第6話 イチモツ開示の前に
25歳以上の女性にイチモツを5秒間見せないといけない。
それが今日の僕に課せられたデイリーミッションだ。
でもそれをこなす前に、けじめとしてやっておきたいことがある。
カノジョの冴沼に、そうしなければならない事情を打ち明ける。
アスラがリンゴひとつと引き換えに、事情を打ち明けても問題ないようにしてくれたわけだしな。
「……冴沼、ちょっといいか?」
「あ、うん、何さ?」
昼休み。
金髪に戻っている冴沼に声を掛け、ひとけのない廊下に移動した。
「えっと……今から僕は変なことを言おうとしてる」
「変なこと?」
「そう……これを説明しても信じてくれないかもしれないし、そういうことなら別れよう、って言われてもしょうがないことを、僕はこれから言うつもり」
「ふぅん……」
冴沼はちょっと身構えるように腕を組みながらも、
「ま、聞こうじゃん。ドンと来て」
「うん……じゃあ言うけど、実は」
「実は?」
「僕は毎日死の運命に囚われていて、えっちなミッションをこなすことで生き長らえているんだ」
「…………え?」
冴沼はポカンとしていた。
「……毎日死の運命? えっちなミッション?」
「そう。しかもえっちなミッションは種類が豊富で、冴沼以外の女性とも色々しないといけなかったりして……だから、それをきちんと言っておこうって思ったんだ」
冴沼に無断でやるのは申し訳ない。
交際相手なんだから、そこは打ち明けないと筋が通らないってもんだ。
「もしかして……あたしのおっぱい揉みたいって言ってきたり、スカートの中に頭突っ込ませて欲しい、っていうのも、全部?」
「そう……そのミッションの影響なんだ」
「なるほど……いや、でも……そんな馬鹿げたファンタジーじみたこと、ホントにあるわけなくない?」
案の定な反応が返ってきた。
「まぁ……信じられないよな、普通は。でもホントなんだよ」
「そのえっちなミッションってヤツを毎日こなさないと……稲瀬は死ぬってこと?」
「そうらしい……信じがたいだろうけど」
冴沼は神妙な表情になっている。
「ふむ、話の信憑性を上げるために冴沼
背後のアスラが急にそんなことを言った。
「死神は通常、死が迫る者だけが捉えられる存在ですが、死が迫る者を介して身体を繋げることで誰にでも姿を現すことが出来ます」
……つまりどういうことだってばよ。
「冴沼妃繭と手を繋いでください。私も宗太と手を繋ぎますから。するとあら不思議、冴沼妃繭が私を捉えられるようになります」
そういうことか。
言われるがまま、僕は「ちょっとごめん」と冴沼の手を取った。
そしてアスラがもう片方の僕の手を握った。
「――うぇ!?」
その瞬間、冴沼が僕の背後を見てギョッとし始めていた。
どうやらアスラのことが見え始めたようだ。
「え、だ、誰? いきなり稲瀬の後ろに髑髏の仮面を頭に付けてる黒いローブの女の子が……」
「死神のアスラと申します。今、宗太が言った情報が事実であると理解してもらうために、こうして不可思議な現象を味わっていただきました」
「し、死神……?」
「はい死神です。人間っておもしろっ」
真顔で何言ってんだ……。
「ともあれ、信じてください冴沼妃繭。あなたの冴えない彼氏は生きるために足掻く必要があるんです。何卒、私のボーナスのためにご理解いただければ」
……僕が生き延びるほどにボーナスが出るらしいからな。
とんでもない言い草だが、生臭い欲望が表に出ている方が信用は出来る。
「まぁ……こんな不思議な現象に遭遇したら、信じるっきゃないかも」
よすよす。
「――えんだあああああああああああああああああああいやああ――」
「もういいよ良いことがあるたびにいちいち歌うな!」
「しゅん……」
アスラはしゅんとしていた。
「ところで……じゃあ稲瀬が毎日死の運命を回避しなきゃいけないのが事実だとして、今日こなさないといけないえっちなミッションって具体的にはなんなワケ?」
冴沼が本題に戻してくれた。
「宗太に課せられた本日のお題は、25歳以上の女性にイチモツを5秒間見せ付けることです」
「……なんそれ」
冴沼は呆れた表情になっている。
「あたしの彼氏にそんなしょーもないことさせるワケ?」
「おや、そういう憤りですか」
「当たり前じゃん。彼氏が変なことさせられてんのに怒らないわけないっしょ」
……冴沼、ええ子や。
「私に強く当たられても困ります。デイリーミッションは完全なランダムですから」
「あっそう……まあいいよ。じゃあとにかく、そのヘンテコなミッションをこなさないと稲瀬は死ぬってことでいい?」
「はい、そういうことです」
「分かった……ならあたしは協力するし、稲瀬が他の女に何かするの許す。稲瀬に死んで欲しくないから」
……冴沼、ええ子や(2回目)。
「でしたら宗太のイチモツを5秒見てくれそうな25歳以上の女性について、どなたか心当たりはありませんか?」
どんな心当たりだよ。
あるかそんな心当たり。
「まぁ、あるかも」
あるんかああああああああああああああああああい!!!
「ほら、稲瀬も知ってる高宮先生」
冴沼はそう言った。
……高宮先生と言えば、養護教諭だ。
大体の学校において、保健室の先生っておばさんだけど、高宮先生はエロ漫画に出て来そうなすげえナイスバディーのお姉さんだ。
確か29歳とかのはずだから、年齢はクリアしてる。
けど、
「……高宮先生って、割と堅物じゃなかったか?」
淡々としている印象だ。
イチモツを5秒も見てくれるとは思えない。
「いや、結構男に飢えてるって噂」
「……ホントか?」
「うん。堅物な性格のせいで『えっちな身体なのにつまんねえ』って言われて男が寄り付かなくて、悶々としてるとかなんとか」
「なるほど。アラサーの飢えた獣ですか。いいですね。イチモツを見てくれそうです」
確かに……可能性はあるか。
よし……じゃあこの昼休みを生かして僕のイチモツを高宮先生に見せに行くぞ。
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