1-6 井上真一、相談する
井上は、有瀬のリーゼント・戸塚の金髪パーマ・保谷のスキンヘッドと亀甲マスク……。直立不動で整列し、顔をこわばらせている三人をじっくり観察し、控えめに口を開いた。
「……君たち、ここの不良グループの先輩?」
「い、いえ!違います!」
有瀬は慌てて頭を振り、
「ボクたちは……その……時代の流行に敏感なだけの新入生……!」
「そうです!昭和って今おしゃれなんですよ、ははは!」
戸塚も顔をひきつらせて補足した。
井上は彼らの言葉を三白眼で聞き流し、内心で危惧を浮かべた。
(……同級生か。こいつらが俺の過去をペラペラしゃべったら面倒なことになりそうだ)
井上は少しだけ身を屈めて、出来るだけ穏やかに微笑みながら言った。
「さっき、俺の名前を出して何か相談してたじゃん」
三人は顔を見合わせて苦笑いし、冷や汗をかく。
「そうだっけ……」
「してないよねぇ?」
ゴンタ顔の井上は、眉間のシワを指でほぐした。
「いや、してないならしてないでいいんだけど……。折り入ってちょっと俺も相談があってさ……」
「な、なんでしょうか!」戸塚が怯えた声で答える。
「実は…… 俺の過去のこと、あまり話してほしくないんだよね。特に悪い噂とか」
有瀬が恐る恐る尋ねる。「え、えっと……井上さんの噂って……半グレをこうやって横一列に並ばせて、次々川に落としたとか……」
井上はため息をつきながら、うなだれた。
「いや、違うんだよ。俺、からだ大きいじゃん? 水切りしてたらクルマに当たって絡まれてさ、並んでもらって順番に謝罪しただけなんだよね」
三人は顔を見合わせた。有瀬が震える声で尋ねる。
「しゃ、謝罪とは……?」
井上は力無くうなずく。そして目の前の空気を掴む真似をしながら、深々と頭を下げ、
「こう、胸ぐらを掴んで、こうやって深々と頭を下げて……」
その動作に、三人は声を合わせて叫んだ。
「それ、頭突きって言うんですよーーー!!」
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