第2話 聖女など不要
□王宮にて(スコット王子)
「お前は自分が何をやったのか、わかっているのか?」
成人の祝いが終わって王宮に帰ると、父である国王陛下から呼び出された。
なんだ?俺はミリアと今後のことを話し合わなければならないのに。
「俺が何をしたと? ただエリーの偽者を追い出しただけ。責められる謂れはありません。むしろアレを見抜けなかったマヌケどもをどうにかしてください。それでは」
「どこへ行くのだ!まだ話は終わっておらぬ!」
なんだよ煩いな。
「まだ何かあるのですか? 私は婚約者としたミリアと今後のことを話し合わなければならないのです」
「ふざけるな!そのような婚約、許可しておらぬ!」
「許可? もう成人したのです。俺は俺の自由にさせてもらいます」
「はぁ?」
「そもそも考えが古いのです。隣国を見てください。商業国の自由さ、帝国の規律を。家長だから、国王だからと婚姻の自由を奪うことは許されません。そのような古いしきたり、俺の代で全てなくしてやります。その第一歩として俺は俺の自由に、俺の愛する者と結婚します。では」
まだ何か父が喚いているが、気にする必要はない。
どうせ何もできない。
貴族たちの顔色をうかがうばかりの父には何もな。
なにせ母である王妃と、祖父……つまりこの国で長く宰相を務めるグーリッジ大公には話を通してある。
「神殿にどう説明するのじゃ!聖女を婚約破棄し、国外追放したなどと」
「なぜ説明などせねばならぬのですか? むしろやつらには謝罪をさせる必要があります。なにせ偽者を聖女になど仕立て上げたのだ」
「何をバカなことを! 悪魔への対処はどうするつもりだ!」
「そんなもの。神殿長に任せればよいのです。偽者のエリーを聖女などと掲げる前は、神殿長が行っていたのですから」
それで話は終わりのようだ。
まったく。困ったものだな。少し考えばわかるだろうに。
私心なき王などと呼ばれ、長年貴族の利害調整しかしてこなかった哀れな男にはわからんのだろう。
我々は王族なのだぞ? なぜ貴族や神殿に気を使う必要がある?
国を治めているのは王族だ。気に入らぬ者、歯向かう者は潰せばいい。我々の意に沿うように命ずればいいのだ。
それにこの300年の間、歴代の神殿長が魔を祓っていたのだ。聖女などいなくても、どうにでもなるということだろう?
そんなに聖女という神輿が必要なのであれば、ミリアにさせればいい。そうすれば問題ないだろうな。
まったく、ちょっとは考えろ。
案などすぐに出てくるだろうに。耄碌しているのか?
俺はミリアを聖女に認定するように指示を出しておいた。
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