1-5 不良トリオ、砕け散る

 その朝、まだ教室に入る前の春日高校校門付近――。




 ウンコ座りをして、昭和風のヤンキー三人が地面に唾を吐いていた。


「なあ、有瀬さん、聞きましたか?」参謀役の戸塚が低い声で囁いた。

「旭中の井上真一が新入生にいるらしいですよ……」


「井上真一だと……?」リーダー格の有瀬が剃った眉をひそめた。「あの市内最強の不良の井上か? 半グレをぶっ飛ばしたっていう……」


「そうです」戸塚は周囲をキョロキョロ見渡しながら声を潜める。「むしろ、井上本人が半グレなんじゃないかって話も……!」


「……」

 大男の保谷は黙ってコクコクとうなずいている。



 有瀬は天を仰いで溜息をついた。


「不良だらけの南中じゃ泣かず飛ばずで、高校でこそは全国制覇するって猛勉強して。やっと三人揃ってヒョロガリのシャバ僧しかいねぇ進学校に来たのによ……。初っ端から最強クラスがいるとか、マジ泣けるぜ……」







 その時だった。


「あー、君たち、ちょっといいかな?」


 背後から聞こえた声に、三人揃って、メンチを切りながら振り返る。


 と、そこに立っていたのは、長身で制服をきっちり着た井上真一だった。


 三人は青ざめ、声を揃えた。


「うわっ! 井上! いや……、井上さん……!!」

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