんと。二朗は喉元にフォークが深々と突き刺さり死んでいた。

否、殺されていた。実際に確認してはいないが、そうとしか思えなかった。


太郎「うッわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


瑞希「まさか、次郎くんがね…」


太郎「誠也くんと二朗くん、体格とか年齢似てるからまちがえた?いやそれは無いか」


渡辺「死体をここに置きっぱなしってわけにもいかない。腐る前に料理人と同じところに置きに行こう」


料理人の死体はキッチンから電力室に置いてある。

機械を置いてあるからか館の中で最も涼しかったからだ。


渡辺「私が運ぼう。少し席を外すぞ」


ギィィ…



誠也「…」


瑞希「それにしても、なんで誠也さんじゃなくて二朗くんを…」


太郎「同一犯じゃ無いかも知れないな…」


誠也「あの!…僕、なんで二朗くんが殺されたか、分かります…」


瑞希「!!?えっそれどういうことよ!?」


誠也「あの、二朗くん、渡辺さんが犯人じゃ無いかって疑ってたんです…。そしたら…」


太郎「渡辺さん…実は私も怪しいと思ってたんだ」


瑞希「でも…二朗さんを殺せるならその時誠也さんも殺せばでしょ…?」


渡辺「…面白い話をしてるな…」


太郎「…渡辺さん…!!」


続く

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