第3話 私の聖獣
□神殿(エリー)
追放とのことだったので、私はまずは実家に戻ることにしました。
遅かれ早かれ話は回るでしょう。
その前に神殿には挨拶していきましょう。
「と言うわけで国外追放を言い渡されましたので、ご挨拶に参りました」
「待ってくれエリーゼ様」
何をでしょうか?
『行くのか。では我も共をしよう』
「ありがとうございます、ファルム様」
私の背後が眩く光り、背後に暖かい魔力を纏う大きな狐さんが現れます。
この方は私の聖獣です。
とても強く優しいモフモフです。
私は我慢できず首に抱きつき、毛皮を撫でます。ファルム様は満足そうに受け入れてくれます。
「さぁ行きましょう、エリーゼ様。まずはご領地でしょうか?準備は万端です」
「ありがとうございます、クラウス様」
「待てクラウス。なぜもう準備が?それになぜお前まで旅装を?」
大きな荷物を抱えて出てきたクラウス様に神殿長が疑問をぶつけていますが、そんな余裕はないのです。
「むしろなぜ準備をしないのですか、マーシャル神殿長。もしや自殺願望でもおありなのですか?なら止めません。ご愁傷さまでした」
それは本人に向かってかける言葉ではないのですよ?
「惜しい人をなくしましたね。でも我々は歩みを止めるわけには行かないのです。さぁ、馬車に乗ってください。では……」
そして扉からもう一人……身の回りに世話をしてくれていたアリューゼが入ってきました。
「そうですわね。挨拶も終えましたし、行きましょうか」
「待て、待ってくれ!俺も行く!こんなとこに残るのはゴメンだ。オール収納!」
慌てながらそう叫び、見当たるもの全てを収納魔法に収め、神殿長もついて来るようです。
「まったく。とっとと準備して下さったら、荷物をまとめる手間はいらなかったのに」
「泣く泣く聖母様の像にお祈りして別れを済ませる必要はなかったのに。優柔不断なジジイは困りますわ」
散々な言われようで追放を言い渡されて沈んでいた心が軽くなったのは内緒だ。
そうして王都の教会は文字通りなくなった。
なにせ建物まで収納して行ってしまったのだから。
それを知った王都民は嘆いたし、貴族たちは騒然としたが、王子は絶好調だった。
『偽者と指摘したら忽然と消える。これぞまさに偽者だった証拠だ!もしや邪神でも崇めていたか!?』
などと吹聴しているようです。
そんな折、ミリアという女の地元で悪魔が出たようです。
子爵邸は破壊され、消失したものの、多くの一族のものは逃げ出せたようだった。
それに対して王子は近隣の神殿に対処を指示した。
当然断られた。
怒った王子は隣町から神殿関係者を呼びつけた。
なお、呼びつけたとは言ったものの、騎士団によって高齢の神殿長を拉致した、と言ったほうが近い。
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