暴露

「うわぁぁあ、よかったよぉ、人間に会えたよぉ…」

あずさは涙をぼろぼろこぼしながら続ける。

「目覚めたらここで、死んだのかと思ったよお。お家にかえりたい…」

赤いローブを着た金髪の男の人は少し驚いて、でも優しい笑みで

「そっか、君は迷子なんだね。大きな町まで案内するよ。そこからなら、どこへでも行けるだろう。」



優しい男の人に引っ張られて森の中を歩く。

毒でも持っているのか何なのか、カラフルな花がいっぱいだ。

「君、名前は?俺はアザミ。」

「アザミさん。あ、あずさ…あずさです。」

「あずさかぁ、なんか名前、似てるね」

アザミは明るく話を盛り上げてくれた。



しだいに心を少し開いたのか、あずさは


「アザミさんの服、赤ずきんみたいですね!」


「え?」

アザミの顔がだんだん険しくなる。

あずさの冷や汗は止まらない。

「あ、…ご、ごめんなさい…!失礼でしたよね!」

「いや、違うんだ。ごめんね。驚かせちゃって。あずさ。


赤ずきんという言葉はどこで知ったんだい?」

アザミは笑っているが目は笑っていない。

「いや、あの…小さい時に読み聞かせで…

分かりませんか?あとシンデレラとか、白雪姫とかヘンゼルとグレーテルとか!」

例を出していくと共にアザミの顔も引き攣っていく。

「も、もういい…君、出身は?北かい?」

「えーっと、北?あ、北海道のこと?違うよね…日本って北だったかな?日本って言っても、都道府県とかで方角は変わってくるんじゃ…」

日本、という言葉を聞いた途端に閃いた様子で

「あずさ。君、本を見なかったか?」

「本?」

「うん、本。赤い本に金色の装飾が…」

「ああ!あの本!…あ、あの本!に触ったら…ここにいました!」

はっとして答える。

アザミは目をまんまるにして

「なるほど、やっぱり町に行くのはナシ。俺の仲間と会ったら…帰る方法見つかるかも。俺の知り合い、すっごく物知りだからさ♪」

すこしルンルンな感じであずさの手を引っ張り別方向へ歩き出した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

コロシバナシ アカシア @hachimitsu09

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画