第5話 死神の慈悲

 ――【本日のお題:25歳以上の女性に5秒間イチモツを見せ付けろ】


「ふざけんなや……」


 翌朝7時にデイリーミッションが更新された。

 もうね……何これ?


「これは補導される覚悟があれば秒でクリア出来そうですね。その辺の道端を歩いている大人の女性にボロンとすればそれでOKですから」

「いや5秒経つ前に逃げられるだろ絶対」

「そこに気付くとは……やはり天才ですか」


 ハッとした表情で僕のベッドにゴロ寝しているアスラ。

 こいつホントに自由。


「ではえっちそうなお姉さんを見つけてボロンするしかないですね」

「そうするしかないか……」


 冴沼というカノジョが出来たのに、そんな不貞じみたことをするのは憚られる気分。

 しかし……デイリーミッションをこなさないと僕は死ぬらしい。

 だったらやるしかないのだ……。


「なあ、一応確認なんだけど僕ってデイリーミッションをこなさないとホントに死ぬんだよな?」


 実は死なない可能性はないの?


「死にますよ。疑うなら明日のこの時間まで何もせず普通に過ごせばよいかと。するとあら不思議、その日のうちにあなたは何かしらの要因で命を失うことになります。それは絶対です」

「……生き延びたいなら、僕はこれからずっとデイリーミッションをやってかないといけないのか?」

「基本的にはそうです。ですが例外的に死の運命から逃れる方法もあります」

「――っ、ホントか?」

「はい。私と宗太が出会った際、性的なエネルギーには死の運命をはね除ける力があると言ったのを覚えていますか?」

「ああ……」

「そのエネルギーを利用してあなたの死の運命を1日先延ばしにするシステムがデイリーミッションです。ではですよ? 膨大な性的エネルギーを集めることが出来れば、1日と言わず永続的に、あなたの肉体の寿命が尽きるまで、死の運命を遠ざけることが出来ると思いませんか?」

「で、出来るのか?」

「はい。宗太自身の周囲にえっちな環境を構築していくことが出来れば、いずれ死の運命があなたに纏わり付いていられなくなるかと」


 おぉ……そんなことが……。


「要はハーレムを構築すればよいのです。そしてえっちなことをしまくる。そうすることで、あなたは死の運命を気にする必要がなくなるかもしれません」

「なるほど……」


 ……でもそうなると、冴沼との純愛は難しい。

 それに、ハーレムを作ろうとすれば冴沼が離れていく可能性もある。


「……難しいな。せめて事情が説明出来れば、ってところなんだが」


 デイリーミッションの全容を冴沼やこれから協力してもらうまだ見ぬ女性たちに説明出来れば、同情して分かってもらえる部分もあるかもしれない。

 でも事情を説明したらダメなルールらしいし……。


「別に説明しても問題ありませんよ」

「え?」

「問題ありません」

「いや、でも……お前が事情の説明しちゃダメって」

「監視員がその違反を冥界に報告することで死の運命直行ルートになります。つまり私が報告しなければ問題ありません」

「……今後僕が説明しても報告しないでくれる、ってことか?」

「はい」

「なんで? それはお前も危ない橋を渡るんじゃ……」

「ですね。しかし法定速度を10キロオーバーで走る程度のモノです。その程度の違反、みんなやってますよね? つまり監視員もまた、気心の知れた監視対象のためにルール違反をすることは珍しくないということです。そして私も、宗太が嫌いではないのでそうしようと思います。それだけのことです」

「アスラ……」


 変なヤツだなと思っていたけど、結構良いヤツなのかもしれない。


「……ありがとな」

「ですがダダで危ない橋は渡りません。リンゴをひとつ、あとで貢いでください」


 しにがみはりんごしかたべない

 某ジャンプ漫画に書かれていたそれは、どうやら本当だったようだ。

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