1-2 ひきこもり、爆発する

 自己紹介のホームルームが終わり、1-Aの生徒たちは思い思いにグループを作って談笑している。


 しかし、上杉 丸が演じる双子の姉・みすみは、ひとり着席したまま、休憩時間だと言うのに机にうつ向いて、セミロングの髪で張った鉄のカーテンの中で大量の冷や汗を流して震えながら、


(……二年も外出してないおれがいきなり自己紹介だなんて……!しかも女装で姉の自己紹介だぞ、わけわんねぇ! ハードルッ、高すぎだろ!)


 誰とも顔を合わせないようにしている。


(それにしても救われたな、このどっちつかずな容姿に……。しかし、トイレはどっち入ればいいんだよ……!このままだと昼までに別の悲劇が訪れるぞ……!!)


 そう痛む腹部を押さえ時計を見上げ、残る四時間を指折り数えながら顔をしかめた。






 そんな中、安達はるかが、丸の前の席を引き、


「上杉みすみさん…… だったよね。具合よくないの?」


 腰をかけ、丸の前髪を覗き込んだ。


 丸は、顔を引き攣らせた。


「へっ……!? ぉr、……いや、あた…… し?」


 そう自分の顔を指で差しながらも、心配そうに見つめる安達はるかの目に、やっぱり耐えきれず、そのまま丸は目をそらして行く。


 はるかは眉尻を下げて微笑した。


「なんか上杉さん、さっきも喉枯れてたし、熱とか出てない? ほら、顔も赤いよ」


 そう言いながら彼女は、細い手を伸ばし、丸の重たい前髪をどかすと額に手を当てた。



 ──その無造作で、柔らかな感触に、



 のけ反りながら、丸は、


「ひ、ひいい……!!!」


 真っ赤な顔で仰向けに倒れていく。


 はるかは慌てて腰を上げ腕を掴んだが支えきれず重なり合うように床へ倒れ込んふぁ。それでも丸を助け起こすとはるかは彼の額に手を当て、


「すごい熱! 大変っ!……」


 ちょうど教室へ入ってきた数学教師・永谷千草に向け、手をあげて叫んだ。


「先生っ、上杉さんが高熱みたいです……!」

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